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DONの落書き部屋

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「Muv-Luv 小説」
第一部

槍訪問編 第2話

 

 ───どうしてこうなったのだろうか?


『ランサー6、OKよ。 ほえ面かかせてやるわ』

『A‐2、いつでも行けるわ・・・・・・格の違いってやつを見せてやるわよ』


 これも運命だったのか?


『えっと、ランサー7、問題無し・・・・・・です。 皆さんお手柔らかにお願いします』


『A-4、了解。 此方こそ宜しく頼む、なに可愛らしいお嬢さんを悪いようにはしないさ』


『まぁ美冴さんたら・・・・・・手加減しては失礼ですよ』


 それとも俺の日頃の行いが悪いのか・・・・・・


『ランサー1よりA‐1へ、お互い大変な部下を持っているようだな』

『ええ・・・・・・お互い苦労しますね』


 違うぞ伊隅大尉・・・・・・うちの隊長は間違いなく楽しんでる。


『・・・・・・なんで横浜まで来てこないなめんどくさいことせにゃならんのや・・・・・・全部、社が原因や』

『だな、巻き込まれる身にもなって欲しいものだ・・・・・・ふっ』

『その割には楽しそうですねランサー3?・・・・・・A-3よりCPへ、全機準備OKみたいよ』

「CP了解・・・・・・晶代~水月をちゃんと止めてね~」

『ちょっと!! ウチのCPは何してるの!? 戦域管制ぐらいできないなんて言わせないわよ!?』

「無茶言うなよ橘・・・・・・」

 反論する気力なんざ残っているはずもなく、肩を深く落としながら呻くように答える。

 目の前のスクリーンには10人の見知った顔が映っていた。
 その全てが様々な表情を浮かべている・・・・・・やる気満々なのが二名、楽しんでいるのが三名、どうでも良さそうなのが五名・・・・・・まぁ当然か。

 急遽決まった帝国軍と国連軍共同でシミュレーターを使用しての交流戦。

 何故こうなったかは説明するまでもなく・・・・・・自分のせい、そう皆さんのご想像通り自分のせいでこうなってしまったんですよ・・・・・・こうできちゃたんですよ・・・・・・はぁ。

 ん?皆さん?皆さんって誰だよ・・・・・・駄目だ、胃が痛くて考えがまとまらない。



 もう鬱だ・・・・・・死にたい。



 ───時は数時間前に遡る。







 槍訪問編   かれの胃が悲鳴を漏らす



 2001年4月10日13:30
 横浜基地  PX

<社 隆>

 国連太平洋方面第11軍・横浜基地。
 極東最大規模の国連基地だけあり、多種多様な人種の人間が広大な敷地の中で集団生活をしている。

 霞に聞いたのだが、この基地が本格的に稼動を始めたのは今年に入ってからだそうで、自分がまだいたころは7割ぐらいの稼働率だったらしい。

 多くの格納庫、広大な演習場、宇宙港まで備えた全長数キロにも及ぶ滑走路、それら地上に並び建つ建物よりも地下に広がる施設のほうが遥かに規模が大きいと言う。
 あまりにも広すぎて何処になにがあるのかなんて分かりゃしない、そもそも自分はこの基地に滞在していた期間は一ヶ月にも満たないので、基地の全てを把握してるわけじゃない。


(百里なら・・・・・・それなりに覚えたなぁ)


 本格的な稼動が始まったと教えられても・・・・・・具体的に何処が機能し始めたのやら・・・・・・
 
 BETAの巣であるハイヴが地下へ広がっているのは知っているが、その跡地に作ったこの基地の地下施設は何処まで広いのだろうか・・・・・・それよりもそんな跡地に基地を作って大丈夫なのだろうか?


(それでなくてもG弾の爆心地なんだし・・・・・人体に悪影響のある残留物質とか本当に無いのかねぇ)


 植生しない不毛の土地になったと聞くが・・・・・・G弾が使用されて2年しか経っていないのだ、調査は今も続けられているのだろうから、今後どんな結果がでることやら・・・・・・もっと深刻な影響が残っていると判明するかもしれない。


(ああ・・・・・・出来ることなら霞と引っ越したい、米国でも豪州でも・・・・・・南の島でもいいが、生憎アウトドアは苦手だからなぁ)


 考えてみれば二年足らずでこの基地は設立されたのだ。
 BETAによって横浜が占領され、ハイヴが建設される前は帝国軍の基地だったらしいが、土台が残っていたとしても幾らなんでも早過ぎないだろうか?


 基地が建設されるまで、どれほどの資材と人員が集められたのか・・・・・・高速道路と並んで大型施設の建設を行えば国内景気は一時的に良くなる、建築産業で大戦後の不景気を乗り切ってきた日本にとって見れば常套手段なのだろうが・・・・・・


(凄まじい公共事業だ、経済助長には大いに結構な話だが・・・・・・何処から金を集めたんだ?日本にそんな資金があるとは・・・・・・ああ国連基地だからそんなことは関係無いかぁ)


 元の世界でも、確かこの土地には私立の学園施設があったと記憶している・・・・・・同じ土地に形は違えど存在する巨大建築物、これも夕呼がよく言う因果の繋がりによるものなのかもしれない。



(俺が通ってた大学と結構交流があったんだよな~何度か来たこともあるし・・・・・・食堂の飯が上手かったなぁ)



 ・・・・・・とまぁ、現実逃避はコレぐらいにして・・・・・・そろそろ目の前の問題に目を向けねばならないだろう。


 そんな横浜基地に住む多くの人々が憩いの場所としているPX・・・・・・横浜の鉄人と言われる京塚曹長が仕切る食堂の一角にて、自分は目の前のコップに入った水を見ながら密かにそう決意し、傍に座る二人の娘の顔を見て口を開こうとして・・・・・・・・・・・・あっさり挫けた。


(やっぱ無理・・・・・・ああ、胃が痛い)


 睨み合う二人の娘の間で肩身の狭さを感じながらがっくりと肩を竦める。


「「・・・・・・」」


 周囲に険悪な雰囲気を醸し出し、一瞬たりとも相手から目を離さない二人。



 橘栞・・・・・・速瀬水月、まぁ会えばこうなるだろうと予想していたが・・・・・・案の定こうなった。




 百里の連中が横浜基地に来た当初はまだ良かった。

 滑走路で口元を引きつらせながら輸送機の到着を待っていた自分へ元気良く手を振る橘、他の連中もなんやかんやと文句を言いながらも、新設されたばかりの国連の基地だけあって興味津々といった様子だった。


