DONの落書き部屋

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「Muv-Luv 小説」
第一部

新潟編 第1話

 

新潟編  かれのいない百里基地




2001年2月24日10:30
百里基地  第12小隊詰め所


<城崎 葵>


(・・・・・・退屈ね)


 カタカタとキーボードで打ち込み作業を続けながら内心で嘆息する。
 久方ぶりの休日なのだが、特にすることも無く溜まっていた光菱へ送る書類を作っているのだが・・・・・・正直退屈なのだ。
 赤ペンで訂正箇所がチェックされた書類を一瞥する。いつも横から口を挟む自称教育係の姿が今日は無い。

 横浜から出向されている彼はたまに連休をとって横浜に帰る。それ自体は特に珍しいことでもないし、連休だと言っても昨日の午前中はまだその姿を見ることが出来た。
 恐らく明日の早朝か、今日の夜には帰ってくることだろう。


 まぁ・・・・・・別にどうでもいいが。


「いたらいたでうっとおしいけど・・・・・・いないと何かやる気が出ないのよね」


 などと言いながら、机の上にある合成紅茶を口に運ぶ。
 ・・・・・・美味しくない・・・・・・今度、インドネシアあたりからアッサム系の葉でも仕入れようかと悩む。


「・・・・・・はぁ」


 合成モノの味に辟易しながら、同じく机の上にある袋からアレを取り出して口に運ぶ。


(・・・・・・また、送ってもらうように連絡しなくちゃ)


 北海道に派遣された際に、彼に付き添って行った場所で知った素朴な食べ物。
 干し芋は美味しい、天然モノだとか手間が掛かっていたりするのとか色々と理由はあるが、一番はあの人の良い老夫婦が作ってくれているせいだと思う・・・・・・美味しい上に人の温かみが感じられるし。

 彼には色々と諭されたが、アレ以降篠原工業への依頼を少し多めに頼んでいるのは彼に秘密だ。知ってしまったからには何とかしたいと思うのは・・・・・・人として間違っていないと思う。それに何度も干し芋を送って貰っている、代金を払おうにも二人が受け取ろうとしないので、それくらいのお礼をするのは当然だろう。


「美味しいのに・・・・・・なんで隆さんはあんなこと言ったのかしら?」


 モグモグと干し芋を齧りながら、自分に向けて彼が言ったことを思い出す。


『仮にも社長令嬢が芋ばっか食べるなよ・・・・・・体裁が悪くないのか?・・・・・・ああでもいいか、少なくともお通じで困ることは無いか』


 などと失礼なことをあのグラサンがニヤニヤしながら口にした記憶。
 私がお芋を食べていても別にいいと思うのだが?このご時勢、天然モノを食べるだけで庶民とは違うことに彼は分かっていないのか?
 まぁ、確かに食べ過ぎた時は困る、女性としての尊厳を守りきるために必死にトイレに駆け込む始末、それが彼に見透かされているかと思うと・・・・・・沸々と殺意すら覚える。


「マナちゃんの前でもそんな恥ずかしい真似したこと無いわよ」


 ここにはいない彼に向かって文句を言って見る。

 ちなみに真奈美は何やら調子が悪いと言って自室で休んでいる、大丈夫だろうか?
 原因は、最近真奈美のもう一人の姉を名乗る彼女のせいなのだと分かっているのだが・・・・・・


(ま、なんだかんだ言ってもマナちゃんが楽しそうならいいか)


 内心で嘆息し、机の上に散らばった書類を纏め始める。
 真奈美は、彼絡みで何かと暴走を繰広げる栞のいいストッパーになりつつあるようだし・・・・・・愛する妹の忍耐強さには正直頭が下がる。


 ・・・・・・たまに自分も周りが見えなくなるが・・・・・・何故だろう?


「・・・・・・ん?・・・・・・ああ、アラスカに決まったのね」


 手にした書類の一つが目に留まる。

 ダレもいないのを良いことに、机の上に無造作に書類を広げてはいるが・・・・・・中身は全て機密性の高いものだ。この基地でも閲覧の資格がある人間など一握りしかいない・・・・・・そんな書類だ。

 技術廠の第壱開発局が主導となり、日米の企業と合同で実施されることになった計画、通称XFJ計画。

 よくもまぁ帝国至上主義を掲げる帝国上層部の連中を押しのけてまで、戦術機の日米合同開発計画などを議会が承認したたものだと関心してしまう。
 巌谷の手腕か、はたまた米国贔屓の官僚の後押しがあったのか・・・・・・色々な思惑が絡みあった計画だと嘆息する。

 むろん光菱も協力するのだが・・・・・・生憎と自分には縁の無い話だ。企業も一枚岩では無い、光菱でも協力する部署は、自主生産に見切りをつけ他国の製品をライセンス生産することで生き残りの可能性を見出している所だろう。


 自分が関与している光菱の部署や、前に在籍した部署はその限りでは無い・・・・・・純国産機の後継機開発を諦めてはおらず、既に試験機ならびに量産試作機の開発は着々と進んでいる。


 それにしても、開発リーダーとして現地に赴くらしい唯依には同情する。彼女は優秀だが、その性格が原因で向こうでトラブルになるんじゃないかと心配してしまう。


「不知火の改良型か・・・・・・興味はあるけど・・・・・・完成品が出来ても、ライセンスなんかの絡みで本格的な量産が始まるのは早くて2年後くらいかしら」


 そこで興味を無くして書類を捲り、次のページに書き連られた文章に眉を顰めてしまう。

 不知火の改良型と並んで開発が行われている戦術用試作火器。光菱が提出したプランを破棄し、速射機関砲として開発が決まった電磁兵器の概要が書類には書かれている。

 巌谷には思わず食いかかってしまったが、帝国軍の現状を鑑みればそれは納得せざる得ない結果だったと分かっている。ユニットのコアともいえるモジュール部分は、それそのものが横浜製で量産が困難だと聞いている・・・・・・そんな数が少ない部品を有効に利用するとなると、大規模殲滅が望めるプランへ計画が流れるのは当然ともいえるだろう。

 弾薬消費が激しいために専用の給弾システムを開発せざる得ないなどの様々な不安点はあるが、アレがその計画通りの形で完成すれば・・・・・・凄まじい兵器になるのは容易に想像できる。


 光菱が進めるプランはソレに比べれば遥かに地味なものだ・・・・・・確実性を選んだ結果故にだが。


(・・・・・・隆さんはきちんと上司に話してくれているのかしら?)


 視線を窓の外に向け、横浜基地がある方向に目を向けそんな思いを走らせる。
 横浜に帰ると言った際に彼に渡した一通の手紙・・・・・・彼の本当の上司たる、横浜の魔女へ宛てた手紙、ちゃんと彼は渡してくれただろうか?