 ちなみに横浜に何の用事で来たのかを静流に質問したところ、光菱絡みの用件らしく自分たちはその護衛に選ばれたらしい。

 光菱ならば葵に話を聞こうと思って探したのだが、百里から持ち込んだ機材を夕呼さんが指定する格納庫へ搬入するために早々に姿を消してしまった。

 夕呼さんに何処の格納庫なのか聞こうにも、イリーナから百里の連中の案内やお世話を頼まれてしまい、渋々基地内の簡単な説明をしていると・・・・・・偶然にも速瀬達と出会ってしまったのだ。





「新しい基地ってほんと良いわね~・・・・・・出来れば百里基地も建て直して欲しわよ」


「へ~そうなの?横浜に来る前は練馬の基地にいたけど・・・・・・あんまり思わなかったわね~」


「ふぅん・・・・・・速瀬って言ったっけ?練馬ってことは元は帝国軍の訓練校にいたの?」


「あ~そうって言えばそうかな・・・・・・元は此処にあった白陵基地にいたのよ、ほら此処はBETAの進軍でね・・・・・・・・・・・・それでまだ訓練生だった自分は練馬に異動してたわけ」


「なるほどねぇ、悪いこと聞いたかしら?」


「別に~たいしたことじゃないしね・・・・・・橘って言ったわよね?私と同い年くらいに見えるけど・・・・・・何年度の卒業生?」


「99年の前期よ、速瀬は?」


「私は99年の後期ね・・・・・・なんだ、同い年なのね私たち」


「奇遇ね~・・・・・・なんか気が合いそうね私たち」





 橘と水月はそんな感じで当初仲良さ気に話していた。

 二人ともサバサバした女性なので気が合うのだろうと、不安に感じていた自分の考えが杞憂でしかなかったと安堵したのだが・・・・・・甘かった。



 甘すぎた・・・・・・自分は女心ってやつを微妙に履き違えて理解していたようだ。


 人生繰り上げれば30年近く生きてきたのに・・・・・・なんとも情けない話だ。






 事件は・・・・・・此処PXで食事をしようと誰かが提案して来たことから始まった。




 橘のスイッチが入る切欠は、本当に些細なことだった・・・・・・うっかり水の入ったコップを真奈美が倒してしまっただけ、ただそれだけ。



 真奈美の制服に掛かった水を拭くために・・・・・・隣にいた水月が善意で差し出した【ハンカチ】がいけなかったのだ。


 【青いハンカチ】を橘が見た瞬間、明らかにその目の色が変わったのを俺は見逃さなかった・・・・・・



 新潟で軟禁中の自分がコツコツ葵と裁縫していたことを橘は知っている、傍で色々と口出ししていたのだから当然だろう。


 その後、さりげなく水月へ送る橘の言葉で次第に場の雰囲気は険悪なものとなり・・・・・・こうして修羅場が形成されつつある・・・・・・ってか出来てるけど。


(もうイヤ・・・・・・誰かなんとかして・・・・・・)


 まぁ考えてみれば全ては自分が招いた結果なのだろうが・・・・・・そんなの知ったことじゃない、下心なんて一切無しで、普段霞がお世話になっている水月や遙に土産を渡すことはそんなにいけないことか!?




(はい、いけないです・・・・・・フラグになりかねません、今後自重します・・・・・・だから誰か助けて)



 シクシクと涙を流しながら目の前にあるコップを凝視し続ける・・・・・・くそ、全部お前が悪いんだ。



「で・・・・・・速瀬水月さん?結局は隆とどう言う仲なのかしら?」




 ラァウンドォ5ファィッ!!
 カーンと耳障りな音が自分の頭の中で響いた・・・・・・周りに人がいるのに、橘は大人しくする気など一切ないらしい。




「だからあんたもシツコイわね!隆とはただの知り合い・・・・・・まぁ友達になってくれって隆から頼まれたけどね」


「・・・・・・友達から始めましょう?」


 ピクッと橘の眉が上がる。
 明らかに聞き取りおかしいから、何故に其処まで自分にとって都合の悪い解釈をするのだろう?ほんと理解に苦しむ。


「へ~~それで・・・・・・隆にいっつもお土産貰って尚且つ髪まで切って貰って・・・・・・名前で呼び合う仲なのになにもないわけ?」


 誰だそこまで教えた奴?・・・・・・橘、お前も一体何時そんな話聞いた?


「ついでに酒を朝まで飲み交わしてましたね」


 ポツリと・・・・・・同席している宗像が呟く。


 犯人見っけ、以前顔合わせしたことのある宗像美冴少尉がニヤニヤと笑っている。


 この俺をネタに遊ぶとは・・・・・・いい度胸だ、後があったら覚えてろよ。


「酒ねぇ・・・・・・野郎二人とはよく飲むくせに私とは一切呑まなかった隆がねぇ・・・・・・あんたと朝までねぇ」


 ピクピクっと橘の眉が更に上がる。


「ち、ちょっと宗像!!誤解するようなこと言わないでよ!!」


「と・・・・・・涼宮中尉が言っておりました・・・・・・涼宮中尉もその席に同席していたらしいので」


「・・・・・・へぇ・・・・・・可愛い顔して貴女もそうなのね?」


 キランっと橘の瞳が光る・・・・・・どうやら遙まで標的に加わったらしい。


「ご、誤解だよ~~それだったら神宮司軍曹も一緒だったし~」


「ほほう、まだ増えるわけね・・・・・・楽しみだわ、隆が私に手を出さない理由がなんだか分かってきた気がする」


 ゲシッと机の下で足を蹴られた・・・・・・痛い、絶対わざとだ。


「折角いい友達になれそうだったのに残念だわ・・・・・・ええとっても残念・・・・・・うふふふふっふ」


「ちょっと隆、どうにかしなさいよ・・・・・・この人止めてよ」


「無理、不可能、こうなった橘は止められん・・・・・・ってか俺に話振るな、頼むから」


 耳打ちしてくる水月に即答。

 だからさ~今みたいな行為が橘の機嫌を損ねる・・・・・・ほら瞳のハイライトが薄くなってきたよ?どうすんのよコレ?誰が止めんのよ?俺はやだよ?今度こそ刺されそうだもん。


 まぁ、誰がどう見ても橘が水月に喧嘩売ってるようにしか見えないだが・・・・・・いや、むしろそうなのだが。


「社中尉の周囲はその・・・・・・百里でもこうなんですか?」


「あ、あははははは・・・・・・・・・・・・はい、そうです」


 風間が真奈美になにやら質問している・・・・・・真奈美よ、冷や汗流すぐらいなら少しは否定しろよ。


「晶代~~~離れてないで助けて~~~」


 遙が涙目になって近くのテーブルに座る女性へ声を掛けるも。


「あ~~パス、めんどいの私苦手だから」


 あっさり一蹴されてしょぼくれる遙。

 答えた女性は初めて見る顔だった、なんでも水月や遙の同期だと先ほど紹介を受けたが・・・・・・静流などとは違った意味でやる気のなさそうな女性だった。
 簡単に言えば冷たいと言うべきか・・・・・・冷めてると言うべきか・・・・・・

 辻村晶代中尉、茶髪でショートカットの髪に、気だるげな垂れ目を持った女性、二人と同じ教導隊の衛士らしい。


「桐嶋さんと川井さんもどうにかしてくださいよ~~~」


 真奈美が、そんな辻村と同席している同僚の二人へ声を掛けるも・・・・・・


「うまい!!なんで同じ合成食料なのにこんなうまいんや!!社の言うたこともあながち嘘やなかったわけやな!!ハグッハグッハグッ!!」


「いやいや、俺がいるとむしろ邪魔だろうから・・・・・・ゆっくり此処から見物させてもらうよ」


 がむしゃらに合成しょうが焼き定食を口に駆け込む川井と、コーヒーもどきを啜る桐嶋・・・・・・・・・・・・死ねよお前ら。


 ちなみに輸送機の着陸後、滑走路に降りてきた桐嶋をすぐさま拘束し持ち物チェックをしたのは言うまでもない。
 懐に所持していた写真を没収、未然に防げて本当に良かった・・・・・・あんな写真をばら撒かれた日には癒しの地である横浜基地へ帰って来れなくなる。


 ってかもし写真を霞に見られて、白い目を向けられでもしたらお兄ちゃんきっと立ち直れない!!


(良かった・・・・・・霞がここにいなくて)


 唯一それだけが救いだった。
 今日霞は夕呼さんの手伝いがあるらしくて朝から見ていない、いたら橘の餌食になっていたのは間違い無いだろう。


(うぅ~兄ちゃん霞とあやとりでもしてのんびりしたいぞ~)



「隆!!なにコップのふちに残った水で机に絵なんて書いてんのよ!!お茶切れたんだけど!!」


「ちょっと私の隆に命令しないでくれる!?・・・・・・でも喉乾いたから持ってきてッ!」


「・・・・・・はいよ」


 二人の娘に指示されよろよろと腰を上げる。
 なにやら真奈美と風間が同情の視線を此方へ送ってくるが・・・・・・乾いた笑いしか浮かべられない。


「疲れる・・・・・・」


 食堂のカウンターにあるポットからコップにお茶をいれつつ一言・・・・・・心の奥底から呟く。


 元の世界に本当に帰りたくなってきた・・・・・・いや別に元の世界じゃなくてもいい、どこか静かな・・・・・・誰もいない静かな場所にいきたい・・・・・・


(南極とかいいな・・・・・・BETAってそこまでは進出してないよな)


 脳裏に浮かぶのはペンギンと戯れる霞の姿・・・・・・いい、なんかもの凄くいい。


 再び軽い現実逃避なんぞをしていると、ポンと肩を叩かれる。


「どうした隆?随分とお疲れのようだが・・・・・・」


 振り向けば静流の姿が見える・・・・・・その後ろにまりもの姿まである。


「隆さん大丈夫?目の下に隈が出来てるわよ?」


「ん?ああ、本当だな・・・・・・なんだ昨日はそんなにハッスルしたのか?」


「・・・・・・此処で誰と、んなことするんですか」


 心配してくれるまりもと、いつもの調子の静流・・・・・・そんな二人へなんとか苦笑しながら答える。


「ふむ・・・・・・夕呼か?」


「ぶっ!!」


「違うのか?・・・・・・ならまりもか、まりもは良い女だからな・・・・・・ちと男運が無いのがたまに傷だが隆なら大丈夫だろう」


「な、なに言ってるんですか三澤先輩!!」


「そうですよ、なんで俺がまりもさんとそんな仲になってるんですか!!」


 必死に二人で抗議するも、静流はそよ風の如く受け流す。


「冗談だ本気にするな・・・・・・だがその反応を見る限り、まりもも満更でもないようだな?」


「な、なにを!?」


 まりもが頬を赤くして言いよどむ。

 ・・・・・・静流さんそれは無いから、ありえないから・・・・・・まりもさんにフラグは立てて無い・・・・・・はず。


「隆は私から見ても優良物件だぞ?まりもも早く落ち着いたらどうだ?」


「た、隆さんは婚約者がいますって!!それに落ち着くって・・・・・・先輩こそ落ち着いたらどうですか!?」


「ああ・・・・・・そうしたいんだが相手がな・・・・・・隆は私のことに興味などないようだし」


「そ、そうなの隆さん?」


「乗らないでくださいまりもさん・・・・・・静流さんも変なこと吹き込まない」


 ふと、言い合う二人のやり取りを見て疑問を感じる。


「ってか二人とも・・・・・・知り合いだったんですか?」


「ん?ああ、そうだな・・・・・・まりもは学生の頃の私の後輩だ、夕呼とまりものめんどうをよく見てやったものだ」


「めんどうって・・・・・・夕呼も先輩の行動には冷や汗を掻いてましたけど」


 頷く静流にまりもが半目で訴える・・・・・・なんだろう、三人のやり取りが自然と目に浮かぶ。

 いや違う、静流の気まぐれや無理難題に翻弄されて溜まった鬱憤を、まりもで晴らす夕呼の姿だ。


「はぁ・・・・・・隆さんも言ってくれればいいのに、百里での上官が三澤先輩だって・・・・・・先輩とは学生時代もそうでしたけど、大陸にいた頃も部隊は違えど同じ戦場で戦った仲なんですから、隆さんの今の上官だって知ってたら此方から連絡したのに」