「ま、大丈夫よね」


 そんな考えは杞憂に過ぎないだろう、彼は頼まれた事や仕事はきちんとこなす。後はアレを受け取った魔女が何を要求してくるかだ。

 一度背伸びをしてからパソコンに向き直り意気込んで打ち込みを始める。


「・・・・・・退屈ね」


 でもやっぱり、そんな言葉を呟いてしまった。






同日  11:30
百里基地  第二格納庫裏手


<川井 洋平>


(・・・・・・暇やな)


 手にした工具を弄びながら内心で嘆息してしまう。

 目の前には心臓たるエンジンを外され、中心がむき出しになった自動二輪車が一台鎮座している。その傍には分解されたエンジンの部品が規則正しく並んでいる。
 休日なのに特にすることもなかったので、久しぶりに愛車の単車の整備をしていたのだが・・・・・・なんとなく手が進まない。


「前は当たり前のように一人でやってたんやが・・・・・・奴がおらんと味気無いもんやな~」


 口から出た言葉にしみじみと納得する。以前は当然のように一人で趣味の単車イジリをしていたのだが、奴が百里に来て暫くたった日から奴と二人で整備することが多くなった。

 奴とは無論、国連から来ているロリシスグラサンこと社隆である。奴はどうやら機械弄り、しかも四つ輪や二輪の整備をしていた経験があるそうで、結構その方面の知識に詳しかったりする。


 人は見かけによらないと言うが・・・・・・相変わらずの変態野郎だ。


 そんな彼は休日を利用して横浜に帰っているので今は基地にはいない。彼がいないせいで味気無いとは思いたくないが、実際手が進まないのは事実だ。


「・・・・・・飽きたわ」


 スパナを工具入れに投げ入れ、合成コーヒーを飲みながら走ることの出来ない愛車を眺める。

 川崎重工製、名称はKH。自身が衛士になる以前から愛用していた単車ゆえに愛着が強い・・・・・・余り人に触らせることもなかったのだが、奴に一度整備を任せた後にやたらとエンジンの調子が良くなったことがあり、以来単車に乗りたいとせがむ人間がいたら乗せるようにしている。


『機械なんざ使ってナンボだ、ダレでもいいから機械オイルと燃料回してやらんと不機嫌になるぞ?』


 とは奴の弁、随分と自分の物に執着が無い言葉だと思ったが、その通りだと納得する自分がいた。
 だが、そんなことを言うくせに単車の運転は余り上手いとは言えない奴の姿を思い出すと笑ってしまう。

 自身の話では四つ輪が得意だと言うが本当のところはどうなのやら・・・・・・戦術機の腕前も以前に比べれば上達しているが未だ前衛を務められるほどの技量は無い、インパルスに師事しているのだからもう少し上手くなってもいいと思うのだが・・・・・・


(ま、人の得意分野は人それぞれやからな~)


 自分には彼のように事務仕事や人付き合いを上手くこなすことなど出来ない。奴の真似事などしていたら、気疲れで胃に穴が開いてしまいそうだ。
 ・・・・・・あんな真似が常日頃から出来ていれば自分はこんな後方の基地にいることなど無く、今頃・・・・・・斯衛軍で黒装束に身を纏っていたことだろう。

 そんな人生のほうが良かったのか、今の人生のほうが良かったのかとたまに考えるが・・・・・・世界は一つ、辿ってきた道も一つ、起こりえなかったことを比べることなどできない。


 世の中に、もしもの可能性は存在していないのだ。


 だから後悔などしても意味は無い、自分が選んだ選択肢がもたらした今を嘆いてはいけないのだ。
 ついでに人と自分を比べても仕方が無い。隣の庭が青く見えるのは当然だろう、何故ならそれは自分の所有物では無いからだ、人って生き物は他人の物が何かとよく見えてしまうものだ。

 他人の物を見ないようにするのには・・・・・・自分の物を見続けるのが一番だ。


「・・・・・・社が戻ってくるまでには・・・・・・組上げておくかおくか」


 嘆息して、オイルで汚れたクランクシャフトを丁寧にウエスで拭きあげる。
 流石にこのまま部品を放置しておいたら奴の逆鱗に触れるかもしれない、なんで頭の中は大雑把なくせに変なところで細かいのか疑問に思うが・・・・・・


「川井中尉・・・・・・何してるんですか?」


 そんな声が聞こえて視線を上げると、格納庫の二階の窓から整備服を着た女性隊員が一人、此方を見下ろしている。


「見てわからんか?単車の整備や・・・・・・」


 一瞥しただけで手元に視線を戻して作業を続ける。


「はい、それは見れば分かりますけど・・・・・・今日はお一人なんですか?」


「そやな、いつものグラサンは今日はおらへん」


 奴に用でもあったのか、女性隊員が不思議そうに聞いてきた内容に返答する。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 それで会話は終わったかと思ったが、気配で未だ彼女が此方を見ているのは感じる。


「・・・・・・なんや、なんか用があるんか?」


 少し苛々して棘のある口調で言ってしまう。彼女もそんな此方の雰囲気を悟ったのか、息を呑んだような気配を感じる・・・・・・そしてまたやってしまったと自分を恥じる。

 奴に言われた言葉、もう少し上手く生きたかったら他人に優しくなれと・・・・・・やはり自分には無理なのではないかと思うのだが試すだけ試してみるとしよう。


「・・・・・・あ~そのなんだ・・・・・・暇なんか、今?」


「は、はい・・・・・・機材の点検も終わりましたので、もう昼にしていいと湯田班長から・・・・・・」


 しどろもどろに彼女が答えてくるのを聞きながら、指でポリポリと後頭部を掻く。


「さよか・・・・・・なら良かったら少し手伝ってくれへんか?エンジン一人で組むのはちと厄介なもんで・・・・・・いや忙しいなら別に・・・・・・」


「い、今降りて行きますから待っててください!!」


 話も言い終わらない内に彼女はそう叫んで、身を乗り出していた窓から姿を消す。


(なんや・・・・・・悪いことしたかな・・・・・・)


 随分と慌てていたようだが・・・・・・考えて見れば当然か、部署が違えど此方は一応士官だ。そんな上から頼みごとをされれば断ることも出来ず、早急にその手助けをしなければならない。

 余計な気遣いをさせてしまったようだ・・・・・・やはり奴のようには上手く行かないものだと悩む。


 っと、格納庫の方から派手な金属音が響き渡る。何事かと注意を其方に向けると・・・・・・


「くぉらぁぁ!!大津!!走るのはいいが足元をしっかり確認せんかぁぁぁ!!」


「ひぃぃぃ班長すみませぇぇぇぇん!!」


 そんな湯田整備班長の怒鳴り声と、先ほどの彼女の声が聞こえてくる。


 ここは後方・・・・・・随分と平和なものだ。


 だが平和でいいのだろう・・・・・・何処もかしこも血なまぐさくては人として大切な物が失われていく気がする。


(・・・・・・暇やな)


 そんな考えが脳裏に過ぎるのも・・・・・・そんな平和な気分に毒されているからだろう。







同日  13:30
百里基地  基地司令室

<三澤 静流>


(面白くないな・・・・・・・)


 目の前にいる人間に気づかれないように嘆息しながら、内心でそう思ってしまう。


「これは非常に名誉なことだ・・・・・・その点を踏まえた上で任務に当たって欲しい」


 副司令はそんな此方の態度に気づくことも無く話を続けている。


「それでなくても君の部隊は・・・・・・扱いに困る人物がいるからな」


 無論、今横浜に里帰りしている彼のことだろう。


 マメだと思う、いやただのシスコンか?