「あ~聞いてたらそうしたんだけど・・・・・・知らなかったからな、静流さんも教えてくれればいいのに」


「お前もまりもに指導を受けたとは言ってなかっただろう?」


 確かに・・・・・・となると悪いのは全部俺ですか・・・・・・ええ、そうでしょうね、全ての元凶は全部俺ですよ。


「た、隆さん?どうしたの・・・・・・なんか暗いわよ」


 げんなりと肩を落とした此方にまりもがそう声を掛けてくれる・・・・・・と其処にまたもや見知った顔が現れた。


「まったく速瀬達は何処にいったんだ・・・・・・っと神宮司軍曹、それに社中尉?なんでそんな場所に立って・・・・・・」


 不機嫌を露にしながら現れた伊隅大尉、助かったコレなら少なくとも速瀬を拘束できる。


 そう安堵した瞬間・・・・・・


「な、なんですってぇぇぇぇ!!隆が胸揉んだ相手ってあんたなのねッ!?」


 速瀬の叫び声が耳に響き、急速な脱力感を感じて眩暈を覚える。


「も、もちよ!!戦闘前の緊迫した雰囲気を崩すために・・・・・・こ、こうモニュっと、その後もその・・・・・・色々」


「んなッ!?あの変態グラサンは私の胸を揉んだだけじゃ飽き足らなかったわけね!!」


「は?・・・・・・・・・・・・どういうこと?」


「私も被害者なのよ!!隆が戦術機の訓練してた時に変な言いがかりをつけられて・・・・・・なんでも言うこときけって言われて・・・・・・その突然・・・・・・こうムニュって」


「なんでも・・・・・・いう事をきけ?それで胸を触られた?隆から触ったの?隆から手を出してもらったの?嘘・・・・・・信じられない・・・・・・私の隆が・・・・・・そんな・・・・・・ありえない・・・・・・なに?私じゃ駄目なわけ?私の胸じゃ不満なわけ?・・・・・・あは、あはははははは」


「ち、ちょっと栞さん!?まずいですって!!此処は国連の基地ですよ!!その瞳でここの人までトラウマにさせる気ですか!?」


「・・・・・・真奈美?・・・・・・ああそうか、そう言うわけね・・・・・・速瀬より私のほうが胸があるせいね、こんなペチャパイ女だから幼女趣味の隆は手をだしたわけね」


「「ぺ、ぺチャ!?」」


 真奈美と水月が揃って声を上げる。
 いや橘・・・・・・少なくとも水月はお前と同じぐらいいいモノ持ってるんだが・・・・・・真奈美は非常に残念ではあるが。



 あ、ちなみに訂正しておきます、自分は女性の胸は大きいほうが良いいと思います。

 大は小を兼ねます、持たざるものと持っているものでは意味が全く違います、ついでに生で見るまで女性の胸を信用してはいけません。
 この世界では強化装備なんてものがあるので衛士になった女性の胸のサイズは丸分かりですが、自分が女装した際に装着したブラジャーなるものがやはりこの世界にもあります、女性の胸を型崩れさせないなどの非常に重要な意味を持つ下着なのですが、知っての通り【偽乳】効果も併せ持ちます。


 それで何度泣いたことか・・・・・・そうそう麻美も最初胸が大きかったんですよ、貸したシャツの胸の部分がぶかぶかになるぐらい・・・・・・知ってます?胸が大きい人って自分のサイズに合わせてシャツが伸びるんですよ?他の人が着るとぶかぶかで合わないですよコレが。



 おっと話がズレましたね・・・・・・麻美の話でしたね?まぁ麻美とそういう仲になって良い雰囲気になって服を引っぺがしたわけですよ?・・・・・・そしたらね皆さん、よく聞いてくださいね?とっても大事な部分ですからね?




 見たんですよ・・・・・・見てしまったんですよ・・・・・・まな板の上に小さく乗ったサクランボを・・・・・・ん?誰か来たようだ・・・・・



「隆さん!!ちょっと大丈夫!?瞳孔開いてるわよ!!」


「社中尉!!え、衛生兵!!衛生兵はいないか!?」


「いや二人とも・・・・・・いつもより少し酷いがいつもの隆の様子だぞ?心配するな」


「こうなったら戦術機で勝負よ!!」


「な、なんでそうなるのよ水月~~~」


「相変わらず速瀬中尉は極度のバトルマニアですね・・・・・・」


「はッ、巻き込まれるこっちの身にもなって欲しいわよ」


「辻村中尉・・・・・・苦労なされてるんですね」


「う、うふふふふふ、いいわよ~~~相手になるわよ~~~戦術機なら演習中に何が起きても事故ですむからねぇ」


「今日の栞さんは普段の五割増しで怖いです・・・・・・葵さんがいなくてほんと良かった」


「・・・・・・あの青い髪の姉ちゃん本気で言うてるんか?わい・・・・・・腹一杯なんやけど」


「ふむ、隆行くところに騒動アリか・・・・・・楽しませてくれる男だ・・・・・・これだけで済まないことに気づいてないのが・・・・・・更に面白いな」







「・・・・・・俺・・・・・・そろそろ本当に駄目かもしれない」










 そして時間は今に至る。



「・・・・・・はぁ」


 溜息を付いて遙の隣の席に座る。
 シミュレーター室の一角にある管制室、自分はそこで遙と共に今から始まる演習のCPを勤めなければならない。


 面倒くさい・・・・・・本当に面倒くさい。


「隆さん大丈夫ですか?」


 心配そうに聞いてくる遙、今はそんな言葉がとてもありがたい。


 水月や栞が言い出した戦術機による決着だが、むろん実機で出来るはずもなく(そもそも帝国軍の俺たちの機体は此処に無い)こうしてシミュレーターでの模擬戦となった。

 自分は兎も角、帝国軍のメンツである同僚たちにシミュレーターの使用許可など出るわけもないと思っていたのだが、何処からか嗅ぎ付けた夕呼があっさりと使用許可を出してくれた。

 やる気満々な二人をよそに、巻き込まれた双方の同僚たち・・・・・・犬に噛まれたと思って諦めて貰うしかない、もっともその犬は凶暴極まりなく、しかも狂犬病持ちなのだったりするのだが。


(もう俺はどうなっても知らん・・・・・・)


 暗い瞳でポチポチと目の前のコンソールを操作してシミュレーターの設定を調整する。


 ちなみになんで自分が模擬戦に参加してないかと言うと、うちの部隊に専属CPがいないことと、今から使用するランサーズの機体と連携を組むにも、自分の操る胡蜂では足手まといになりかねないからである。

 真奈美から聞いたのだが、なんでも正式に部隊全員分(俺ぬき)の不知火が配備されることが決まったそうで、自分が留守にした二日間ばかり橘や桐嶋は不知火への機種変更訓練をインパルスの教導の下で行っていたらしい。

 こうなるとますます自分が足手まといになっていく・・・・・・夕呼さんの提案を拒否するんじゃなかったと後悔してしまう。


 大人しくF-22なりEF‐2000なりおねだりすれば良かった・・・・・・


 まぁ今さらだ・・・・・・胡蜂はこの世界で始めて出来た相棒だし慣れ親しんだ仲だ、無下にする気など一切無い。



「・・・・・・んじゃ、始めるぞ」


(ああ胃がキリキリする・・・・・・終わったら医務室に行こう)



 やる気を一切欠いた自分の声音で模擬戦は始まった。








<橘 栞>


(んふふふふふふ・・・・・・ボコボコにしてあげるわ)


『おいランサー6、強襲掃討が前に出てどないするんや』


「もち・・・・・・あの小生意気な速瀬を私が料理するためよ」


 自信たっぷりにそう答え、操縦桿を握る手に力をこめる。

 今操っているのは今まで乗ってきた陽炎じゃない、帝国軍の主力機たる不知火だ。
 どうして国連のシミュレーターに不知火のデータがあるのか最初不審に思ったが今はどうでもいい・・・・・・この第三世代戦術機なら、後方の国連基地で暢気にしている連中に負けるはずが無い。


(最初は使いにくいかと思ったけど・・・・・・慣れたら別物ね)


 実機が百里に届いていないので搭乗経験はないが、シミュレーターを使用してここ数日はインパルスの教導の下で訓練に励んでいる。
 乗りなれた陽炎と比べて、運用思想が異なる不知火の機体特性に戸惑いはしたものの、慣れればソレまでの陽炎とは全く別の機体だと感じることが出来た。

 流石は第三世代機と言うことか・・・・・・主機出力や跳躍ユニットの向上よりも、新素材の採用によって大幅に軽量化されたことや、FCSの情報処理速度が向上されたことで機体を操る時の爽快感の良さは陽炎の比では無い。


 彼を除く全員が不知火に機種を変更したことで部隊の戦力が大幅にアップにしたに違い無い、この模擬戦は自分たちの実力がどれだけ上がったのかを確認するには良い機会だろう。


『さて・・・・・・全機油断するなよ、シミュレーターとはいえ国連の衛士に負けたとなれば・・・・・・自分たちへ向けられる笑いの質が変わるぞ』


 確かに静流の言うとおりだ、帝国軍の衛士が国連の衛士に負けたとあっては・・・・・・いい笑いものになるのは間違い無い

 欧州国連軍や、大東亜連合と共同戦線を張っている国連印度洋方面軍のように前線に展開している地域の国連の兵士ならともかく、極東の最前線たる日本の後方でぬくぬくしている連中に負けるとなれば・・・・・・帝国軍の恥さらしと揶揄されてもおかしくない。


 静粛モードにて機体を慎重に前進させる。


(まったく・・・・・・隆もこんな場所を選ばなくてもいいのに)


 シミュレーターで選択された戦場は市街地、立ち並ぶビル群がレーダーを阻害し相手の位置を特定できない。付け加えて足場の悪さや、崩落するビルの予想をしなければならないなど、気に掛ける点が多すぎる。

 敵機を捕らえるにも、役に立つのは音響索敵と光学情報のみに絞られデータリンクに制限があるシミュレーターでは殆ど目を潰されたようなものだ。


 だが状況は向こうも同じ、それに・・・・・・目が見えない戦闘は誰かさんのお蔭で慣れている。


 たがかレーダーを潰されただけだ、機体の火気管制まで奪われたわけじゃない・・・・・・


(そ~言えば・・・・・・第三世代機の制御奪うのはかなり大変だって言ってたわね)


 彼が以前漏らしていた言葉を思い出した瞬間、戦術マップに敵機を示す光点が映る。


 余程腕に自身があるのかそれとも囮のつもりか、跳躍ユニットを吹かしながら噴射滑走する相手の不知火の姿を確認してほくそ笑む。
 帝国軍の主力戦術機を国連の衛士が駆る・・・・・・あまり気分が良い光景では無い、きっと川井あたりも相手の姿を見て憤慨していることだろう。

 なんにせよ目の前に現れたのはきっと囮だろう・・・・・・センサーで此方の位置を炙り出すか、手を出した瞬間後方に待機する味方機がすぐさま援護に入り、此方の位置を把握して各個撃破なり面制圧で頭を抑える段取りなのだろう・・・・・・今は様子を見て静流の指示を待つのが得策なのだが・・・・・・


 IFFにて敵機の情報が目に入ってくる。


(二番機!?あれを速瀬が操ってるわけね!!)


 シミュレーター開始前に簡単に紹介しあったので国連側のコールサインは分かっている。
 二番機は・・・・・・あの小生意気な女、速瀬水月が乗っているはずだ。


「・・・・・・ふ、ふふふふふ」


 口元がにやけるを自覚する。

 鴨がネギ背負ってやってきたとは正にこのことか、自分が一番潰したい相手が向こうからやってきたのだ、喜ばずしてどうする?


 いっつもいっつもいっつも隆に酷い扱いを受けて溜まった鬱憤を・・・・・・あの女で晴らしてくれる。


(隆が胸を揉んでいいのは私だけ・・・・・・揉ませるのも私だけで十分よ、終わったら嫌でも揉んでもらうわよ)


 自分が危険な思考に陥ってる自覚など一切あるわけも無く、静流へ指示を請うべく通信を繋げる・・・・・・むろん自分が彼女を料理する権利を得るためだ。


「ランサー6よりランサー1へ・・・・・・あの鴨の料理は私に任せてもらいたいんですけど」


『そう言うと思った・・・・・・好きにやれ』


 呆れた口調だったが静流の返答に狂喜する、隊長のお墨付きが出たのだ・・・・・・好きにやらせて貰うとしよう。


「ランサー6よりランサー7へ、相手のエレメントなり援護が来たら宜しくね」


『・・・・・・はい、気の済むまでやっちゃってください』


 疲れた口調で返答する真奈美、どうしたのだろうか?慣れない場所での演習だから疲れてしまってるのだろうか・・・・・・残念だ、真奈美もこの狩りを楽しめばいいのに。


 唇をペロリと舌でなぞる・・・・・・光点が突撃砲の有効射程距離に近づいてくる、トリガーに添えた指に力が篭る。


 残り5・・・・・・4・・・・・・3・・・・・・2・・・・・・1・・・・・・今!!


「ランサー6!!バンデットインレンジ!!フォックス3!!」


 コールと共にトリガーを押し込みながらフットペダルを踏み込む。


 跳躍ユニットが火を噴き、機体を一気に上昇させながら36㎜砲弾を敵機の進路上にばら撒く。

 先手必勝、敵機の予想進路上に放たれた砲弾の雨は、易々と青に塗られた不知火を仕留める・・・・・・はずだった。


(うそッ!?)