 嬉々として横浜に向かった彼の顔を思い出して決め付ける。
 連休の度に横浜に帰るグラサン、休みぐらい少しはゆっくりしていればいいものを酔狂な奴だと心から思う。

 帰る場所があるのは良い事だ。自分は長らく故郷には帰っていない、秋田なのでBETAの被害も無く帰ろうと思えば何時でも帰れるのだが・・・・・・近すぎるせいか足が向かない。


「その辺りは君がしっかりと、監督してくれなくては困るのだよ!」


「はっ」


 条件反射での返答、どうせ心から期待してもいないくせに良く言える。

 決まった次の派遣任務・・・・・・今度は随分と趣向が違う仕事を与えられたものだ。


「・・・・・・新人とは言え相手は斯衛のエリート達だ・・・・・・恥ずかしいところは見せないで欲しいものだな」


(・・・・・・まぁ無理だろうな)


 本心を心の中で答える。

 来月、新潟の佐渡島に存在するBETAの巣の一つである甲21号・佐渡島ハイヴの間引き作戦が先日決定された。BETAの増加率から言ってそろそろだとは思っていたが、まさか作戦におまけが付いてくるとは思っても見なかった。


 昨年、帝国軍の最精鋭たる斯衛軍に正式配備されたTYPE00・武御雷、既に何度か実戦運用されているとの話だが、間引き作戦に合わせて近衛の若手衛士達に武御雷での実戦を経験させる旨が城内省から通達されたとのことだ。しかもその激励のために、政威大将軍であらされる煌武院悠陽殿下までもがいらっしゃると言う・・・・・・そんな恐れ多い作戦の幾ら外周警護とは言え、よく自分達に回ってきたものだと思う。

 まぁ殿下護衛の本命は斯衛、その周囲に展開する帝国軍の部隊などは重箱の隅に残った煮っ転がしのようなものだろうが・・・・・・


「君達以外にも百里からは他にも幾つか部隊を派遣させる・・・・・・虎の子のインパルスにも今回は行ってもらうとしよう」


「・・・・・・雪風を、前線に出すと?」


「うむ、既に松土少佐には通達してある・・・・・・インパルスには雪風を二機だしてもらう、とはいえ全面的に戦闘をさせるわけにもいかんから他は不知火で出てもらうがな」


 その言葉に納得する。

 ようはいつもの点数取りか、斯衛と言えど今回作戦に参加するのは若い連中ばかり・・・・・・ドルフィンライダーの存在は彼ら若い衛士の間ではそれなりに尊敬されているようだし、そんな彼らの姿を見ればその士気も上がることだろう。


 そして・・・・・・そんなインパルスを上手く活用していると、この基地の上役が中央から評価されるわけか。


 だが、そうなると護衛対象が増えたことになる。幾らエリートだ、家柄だと高い評価をされていても所詮は新兵・・・・・・幾ら最新鋭機である武御雷を持ってしてもその全てを生き延びさせるのは骨だというのに、実戦では欠陥機たる雪風まで持って行くとなると・・・・・・作戦が予定通り進むことを神にでも祈りたくなる。

 戦場で絶対は無い・・・・・・もし雪風が戦闘に参加することがあれば、その機体も護衛対象として組み込まねばならない。


(頭の痛い話だ・・・・・・)


 どうやら面倒な任務になりそうだ・・・・・・前回の北海道ではBETAとの戦争は偶然的に起こったものだが、今回は間引き作戦、戦闘は間違いなく起きる。


 それを覚悟した上で今回は赴かねばならないだろう。


「それとだ、話は戻るが社中尉と並び川井中尉にも・・・・・・今回は気をつけて頂きたい」


「はっ、分かりました」


「彼も何かと斯衛に目を付けられているからな・・・・・・折角、斯衛に推薦されたと言うのにソレを蔑ろにするなどと私には想像もできんよ」


「はっ」


「そもそもだ、君のところは何かと問題のある人間が集まりすぎている、その原因は・・・・・・まぁ私にもあるのだが」


 またもや始まった小言に目を顰め、よく飽きないものだと関心すらしてしまう。


(さて・・・・・・今日はこれからどうしたものか・・・・・・)


 とりあえず相槌を打ちながらそんなことを考える。

 生憎と予定なんてものは無い、買い物にいくにしろ今からでは基地の外に出る気にもならない。まぁ、買い物は殆ど通販で済ませているからいいのだが・・・・・・


「社中尉は仕方がない・・・・・・彼は一応『客』でもあるわけだからな」


 その彼が今日はいないので、部下の娘達を彼に嗾けて楽しむのも出来ない。


「橘少尉はあんなことがあったと言うのに・・・・・・聞けば社中尉とそのなんだ、人目を憚ることも無く良い仲だそうじゃないか?君からも少し自重するよう言っておいてくれたまえ」


 それは誤解だと思うのだが・・・・・・まぁ別にいいか。


「城崎中尉はまぁいい、彼女は光菱との橋渡しで苦労しているようだからな」


 苦労しているのは隆だったりするのだが・・・・・・気づくわけもないか。


「桐嶋中尉もどうも良い噂を聞かんしな・・・・・・」


 あのイケメン(隆言語)も物静かなくせにたまにとんでもない発言をする・・・・・・大人しく黙っていれば良いものを。


「そうなると瀬戸少尉ぐらいか・・・・・・君のところでマトモだと言える人間は」


 自分はどうなのだと聞きたくなるがスルーする。確かに副司令の言うとおり、瀬戸が部隊では一番の良識人だと自分も納得している。


(一番若いのに大したものだ・・・・・・)


「瀬戸少尉も複雑な生い立ちがあるからな・・・・・・彼女には同情するものがある」


 しみじみと呟く副司令の姿に少しばかり驚く。


「ん?・・・・・・まぁそのなんだ・・・・・・瀬戸少尉の父親には昔世話になってな、色々あるわけだ彼女の家の事情というものは」


 副司令が瀬戸の父親と知り合いだとは初耳だった。いや、瀬戸自身も知らないのかもしれない。以前城崎に聞いた話では父親と絶縁状態だとも聞いているし・・・・・・彼女の父親には自分も会ったことは無いが、話くらいは噂で聞いている。


(・・・・・・規律と法を守る男だと聞いているが)


 自分の師である亡き上官と対立すらしていた男、だが聞いた噂と二人の部下から聞く話はどうにも一致しない。そんな物事に堅い男が、家族を捨ててまで軍に身を置くのだろうか?


「・・・・・・彼も複雑な事情で子供を亡くしているからな・・・・・・残った娘と仲良くやって貰いたいものだが難しいものだな」


「は・・・・・・自分もそう思います」


「うむ、であるからして君にはいっそう部隊の管理を引き締めて欲しいのだよ・・・・・・そもそも君のそう言った態度が」

 
 また始まった副司令の言葉にうんざりと肩を落として、暫くこの司令室に缶詰になるであろう自分を予想して・・・・・・


(面白くないな・・・・・・)


 そんな風にまたもや思ってしまうのだった。







同日  14:30
百里基地  瀬戸真奈美・自室


<瀬戸 真奈美>


(うう・・・・・・助けて)


 折角の休みなのに気分が悪くて何もする気が起きない。
 明かりも点けずに、自室のベットで横になりお腹を押さえて唸る自分・・・・・・なんてシュールなんだろう。


「・・・・・・うっぷ」


 軽く吐き気を覚えて口を押さえる・・・・・・なんとか我慢できたが気分が悪いのは変わらない。

 ちなみにつわりだとか言う人は引っぱたく、生憎と自分にそんなことが起きる要因はこれっぽっちも無い。


(それはそれで悲しいけど・・・・・・)