 速瀬の乗る二番機が此方の姿を確認したと同時に跳躍ユニットを反転させて急減速を掛ける、そのまま失速域機動に入ったのにも関わらず機体を鋭角的に動かし砲撃を尽く避けて見せる。

 その卓越した機動操作に目を奪われた瞬間、お返しとばかりに此方へ向けて砲弾が放たれる。


「くッ!!」


 慌てて機体をビルの陰に隠して砲弾をやり過ごす。

 二番機は完全に此方をマークしたようだ、戦術マップに此方へ急速に近づいてくる光点が確認出来る。


(突撃前衛ってわけね、あの女の性格を考えればお似合いだけど・・・・・・)


 ビルの陰から砲撃、だが放たれた砲弾を二番機はあっさりと避けながら此方との距離を一気に詰めてくる。


「認めたくないけど、いい腕してるわね!!ほんとッ!!」


 叫びながら機体をビルの陰から飛び出させ、両手に保持させた突撃砲から36㎜砲弾を向かってくる敵機へ向けて撃ちまくる。

 向こうの僚機にも此方の位置はデータリンクを通して丸分かりのはずだ、出来れば燻りだして早急に味方の支援を仰ぎたい・・・・・・なぜなら。


(速いってッ!!)


 内心で悲鳴を上げつつ、砲弾を掻い潜りながら接敵した不知火の放つ長刀の一撃をなんとか避ける。


 眼前を通り過ぎていった二番機を追うように突撃砲の銃口を向けるが、跳躍ユニットを強引に吹かして速瀬の駆る不知火は射線上から姿を消す。

 その姿をロストした数瞬後にはヘッドセットからロックオンアラートが鳴り響く、機体を倒すように前に飛び出させて噴射滑走、後方を確認すれば上空に舞い上がった敵機から先ほどまで自機があった場所へ砲弾の雨が降り注がれている。


 予想以上の動きだ、国連の衛士が此処までやるとは正直思っていなかった・・・・・・これではまるで・・・・・・


「インパルスと模擬戦やってるって思わないと駄目ね!!」


 気持ちを切り替えるべく距離を取る。

 速瀬の腕前は間違いなく一級品だ、百里でインパルスに揉まれた経験から自分の腕前に自信を持っていたのだが・・・・・・斯衛といい、国連といい、上には上がいるものだ。


「だからって隆の前で見っともない姿なんて見せるわけにはいかないのよ!!」


 自分にだって意地はある、追いかけている彼に自分が使えない人間だと思われるのは真っ平ごめんだ。


 背部兵装担架の突撃砲も展開し、計4門の銃口を二番機へ向けて制射を開始するが、サイドステップを踏みながら隣接するビルを利用し二番機は銃弾を避け続ける、しかもその動きを続けながら此方との距離を再度詰めてくる。


(砲撃が怖くないっての!!あの女も隆なみの変態なわけッ!?)


 当たらない砲撃に食み噛みしていると、戦術マップに敵を示す新たな光点が表示される。


「!!」


 確認した瞬間目の前にいた二番機があっさりと機体を翻して後退する、その意味に気づくと同時に鳴り響くロックオンアラート、現れた相手の僚機が此方を狙撃しようとしているのが分かるが、機体が砲撃コマンドを受け付けているため咄嗟の操作が効かない。

 こんなくだらない手で落とされるのかと絶望した瞬間、射線上に真奈美の駆る不知火が横手より現れ、殺到した砲弾を手にした92式多目的追加装甲で弾きながら此方へ向けて下がってくる。


 直撃弾なら92式多目的追加装甲と言えどそう何発も持つわけがないのだが、真奈美は盾に上手く角度を付けることで砲弾を弾く。
 ・・・・・・相変わらず盾の使い方が上手いと言うべきか、砲弾に自分から飛び込む思い切りの良さに呆れるべきか、判断に悩むところだがどうやら真奈美のお蔭で自分は助かったようだ。


『栞さん下がってください!!・・・・・・あの二番機、私が相手をします!!』


 ヘッドセットから聞こえる気迫溢れる少女の声。

 悔しいが・・・・・・自分では速瀬の相手にはなりそうに無い、出来れば川井が一番だが、最近伸びに伸びている真奈美ならば相手が出来るかもしれない。


(はぁ・・・・・・真奈美にいいとことられちゃった)


 内心で嘆息しながらやる気満々の可愛らしい妹分へ許可を出す。


「・・・・・・任せたわ真奈美、私は向こうの僚機の相手をするから・・・・・・あの女の鼻っ面を叩き折るのよ」


『了解!!』


 元気一杯答えて、敵機へ向けて突貫していく真奈美の不知火に苦笑するしかなかった。









<速瀬 水月>


(この不知火、思ったよりも動きが良い!!)


 接敵した向こうの6番機を追い詰めたのにも関わらず、援護に現れた7番機のお蔭で折角のチャンスを逃してしまった。

 ならばと思い、目の前に現れた7番機の不知火を速攻で墜とすべく機体を向けるが・・・・・・手ごわい。


「ッ!」


 36㎜砲弾を放つも7番機が掲げる追加装甲で全て弾かれる。

 そのまま距離を詰められ無造作に突き出された長刀をバックステップで辛くも避けるが、距離を開けた瞬間、背部兵装担架から脇の下を潜り抜けて突撃砲が展開され、此方の退路を潰すべく砲弾を撃ち始める。


 慌てて機体を噴射跳躍させて上空へ逃げるも、7番機はしつこく此方を追ってくる。


「確かあのちびっ子よね!!帝国軍の衛士もいい腕してるわ!!」


 操作している少女の姿を思い浮かべて苦笑する。

 見た感じ訓練生あがりの少女だと思ったのだが、なにやらしっかり者の気配を感じることができた。
 現に、彼が一番頼りにしていたような気がする。


(まったく、相変わらずロリコンなんだからッ!!)


 操縦桿を倒し機体を噴射降下させた直後、フットペダルをすかさず踏み込み強引に噴射滑走へと移る。
 ・・・・・・後方を確認すれば必死に食いついてくる不知火が一機。


 射撃精度や挌闘戦での思い切りの良さに目が光るものもあるが、あの少女はそんなものよりも高機動戦闘時の順応性や即応性が高過ぎる。
 振り切ったと思ってもすぐさま背後へ喰らいついてくる当たり、生半可な訓練を重ねてきたわけじゃないだろう。


 正直、腕を磨けばA-01でやっていけるのではないかと錯覚してしまう。 


 機体を旋回させ正面から7番機と向かい合う。
 鬼ごっこはおしまいだ、才能を伸ばす努力をしているようだが・・・・・・まだ自分には届かない!!
  
 左手に保持させた突撃砲が火を噴く、殺到する36㎜砲弾を先ほどと変わらず追加装甲で弾くが、合間に織り込んだ120㎜砲弾が掲げた装甲に大きな歪みを作る。

 曲面だったからこそ弾丸を弾けた装甲が、角度が変わったことであっさりとひしゃげて行く、シミュレーターゆえ貫通時のダメージ判定は無いが、このまま行けば装甲の耐久限界を超えて強制的にパージされるだろう。


 数瞬後には無防備になった7番機に劣化ウラン弾が殺到するのを想像した瞬間、思い切りの良すぎる少女は歪んだ追加装甲を此方に向けて投擲してくる。


 投げつけられた装甲で一瞬視界が塞がれる。


(!?どっかの誰かさん見たいな手を!!)


 投げつけられた追加装甲を長刀を振るって叩き落とし、盾の影にいるであろう敵機へ突撃砲の銃口を向け照準せずに発砲する。


 だが銃弾は虚しく空を切り、さっきまで其処にいたはずの機体が何故か存在しない。


「ッ!!」


 殆ど勘で機体を前方へ進ませ、反射的に長刀を振り上げるコマンドを入力する。


 以前彼に視界を阻まれた瞬間、上方から奇襲を受けた経験がある、その経験からか・・・・・・帝国軍の七番機も此方の上方に飛んだのではないかと予測したのだ。


 振り上げた長刀が何かに激突する衝撃を感じた直後、背部から凄まじい衝撃を受けて機体が前に押し出される。


『A-2,背部兵装担架損傷、頭部小破』


 遙からの損傷報告に奥歯を噛み締める。

 機体を振り返させれば右腕を損傷させた不知火の姿が視界に入る・・・・・・そしてその姿に疑問が湧き上がる。


「・・・・・・CPへ、一体今何が起きたの?」


 あの不知火が此方の上を取ったのは分かる・・・・・・だが脚部では無く、何故腕を損傷してるのかが分からない。


『えっと・・・・・・なんて言えばいいんだろ・・・・・・水月、いま後ろから蹴られたの分かる?』


「はぁ?」


 言いよどみながら聞かされた遙の言葉に素っ頓狂な声を上げてしまう。


 前から蹴られたのなら分かるが・・・・・・後ろから?


『前転・・・・・・って言えばいいのかな?こう空中でクルッて回転して、あ、その時に水月が振り上げた長刀が当たったんだよ!でね、長刀が当たったからかな?そのまま凄い勢いで回転して水月の機体を後ろから蹴ったの』


「・・・・・・そ、そう」


 遙の説明に一応の納得を示しながら冷や汗を描く。


(凄まじい機動操作技術よね、一体どんな訓練してるのやら・・・・・・隆がいるせいでアイツの変態が伝染ったのかもね)


 なんとなくソレが一番有り得そうな気がする。


「でも・・・・・・久しぶりに楽しめそうね」


 目の前にいる不知火がとんでもない実力の片鱗を持っていることが分かった・・・・・・これなら楽しめそうだ。

 追加装甲を保持した左腕部が損傷したらしい、相手の機体は装甲を地面に落とし右腕部に持った長刀を此方へ向けてくる。


 思い切りのいい良い衛士だと内心で感嘆し、此方も迎え撃つべく残った長刀を構えるが・・・・・・


「ッ!!」


 ロックオンアラートが響いた瞬間、36㎜砲弾が殺到する。

 慌てて機体を後退させてやり過ごすと、目の前に先ほど追い詰めた帝国軍の6番機が現れる。


『よし来た!!真奈美あとは下がってなさい!!私が仕留めてやるわ!!』


「んなッ!?」


 オープン回線で聞こえてくるそんな声を耳にして、流石に開いて口が塞がらない。


「ち、ちょっとせこくない!?こっちが損傷したら出てくるわけ!?」


 慌てて戦術マップでエレメントたる辻村の不知火を探すが、必死になって此方へ接近を試みてるのが分かる・・・・・・どうやら随分と遠くまで引っ張られたらしい、この瞬間を狙って辻村を引っ掻き回したとすると・・・・・・あの橘って女は相当な策士だ。


『うっさいわね!!女ってのはね、結果のためなら過程なんざどうでもいいのよ!!』


「な、なんて女なの・・・・・・」


『はッ!!・・・・・・さっき冷や汗かいたお礼、たっぷりと返してやるわ!!』


『栞さん・・・・・・流石に卑怯ですよ』


『真奈美・・・・・・いいこと教えてあげるわ、敵になりそうな女がいたらね速攻で蹴落とすのよ!!じゃないと良い男は捕まえられないわ!!』


「だから私は隆にそんな感情無いってての!!」


『・・・・・・確か、下着を見せた仲だとか・・・・・・』


 オープン回線で突如乱入してくる宗像


「こら宗像!!また余計なことを!!橘!!それは誤解だから!!見せたんじゃなくて・・・・・・こう、見られたんだから!!」


 自分でもなにやら危険な説明をしているような気がする。


 案の定、何故か網膜投影に橘のバストアップ映像が映り、その姿に息を呑む。


 例えるなら・・・・・・プッツンした時の遙と同じだ。






 暗いオーラを漂わせ、瞳にハイライトを無くした橘が静かに告げてくる・・・・・・





『・・・・・・Die』












<三澤 静流>


「隆・・・・・・ほうっておいていいのか?」


『付き合いきれません・・・・・・向こうでも水月を好きにやらせる気なんじゃないですかね?辻村中尉以外、誰も援護に行かないところを見るに・・・・・・』


「なるほど、あの伊隅とか言う隊長さんは部下の性格をきっちり把握しているようだな」


 言いながらその伊隅大尉とやらの能力に感嘆する。

 接敵した二機以外の敵影の姿を先ほどから見つけることが出来ない。
 余程慎重深いのか・・・・・・それとも策を巡らせているのか・・・・・・戦場で慎重すぎるのは利点だ、考えることを止めた衛士は生き残る可能性は限りなくゼロに近い。


 罵詈雑言をオープン回線で応酬しながら挌闘戦を演じる二人の娘などいい例だろう。


(ふむ・・・・・・策といってもこの戦場では限られた策しか使えないだろう、可能性的に3パターンといったところか)