 などと自虐しながら、よろよろと身体を起こす。
 少しくらい体勢を変えたほうが、胃に優しく消化を助けてくれるかもしれない。


「・・・・・・はぁ」


 深い溜息、無理も無いと思う・・・・・・最近の栞は異常だ。
 何時からだろう?確か、航空祭あたりからだろうか?彼女が自分に食事を過剰に勧めるようになったのは。


「どうしたんだろ・・・・・・栞さん」


 こればっかりは全く意味が分からない。相変わらず彼絡みかとも思うが、結びつく理由が思い当たらない。
 色々と食事に気を使ってくれる、成長に良いからと笑顔で言って色々食べさせてくれる、その好意は自分の身体に少しばかりコンプレックスを持っているのでありがたいのだが・・・・・・食べ終わるまで『あの瞳』で見続けているのは正直止めて欲しい。


 残したらホント洒落にならない結果が待ってるような気がする。


(・・・・・・でも手作りレモネードは美味しいから嬉しいな~)


 などと餌付けされている自分がいたりするのだが・・・・・・最近危険だ、何が危険かと言うと、乙女の大事なパロメーターの一つが大変な事になりつつある。

 成長も縦に進む分には大歓迎なのだが、横に進むのは本当に勘弁して欲しい。本当に洒落抜きで、身長低くても小柄だから許されるナニかも横に広がったら目も当てられない。


「む~」


 呻きながらお腹の辺りをポンポンと叩く。
 それなりに鍛えているから胃がぽっこり出るような事はないが・・・・・・それでも恥ずかしい、とてもじゃないが他の人には見せられない。


「!?」


 コツコツと廊下を誰かが歩く音でビクついてしまう。
 足音は自分の部屋を通り過ぎて遠ざかって行く・・・・・・それに我知らず安堵してしまう。


(う~思い出しちゃったよぉぉぉ)


 お昼に突然部屋をノックされドアを開けたら栞がいたのだ、満面の笑みでしかも両手に大きなバスケットを持って。そう、今日は休みだから自室でゆっくりしてようかと思ったのに・・・・・・昼時になったら『弁当』がやってきたのだ。

 今日は訓練が無いから後の事は考えるなと、しこたま食べさせられた・・・・・・むろん拒否権なんて無い、そんな言葉はあの目を見たら言う気力なんて無くなる。

 栞も彼がいなくて暇なのだと思う・・・・・・だから自分なんかの所に来たのだろう。


(隆さ~ん、助けてよぉぉぉぉ)


 無駄と分かりつつ、基地にはいない彼に助けを求めてしまう。
 彼は今横浜に戻っている・・・・・・定例の里帰りとも言えばいいのだろうか?相変わらず妹に会うことを楽しみにしているようで、戻る際の彼の顔は緩みっぱなしだった。


 自分にも・・・・・・兄がいればああだったのだろうか?


 亡くなった母は優しくて厳しい人だったので、あんな風に人目を憚らず溺愛するオーラを出すような人ではなかった。姉は・・・・・・何処か抜けた人だったので、別の意味で可愛がられたかもしれない。

 どうなのだろう、兄がいる感覚と言うものは?

 姉はいる、仮初だけど・・・・世間知だけど・・・・敬愛する葵がいる。自分に残された最後の家族・・・・父はいい、会いたいとも思わない。


(・・・・・・葵さん何してるのかな~)


 彼もいないので書類作りはしていないと思う。実は最近、二人の邪魔にならないように仕事を手伝っていたりするのだが・・・・・・


「・・・・・・ふふ」


 その場面を思い出して口元が緩んでしまう。

 ぎゃーぎゃーと言い合いをしながら仕事をする騒がしい二人、とっても五月蝿くて、とっても落ち着きが無い二人・・・・・・たまに思う、自分が一番年上なんじゃないかと。

 でも二人を見ていると凄く楽しい。最初は葵が遠くに行ってしまったかと思ったがそうじゃ無かった・・・・・・私達姉妹の間に彼が入って来たのだ。遠慮無く、図々しくも、彼はやってきて私達を楽しませてくれる。
 葵もソレを楽しんでいるのは見て分かる、口でなんだかんだと言いながらも、その状況を彼女が楽しんでいるのは長い付き合いで手に取るように分かる。

 変な人で、変なやり方で私や葵に近寄ってきたがとても気遣いができる人だと思う。
 そんな彼に気づいた時は・・・・・・やはり大人なんだと感じる。


 そうなると、彼が私の兄になるのだろうか?


「・・・・・・もしくはお父さん?」


 自分で言って噴出してしまう、きっと彼にそんな台詞を言えば間違いなく憤怒することだろう・・・・・・俺はそんなに歳取ってないと。

 でもたまに思うことがある、彼と葵、そして自分・・・・・・三人で過ごせたらと。まだ母と姉がいた頃のように、平和に過ごせたらと。
 

 それは、どんなに楽しくで・・・・・・幸せなことだろうか。


 きっと楽しいと断言できる。いつものように彼と葵が騒ぎあって、私が二人を呆れながら眺めている・・・・・・しかも二人の子供なんかを抱き締めながら見れたら、どんなに幸福な気持ちになれるだろうか?


(でも・・・・・・そうなると栞さんが黙ってないか)


 苦笑してベットから立ち上がる。


 そう彼女が黙っているわけがない、きっとそんな幸せ一杯の部屋の外で狂気に駆られた瞳で佇んでいるに違い無い・・・・・・いや少し言い過ぎかコレは。


 それに、所詮それは妄想に過ぎない。
 彼には既に相手がいる、麻美さんって言う婚約者がちゃんといる。だから今の考えは全部妄想、あったらいいなと思うただの願望。


「麻美さんってどんな人なのかな~」


 前に少し聞いた話だけでは想像が出来ない、でも嬉しそうに話す彼の態度からきっと素敵な人なんだろうと予想してみる。彼がもっと話をしてくれれば想像も膨らむのに・・・・・・彼は余り彼女の話をしてくれない。

 ちゃんと連絡して捕まえているのだろうか?まぁ、彼と一緒になると決めた人なんだからその辺りは大らかな性格なのかもしれない。


 まだ少しお腹が重いが、軽く身体を動かしてみる。
 彼に聞いた運動、なんでも米国の軍が採用しているエクササイズらしいが・・・・・・本当に物知りな人だと関心してしまう。


(なんとかブートキャンプとか言ったかな?)


 それを真面目に一週間やれば誰でも痩せると言う、密かに百里の女性隊員の間でブームになっていたりする。ただ、それを指導する際の彼の表情は・・・・・・微妙に笑顔過ぎてキモイ(隆言語)のだが。


「よっと・・・・・・ほっと・・・・・・」


 教えられた動きを再現してみる、狭い室内なので制限されるが・・・・・・下手に外に出て栞に出くわすよりは遥にマシだ。


 ・・・・・・などと・・・・・・思ったのがいけなかったのだろうか?


 ぎぎぃぃっと部屋のドアが勝手に開く。

 足音がしなかった、気配もしなかった、それなりに気をつけていたと言うのに。


「真奈美~随分と元気そうね~?」


 考えてみれば、昼に現れた時も気配など微塵にも感じさせなかった。迂闊だった、慢心だったと自分を責めても時既に遅い。


「し、栞さん」


 恐る恐る彼女に振り向くと、やはり満面の笑顔で手にバスケットを持った彼女が立っている。


「はい、三時のおやつよ、それだけ動けるならきちんと食べれるわよね?」


(うう・・・・・・助けて)


 心で涙を流す事しかできなかった・・・・・・






同日  18:30
百里基地  桐嶋久志・自室


<桐嶋 久志>


(張り合いがない・・・・・・・)


 手にしたマドラーを弄びながらそんなことを考えてしまう。
 小さな机の上に広げた幾つかの品を一瞥して嘆息する、幾ら揃っていてもレシピが無ければ何の役にも立たない。精々使うときのことを考えて磨くだけだ、自分では彼のように上手く作ることができなかったので仕方が無いだろう。


「・・・・・・ふむ」


 マドラーを机に置き、銀色のシェイカーを手にとって綺麗な布で表面を丁寧に磨き上げ、自分の顔が映りこむぐらいに輝いてから再び机に戻す。

 正直、休みの日になにをしているのだと自問したくなるが・・・・・・彼がいないのだ仕方が無い。

 マドラー、シェイカー、アイスベール、それとスプーンや専用のグラス等・・・・・・カクテル作りには欠かせない品ばかりが机の上に並んでいる。元々は趣味で持っていたのだが、特に使うこともなくしまってあったものを、彼が見つけ出してカクテルの作り方をレクチャーしてくれたのだ。
 
 酒や煙草はこの世界の数少ない趣向品の一つ、天然食料に比べれば幾分かは入手はしやすい。


「まったく、何処で覚えてきたのだか・・・・・・」


 なんでも昔酒場で働いていた経験があったと言うが、アイツは本当に軍人なのだろうかと詰問したくなる。もしくは国連の連中はそんな人間の集まりなのだろうか?  

 元々国連にいいイメージは持っていなかったが、最近はそのイメージが少々変な方向に変わりつつある。
 幾ら横浜が国内でも後方の基地だからと言っても・・・・・・彼のような変人ばかりだとは思いたく無いが、自信が上手く持てない・・・・・・彼の妹なんかが託児所よろしくいる当たり、日和見主義の連中ばかりなのではないかと予想してしまう。


(まぁ・・・・・・どうでもいいことだがな)


 国連の実情に興味は無い、連中が何をしようとも自分に関わることもなだいだろう。


 ・・・・・・彼は別だと付け加える自分がいたりするが。


「さて・・・・・・どうしたものか」


 磨き上げられた品を眺めながら嘆息する、一応幾つか覚えているレシピもあるが、酒を一人で飲んでも仕方が無い。一人で飲む酒もいいのだが、彼と関わってからは誰かと飲む酒が面白くなりつつある。

 とは言っても飲む相手はもっぱら彼一人だけだ、何でも男同士で飲む酒が一番気を使わなくて良いとの彼の意見なのだが、果たしてそうなのだろうか?

 酔った彼の姿は見ていて楽しい、一人でなにやら弾けているのを見ると、たまに腹筋が崩壊しそうになる・・・・・・あれだけ面白いなら他の連中にも見せればいいものを・・・・・・何を躊躇っているのか理解に苦しむ。


 自分も・・・・・・彼のように弾けることができたらなと思うが、まぁ無理な話だろう。


 彼は強い、何かを悩んでいる素振りをたまに見かけるが、きっとそれを他の同僚達は気づいていないだろう。彼がそんな姿を見せるのは決まって酔った時だけ、半ば愚痴るように自分の意義を自問し続けている。

 何を悩んでいるのかは知らないが、それが深いものだとは感じることができる・・・・・・ゆえに、そんな悩みを抱えたまま普段のあの素振りを見せる彼は強い、全てを投げ出してしまった自分には到底真似出来ない。


(俺には社のように・・・・・・将来を誓った相手なんか居ないしな)


 そんな風に考えた相手がいなかったわけじゃない、だが皆死んでしまった・・・・・家族も友人も知人も、皆死んでしまった。だから自分は一人だ、いつ死んでも、いつ消えても・・・・・・別に未練など無い。


 以前彼に言った言葉の通りだ、人間はいつか死ぬ、それは紛れもない事実だ。


 男も女も、子供も老人も、貧しいものも裕福なものも、皆いずれは死ぬ。
 死ぬことから避けることは出来ない。

 そんな退廃的な思想を持った自分が、彼のように振舞えるわけが無い・・・・・・精々彼の言動のスパイスになる程度だ。


「・・・・・・」


 目を閉じれば死んでいった人たちの姿がぼんやりと浮かび上がる、そうあくまでもぼんやりとだ、はっきりと思い出せるわけじゃない。記憶だってそう、少しづつ劣化していき、やがては忘れてしまう。

 だからだ、いつ死ぬか分からないから・・・・・・日々を楽しむ。楽しみかたは人それぞれだが、今の自分は彼の様子を観察するのが一番の楽しみと言える。


 奴は本当に見ていて飽きない、先ほどはこの世界に未練は無いと言ったが訂正する、奴の姿を見れなくなるのは少々心残りだ。


 ならば詫びなければならないのかもしれない。

 大陸の戦争に出兵して死んだ父に、父が死んだ知らせを受けショックで身体を壊して死んだ母に、自分よりも後に徴兵されたくせに横浜の作戦で死んだ弟に、自分の代わりに散っていった多くの同胞に詫びなければならないだろう。


 自分は・・・・・・まだ其方に行けそうにないと。


 多くの犠牲の上に生きてた自分は、そろそろ次の誰かのために犠牲にならないといけないだろう。


 だがもう少し時間が欲しい・・・・・・そうだな奴の出向期間が終わって横浜に戻るまでは生き延びさせて欲しいと。


「・・・・・・ふん」


 自分も随分と変わったものだ。人と付き合うことに距離を置いていたくせに、今では彼の言動が気になって仕方が無い。


不思議な男だ・・・・・・本当に。


 そんな思案をしていると、部屋のドアをノックする音が聞こえてくる。


「どうぞ、ドアは開いてるぞ」


 声を掛けると、一人の女性がひょっこりと顔を見せる。


「あ、お疲れのところすみません・・・・・・今、大丈夫ですか?」


 見た顔だ、確か事務の文官だと記憶している・・・・・・名前はそう・・・・・・


「・・・・・・菊池少尉だったかな、なにか用かな?」


「へっ?私の名前ご存知だったんですか?」


 名前を覚えていたことが余程意外だったのか彼女は目を丸くして驚く。そんな姿を見て思わず苦笑してしまう、確かにその通りだ以前の自分であれば絶対に記憶などしていなかっただろう。


「ああ、社中尉が君に世話になっていると何時も言っていてね、それで知っていたわけだ」


 ・・・・・彼が部隊の書類整理を全て引き受けているので、愚痴を聞いていれば自然とその方面の名前も出てくる。


「そ、そうなんですか・・・・・・」


「ああ、若いのに優秀だって聞いているよ、期限が切れた書類も無理やり上に押し込んでくれるから頼りになるって」


「は、はははははは」


 乾いた声を上げながら笑う彼女を見て、ふと疑問に思う。


 何故、彼女はこの部屋に来たのだ?


「あ、あの・・・・・・その・・・・・・そうだ、社中尉は今日は一緒じゃないんですか?よく一緒にいる姿をみるんですが・・・・・・」


 それは誤解じゃないかと言いたくなる。
 彼といつもいるのは三人娘だ、まぁ自分や川井といた時のほうがリラックスしているのは知っているが・・・・・・ただ、言いよどみながら聞いてきた彼女の言葉に納得する。どうやら彼女は彼を探しているようだが、生憎と彼は横浜基地へと戻っている・・・・・・幾ら基地内を探し回っても見つけることは出来ないだろう。


(社のファンも多いことだ・・・・・・)


「社中尉なら今この基地にはいないぞ、今頃横浜で妹と仲良くやっているとこだろう」


「や、やっぱり・・・・・・シスコンって噂は本当なんですか?」


「少なくともロリコンの気はあるらしい・・・・・・目撃情報は聞いているだろう?」


 コクコクと頷く彼女を見て苦笑する、やはりあの男はこの基地の名物になりつつあると。


「そう言うことだ残念だったな・・・・・・まぁいても・・・・・・きっと邪魔が多くて話しかけられないだろうが」


 同僚の姿を思い浮かべながら答える、実際あの包囲網の中の彼に接触するのはかなり困難だろう・・・・・・下手に手を出せばどうなるか分かったものじゃない。


「あ、その、そうじゃないんですけど・・・・・・桐嶋中尉、今お暇ですか?」


「ん?・・・・・・見ての通り、特にすることも無いんだが」


 質問の意図が理解出来ず、ありのままに答えると彼女はパアッと表情を明るく変化させる。


「で、でしたら・・・・・・そのこれからご一緒に食事でもどうかと・・・・・・」


「ああ、別に構わないが・・・・・・社も川井もいないと面白くもないと思うが?」


「いいんです、桐嶋中尉がお暇でしたらそれでいいんです!!」


 突然強く押し切られ、ずかずかと部屋に入って来た彼女に手を引かれる。


「こんなチャンス滅多に無いんです!!社中尉達の影響でランサーズの方々には話しかけづらい雰囲気があったんですが今ならグラサンがいません!!あの修羅達が大人しい今しか、ランサーズの人に接触するチャンスが無いんです!!」


「????・・・・・・意味が分からんが・・・・・・まぁいいか」


 力説しながら自分をPXまで引っ張る彼女を見ながら嘆息してしまう。


 行く途中で他の女性隊員も増えたりしたのだが・・・・・・


(張り合いがないな・・・・・・)


 きっとここに社がいれば面白いことになったと思うのだが・・・・・・彼がいない現実にそう思ってしまうのだった。






同日  21:30
百里基地  社隆・自室


<橘 栞>


(うふふふふ・・・・・・・)


 内心でほくそ笑みながら、そっとドアを開けて部屋の中に忍び込む。
 むろんこの部屋の家主が不在なのは知っている、彼は横浜に帰っているのは周知の事実だし、この時間に帰ってこないあたりきっと朝帰りだろう。

 そこまで横浜の妹がいいのかと釈然としない気持ちがあるが、今はそんな些細なことを気にしても仕方がない。
 部屋の明かりを点けることなく進み、数少ない調度品の一つであるベットに潜り込む。


 モゾモゾとシーツに身を包み、枕へと顔を埋める。


「ん~~~~~!!」


 彼の匂いを鼻腔一杯に感じて一人で悶える。
 傍から見ればただの変態だが、ダレも見てるわけが無いので気にしない、そう気になんてしてられない。


(ああ・・・・・・幸せ・・・・・・)


 もっと早く気づけば良かった、彼が横浜に帰ってる時はこの部屋は無人なのだ、朝の点呼まではこの部屋を自分の好きに出来る!!なんて素敵なことだろう・・・・・・

 全身で身体をベットに擦り付ける、本当にいて欲しい対象がいないのは甚だ不本意だが・・・・・・例えいても逃げられるのが関の山なのでどうでもいい。


「・・・・・・」


 少し肌寒さを感じてシーツに深く包まる。
 むろん全身でこの匂いを感じるために寝巻きなんて無粋なものはいらない、今自分は下着と薄いキャミしか付けていない・・・・・・誰も入ってこないのは知っているが流石に生れたままの姿になる勇気はなかった。

 むろん部屋に入るのにはお得意のピッキングで侵入した、こちとらコレでも衛士になるまでは危ない橋を幾つも渡ってきたのでそれぐらい造作も無いことだ。


「むふふっふふ」


 身体を温めるためにもシーツに包まってゴロゴロベットの上で転がる、狭いベットなので満足に動けないのが口惜しい。


 まぁそれでも二人が寝るくらいのスペースがあるので、有事の際に十分だから不満は無いが・・・・・・


(くぅ・・・・・・あの時も葵と真奈美が邪魔をしなければ)


 このベットで彼と二人きりになれた瞬間を襲った悔しい記憶が思い出される。

 真奈美はまぁいい、彼女の豊胸計画は着実に進みつつある。今頃きっと自室でお腹パンパンにして身もだえしていることだろう。
 あの相変わらずの鈍感お嬢様には正直イラつく、チョコ騒ぎでも自分の権力を大いにひけらかして彼のポイントを多く奪ったのが更にムカツク。


 しかし・・・・・・やはり金の力は偉大かと実感してしまう。


 自分には彼女のような後ろ盾などは一切無い。

 ・・・・・・余り誰にも言っていないが、自分には家族と言える人がダレも居ない。

 何せ自分は孤児院育ちだ、仲間はいたが親と呼べる人はダレもいなかった。
 こんなご時勢だ、自分のような孤児は帝国には多く存在する。戦争で親を失うか、子供育てる力が無くて止む無く手放すか・・・・・・そのどちらかで孤児が生れる。
 自分の親は後者だったと聞いているが、別にそのことを今更恨んでなどいない。こんな世界、それも仕方の無いことだと割り切っている自分がいる。
 別の未来もあったのかもしれないが、孤児院に預けられたことで今自分はこうして軍に在籍していられる。


 孤児院で育った子供は例外なく軍へ進む、孤児を預かる施設そのものが軍が管理しているので当然とも言える。
 自分はたまたま衛士適性が高かったので戦術機に乗ることができた。孤児院で同年代だった仲間の多くは横浜の作戦で殆ど死んでいると聞いた・・・・・・未だ生きている自分は彼らに比べれば幸運だろう。


「・・・・・・」


 もぞっと、シーツを口元まで上げて天井を見上げる。


 あの頃の暮らしに比べれば此処は天国だ・・・・・・食べる物に不自由しないし、寒さに凍えることも無い、管理している人間の同情の視線に晒させることも無い。


 此処は自分の力で、誰にも頼らず勝ち取った自分の居場所だ。


 だからたまに葵の態度にはイラっとくるものがある・・・・・・ただの嫉妬から思う気持ちだとは理解している。


 子供は生れる家を選べない、自分の親を選ぶことなど出来ないのだから。


 世界は不公平で満ちている・・・・・・その中で幸せを勝ち取るためには、誰にも頼らずに自分の力でもぎ取る必要がある。


 だから・・・・・・彼のことは誰にも譲れない。
 依存のし過ぎだと理解しているが・・・・・・それは間違ったことなのだろうか?人が誰かを好きになって、その相手にもたれかかるのはいけないことなのだろうか?
 彼の言葉が気になり、彼の仕草が気になり、彼の見ているものが気になり、彼の全てが気になる・・・・・・それが自分だったとしたらとても嬉しく感じる。


 それぐらいの幸せを・・・・・・認めてくれてもいいんじゃないかと誰かに訴えたくなる。


(・・・・・・むぅ)


 自分は我侭だろうか?彼を好きになった自分は我侭なのだろうか?


 でもだとしたらそれは全部あの男が悪い。婚約者いるだの言いながらも、こっちの懐にズカズカ入ってきたあの男が悪い・・・・・・まぁ、最初はこっちが近づきすぎたところもあるが、今となってはどうでもいい。

 しかも自分だけじゃなくて、葵や真奈美等の他の女にまで手を付けている当たり尚さら性質が悪い。彼が人当たりを気にして、やたらと周囲に気遣いを欠かさず八方美人を心がけているのは知っているが・・・・・・もういいんじゃないかと思う。

 少なくとも自分は今更彼がどんなに豹変しても付いていく覚悟はある。


(・・・・・・こないだだって、我慢しなくても良かったのに)


 グスっと、やはりあの時の事が悔しくて少々涙ぐんでしまう。


 何故だろう?いつもいつもいつもいつもいつもいうつもいつも邪魔が入る、北海道の時も、彼が雪風に乗った後の時も・・・・・・あとちょっとの所で邪魔が入る。


 何がいけないんだろう・・・・・・やっぱり自分は幸せになっちゃいけないのだろうか?

 やり方が卑怯なのは分かっているが、少しぐらいいいじゃないかと思う、別に減るものでもないし・・・・・・あぁ自分は減るかもしれないが・・・・・・別に彼ならいいや。


「・・・・・・バカ」


 なんて思ってしまう自分がちょっぴり憎らしい。
 恋愛は惚れたほうが負けとはよく言ったものだ。私に言わせて見れば、相手の事が本当に好きだからこそナニをされても許せるだけなのだと思うのだが・・・・・・


 モゾモゾとベットの上で右往左往してみる。

 何処を向いても彼の匂いがする、男の汗の匂いなんて本当は不快なだけなのに何故だがそうは思わない。


「はふぅぅぅうっぅ」


 なんて声まで上げてしまう始末・・・・・・我ながら本格的にまずいんじゃないかと心の何処かが警報を鳴らしているような気がするが・・・・・・


(仕方が無いじゃない!!だって・・・・・・こないだは触ってくれたし)


 取りあえず自分自身に言い訳してみる。

 前回の惜しいシーンでは彼が始めて手を出してくれたのだ、顔を優しく撫でてくれて・・・・・・強化装備越しだったが・・・・・・そのなんだ胸も触ってくれたし。


 誘導したのはあくまで自分だったりするのだが・・・・・・


 あの時の事を思い出し過ぎたせいか・・・・・・なんだか頬が暑い、しかも身体が火照っているような気がしてなにやらムズムズする・・・・・・


(む、むぅ・・・・・・溜まってるのかしら私)


 だとしたら、それも当然彼のせいだ、責任は全部彼のせいだ私は一切悪くない・・・・・・はず。
 しかもなんだ、おあつらえ向きに彼の部屋だし・・・・・・条件は揃っていると言えば揃っている。


(う、うふふふふふふっふ)


 入ってきたと同じく内心でほくそ笑みながら、シーツを頭まで被ったのだった。



















2月25日 00:20
百里基地  社隆・自室


<社 隆>


(・・・・・・・何故だ)


 目の前の光景に眩暈を覚えながら自問するが・・・・・・答えなんて出るわけがなかった。

 横浜で百里には明日帰ろうと思っていたのだが、生憎と霞が夕呼の手伝いに呼ばれ、水月達も訓練に入ってしまったので特にすることもなくなってしまったので百里に戻ってきたのだが。


 明日の早朝に帰ってくれば良かったと後悔する。今までも、もしかして自分が不在な時は似たような事が起きていたのかも知れない・・・・・・だいたい点呼前の朝方に帰ってきていたので出くわすことが無かっただけなのだろうか?

 鍵は掛けてあったが前回も掛けてあったのに侵入された、この女はピッキングでも出来るのかと聞いて見たくなる。


 自分のベットで・・・・・・スヤスヤと眠る橘に。


「・・・・・・はぁぁぁぁ」


 深々と溜息をつく、ってかソレしか出来ない。

 最初部屋に入った瞬間から既に異変を感じた。明かりを点けるまでも無く誰かの気配を感じ、しかもなにやら女性特有の甘い香りと言うか石鹸の香りが鼻に付いたのだ。
 その時点で予想は付いた・・・・・・ちと起こすのも忍びないと思って照明を点けなかったのだが、暗闇に慣れた目にははっきりと自分のベットで寝る橘の姿が見える。


(こいつは・・・・・・また襲われてほしいのか?)


 幸せそうに眠る彼女の姿を見て頭を抱える。


 何を考えているのか下着と薄手のキャミソールしかつけておらず・・・・・・しかも寝相が悪いのかシーツも捲られ半裸状態が丸見えだ。自分だからよかったものの・・・・・・普通の健康な成人男子なら問答無用で襲い掛かられても文句も言えない姿だろう・・・・・・ちらりと見える程よい大きさの双丘や、シーツからはみ出た脚線・・・・・・誘っているとしか思えない。


 当然、自分は必死に注視しないように心掛けている。


(止めてくれ・・・・・・それで無くても溜まってるんだから)


 内心で嘆息しつつ、捲れたシーツを彼女に掛けなおしてやる。


「・・・・・・ん」


「!?」


 一瞬声が聞こえ起きたのかと緊張したが・・・・・・ただの寝言だったようで安堵する。


(ま・・・・・・美人ちゃ美人だわな・・・・・・)


 きっちり肩までシーツをかけてやった後、なんとなしに暗闇に浮かぶ彼女の顔を眺めてしまう。

 綺麗に整った顔立ち、少し癖があるが艶のあるショートの黒髪、スタイルもそれなりのものを持っているし・・・・・・麻美よりは間違いなく胸は大きいが。そ~いえば、やや自分勝手な所は似ているかもしれない。

 よくもまぁこんな美人に追いかけられる自分がいるものだと半ば呆れつつも・・・・・・麻美がいることで平然と受け止められてしまう自分自身に尊敬してしまう。


 なんにしろ自分には過ぎた女性だ・・・・・・橘栞と言う女性は。


(そ~いえば・・・・・・結局名前で呼んでやってないな)


 やはり水月に偉そうなことなど言えない、彼女は前に進もうと頑張っているのに、自分は橘の名前を呼ぶことすら躊躇っている・・・・・・どうしようも無い臆病者だ。別に呼んでもいいのではないかと思うのだが・・・・・・ここまでくれば最早意地だ、今更呼び方を変えるつもりは無い。


 それに彼女を名前を呼ぶのは、彼女の気持ちに応えるのと同義ではないかと考える自分がいる。その気持ちに答えると言うことは、麻美との約束を違えること・・・・・・元の世界に戻るのを諦めるということに繋がる・・・・・・生憎とまだそこまで絶望しちゃいない。


 夕呼の言う自分が飛ばされた原因は未ださっぱり分からないが希望を捨てたわけじゃない。

 いつか帰るために、生き残るためにこうして衛士なんて自分に向いていない職に就いているのだから。


「・・・・・・はぁ」


 彼女には内心で謝ることしか出来ない・・・・・・我ながらなんて贅沢な話だと自嘲してしまうが。


 自分が彼女を幸せにしてやることは出来ないが、彼女には幸せになって欲しいと心から思っている。こんな廃れた世界で、彼女のような良い女が戦場で死に逝くなんて現実は見たくない。


 衛士としての腕は彼女のほうが上だが・・・・・・一緒にいる間は全力で守ってやりたいと思う。


 まぁ、誰にも頼りたくない彼女にしてみれば甚だ迷惑な話だろうが。


「む・・・・・・」


 またもや寝言を立てる彼女に苦笑する。

 橘の過去は実のところ何も知らない、軽くこの茨城で生れたと聞いたがそれ以上は詳しく知らない。とくに聞く気もないし、彼女も今まで話さないところをみると自分から言う気も無いのだろう。

 ま、こんな世界で生きてきたのだから自分には及びもつかないほどの苦労をしているのだと推察はできるが。


「・・・・・・さて」


 何時までも彼女の寝顔を見ていても仕方が無い、流石に一緒のベットで寝るわけにも行かないし・・・・・・かといってこの部屋の床で寝るには少々寒すぎる、何処か寝場所を確保せねばならないだろう。


(まだ寒いからな・・・・・・暖房がある場所がいいな)


「んん・・・・・・」


 寝場所を思案しているとまたもや橘の寝息が聞こえてくる。どうやら彼女は寝相が悪いのかもしれない、またもやはだけたシーツに嘆息して再度掛けなおしてやる。


「・・・・・・たかし・・・・・・」


 掛けなおす途中、自分を呼ぶ声が聞こえて手が止まってしまう・・・・・・随分と好かれたものだと苦笑する。

 一度頭を振ってシーツをきっちり掛けてやる、傍まで寄ったせいかまじまじと彼女の顔を眺めると・・・・・・その目蓋が一瞬濡れているようにも思ったが、気のせいだと自分に言い聞かせる。

 これ以上意識するのは危険だ、今でも十分過ぎるほど意識していると言うのに・・・・・・取り返しがつかなくなるのはゴメンだ。


 彼女の気持ちに答えてやれないことに本当に申し訳無く思いながら部屋のドアへと向かう。


「・・・・・・じゃあな・・・・しお・・・・橘」


 言いかけ、やはり思いとどまり・・・・・・そう言ってから部屋から退出した。


























 追記、次の日の早朝。


 整備班達の何気ない会話。


「班長~!!」


「なんだどうした?」


「社中尉の胡蜂の主機ユニットに火が入ってるんですが・・・・・・なんか意味あるんですか?」


「なに?・・・・・・俺は聞いてないぞ?」


「あ~・・・・・・自分が知ってます、なんか昨日の深夜に社中尉が突然格納庫にやってきて、胡蜂のシステムをアップデートするとかなんとかで乗り込んでました」


「アップデート?・・・・・・そういえば横浜に戻っていたらしいな・・・・・・そん時に持ってきたのか?相変わらず仕事熱心だなあの兄ちゃんは」


「シスコンでロリコンでグラサンなんすけどね?」


「ああ、でなきゃアレだけ橘少尉や城崎中尉がコナかけてるのに反応しないわけが無い」


「あれか、やっぱり噂どおり・・・・・・」


「賢者!!」×複数


「馬鹿な事いってないでとっとと胡蜂の主機ユニット止めろ!!んなくだらねぇこと言って、またあんな事があった日にはてめぇら全員去勢すっぞ!!」


「え~班長、私達にまでそう言うこと言うんですか~?」


「ぬぐっ・・・・・・ほらソコのお前はやくしろ!!ったく・・・・・・社中尉にも注意しとかんとな、流石に主機ユニット起動したまま放置されたんじゃ危なくて適わん」


「了解で~す」


「でもさ、実際どうなんだろ社中尉って?」


「うんうん私も気になる、大津~川井中尉から何か聞いてないの?」


「え・・・・・・私は別に・・・・・・興味無いし・・・・・・」


「はいはい、言ってなさい・・・・・・婚約者がいるって噂もあるけど・・・・・・どうなんだろ?」


「あ~俺も聞いたけど誰も見たことないらしいぜ、しかも横浜にもいないらしい」


「???なに、それってどう言うこと?やっぱりブラフ?」


「さぁな~でも賭けの倍率では一番大穴だぜ今のところ?」


「えっと・・・・・・今のところ一番人気が橘少尉の1.1倍、それから城崎中尉が1.5倍、瀬戸少尉が2.0倍、三澤大尉が3.3倍、横浜にいるらしい妹が7.0倍、噂の婚約者が100倍ってとこだ」


「ダレだよ・・・・・・そんな大穴狙ってるの?」


「ってか妹ってありなのか?」


「おいおい、インパルスのドルフィンライダー忘れてないか?」


「ああ杉原大尉だな?大尉は・・・・・・5.5倍かな?っても瞳ちゃんは松戸少佐がいるからな~この倍率も怪しいもんだ」


「待ってよ、桐嶋中尉と川井中尉は!?」


「そ~よ!!ええっと私達の調べでは・・・・・・松土少佐も絡めて結構いい倍率よ!?」


「うぇ!?社中尉ってそんな趣味あったのか!?」


「流石、賢者・・・・・・あなどれん」


「ねぇねぇ、カップリングはどう思う?私・・・・・・桐嶋×社かな?」


「え~~~~私は川井×社かな?」


「どっちしろ社中尉が受けかよ!!」


「か、川井中尉にそんな趣味無いって!!」


「何よ大津~あんただって言ってたじゃない?社×川井とか言って一人で悶えてたくせに?」


「ち、違うよ!!」






「・・・・・・はぁ、こいつらはまったく朝から元気なもんだ」


「班長~~!!胡蜂の中に誰かいます~!!」


「あん?・・・・・・もしかしてまだ社中尉が乗っているのか?」


「かもしれませ~ん・・・・・・応答も無いんで強制開放かけていいでしょうか?」


「・・・・・・まぁ、いいだろう・・・・・・もしかしたら仕事のし過ぎで倒れてるかもしれん、誰か医務室に連絡しといてくれ」


「は~~~い」


「・・・・・・よっと・・・・・・社中尉~大丈夫ですか~~?・・・・・・あれ??」


「どうだ~~!!中尉の様子は?」


「はぁ・・・・・・その・・・・・・なんと言うか・・・・・・・・・・・・寝てます」


「はぁ?」×複数


「それはもう気持ち良さそうに・・・・・・あれ?でも泣いてたのか?涙の跡が??」


「・・・・・・・・・・ヤレヤレ・・・・・・仕方が無い点呼が始まるまで寝かせておいてやれ」


「了解で~~~す!!」


「あ!私写真取りたい!!航空祭で社中尉の写真が無いって言ってた不満な娘いっぱいるから!!」


「あ~私も~!!」










「・・・・・・うぅ・・・・・・何故だ・・・・・・何故俺がこんなめに・・・・・・誰か俺の原子核を変換してくれ・・・・・・」






 彼を発見した整備員がそんな寝言を聞いたそうな。
 






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