『所で社・・・・・・お前CPはできるんかいな?』

 
 思考を巡らせていると、川井が嘆息しながら彼に問いただすのが聞こえてくる。
 見れば、その最もな質問に桐嶋が頷く姿も見える。


『いや・・・・・・経験ないんで期待するなよ、精々損傷判定やら戦域情報を読み上げる程度だな』


『なんや使えん男やな・・・・・・』


『・・・・・・そんな言い訳が通じるのと思っているのか?』


『なっ?どう言う意味だよ!?』


『騒動を起こすだけ起こして自分は高みの見物・・・・・・いい身分やなほんま』


『せめてCPぐらいしっかりやってほしいが・・・・・・特殊性癖を幾つも持つグラサンには無理か』


 言いたい放題の二人の部下の言葉に彼の口元が引きつるのを私は見逃さなかった。


『・・・・・・この通信って向こうに聞こえてませんよね?』


「それは・・・・・・訓練とは言え対人戦闘だからな、回線をオープンにしなければ聞こえないだろう」


 そう答えてやると彼はしきりに頷いて顔を伏せ・・・・・・此方がその態度を怪訝な気持ちで見ていると、ゆっくりと顔を上げニヤリと笑う。


『ミッションを説明します、敵は国連軍仕様の不知火が五機・・・・・・既に友軍の二機が敵の二機と交戦状態にあります。友軍の一機が損傷を抱えているため満足な戦闘が出来ません、皆さんに依頼するのは、損傷した友軍機の救出と敵戦力の無力化です。友軍の救出が第一目標ですので、対象の損傷が激しくなるか撃墜された場合はその分報酬から減額されます。敵は国連軍の教導部隊であり何れも精鋭揃いです・・・・・・非常に厳しい任務ですが.・・・・・・大丈夫、勝てるわあなた達なら』


 そんな台詞を吐く姿に、よくもまぁペラペラと口が回るものだと感心してしまう。


『た、隆美なのか!?』


『桐嶋・・・・・・突っ込むところ其処かいな?・・・・・・報酬ってなんやねん』


「勝てば隆・・・・・・隆美でもいいが、何かご褒美をくれるのか?」


 なにやらいきり立つ桐嶋を無視して川井と二人で質問すると、彼は若干困った表情を浮かべた後、先ほどとは一転してやたらと高圧的な口調で言ってくる。


『報酬を受け取りたければ結果を見せてみろ・・・・・・苦戦すら論外だ、分かっているな?』


『なんや・・・・・・またおかしくなったんかいな?』


『新たな一面か・・・・・・相変わらず、此方を楽しませてくれる奴だ』


「・・・・・・やれやれ、ではその報酬とやらを受け取るために結果を見せるとするか」


 言いながら戦術マップを確認、橘が国連の二番機の相手を未だ続けている。
 相手の二番機、随分と凄腕のようだったが真奈美に受けた損傷が効いているのか、腕の劣る橘に押されている、橘はそのまま抑えるなりあわよくば撃墜してくれればいいので、支援の必要は無いだろう。


(となると・・・・・・真奈美か)


 真奈美もどうやら左腕部を損傷したらしいが、敵の三番機の攻撃をなんとか捌いている。


「真奈美の動き・・・・・・隆はどう思う?」


『・・・・・・【白い奴】を意識した動きですね・・・・・・あれは』


 彼の返答に黙って頷き同意の意を示す。


 真奈美が新潟から帰還して以来、以前よりも精力的に訓練に励む彼女の姿を何度も見ることができた。
 普段から人一倍訓練に熱心な真奈美だが、その鬼気迫るまでに訓練に励む理由が、新潟で遭遇した【白い奴】に対抗できなかった自分に嘆いていることから来ているのは明白だった。

 インパルスから高機動戦闘のイロハを指導され、与えられた第三世代機の特徴を活かすべく必死に慣熟訓練を重ね、自身の実力の向上に余念が無い。

 一見すれば非常に危なげな姿なのだが、目まぐるしく向上していく真奈美の姿を見れば、それを止めることなど出来ない。


 恐らく・・・・・・もう少しすれば真奈美は壁にぶつかるだろう、そうすれば一度自分の足元を確認する余裕が生れるに違い無い、その時にでも先人として何かアドバイスをしながら窘めればいいだろう。



『っても【白い奴】にはまだまだ及ばないでしょうね・・・・・・むしろアレは既存の戦術機とは制御系からして違うでしょうから、挌闘戦で動きに追従するのは不可能なんじゃないですかねぇ』


「確かにな、それは一理あるな・・・・・・どう見ても【白い奴】はスペシャルだろうな」



『ええ・・・・・・ん?・・・・・・なんですかまりもさん?』

 
 何やら彼が声を上げるが、模擬戦とは関係無い管制室内での出来事のようだ。

 確かにCPなどを経験したこともないのだろう、余計な情報を兵士に伝えるなど戦場ではあってはならないミスをする彼に若干呆れてしまう。


『はぁ・・・・・・訓練兵にこの模擬戦の様子を見せたい・・・・・・いいんじゃないですか?勉強にならない戦闘が一部で繰広げられていますが・・・・・・他はマシでしょうから』


「さて・・・・・・ランサー1よりランサー7へ、頭上防御後、対ショック体勢」


 彼が余計な事を話していたところで模擬戦は進んでいく、そろそろ仕掛ける頃合かと判断し、前線で格闘戦を続ける真奈美にそう指示を出すと、露骨に嫌そうな表情を浮かべる少女の顔が網膜投影に映る。


『今回・・・・・・追加装甲持ってないんですが』


「安心しろ真奈美、撃つのも隆の乗る胡蜂じゃない・・・・・・桐嶋の不知火だ」


『そういうことだ、生憎社の胡蜂ほど照準制度がいいわけじゃないし、俺も不知火に慣れてない・・・・・・覚悟しろよ真奈美?』


『行き当たりばっかたり過ぎへんか?それ・・・・・・』


『ううぅ・・・・・・お手柔らかにお願いしま~す』


「ふッ・・・・・・では、ランサー3の多目的自律誘導弾による面制圧後、燻りだした敵の二番機へランサー2が攻撃・・・・・・一撃で仕留めろよ川井?」


『はぁ・・・・・・了解や』


「その後は臨機応変・・・・・・と行きたいところだが、損傷するであろう真奈美はそのまま囮になって、残った敵機をおびき出してくれ、桐嶋はその援護を頼む・・・・・・では始めようか?」


『了解、ランサー3!!フォックス1!!』


 すぐさま桐嶋の乗る不知火から多目的自律誘導弾が射出される、真奈美と国連の二番機が戦闘を繰広げる地点に次々と小型のミサイルが殺到していく。

 二機の不知火が爆発の衝撃に翻弄され、周囲の廃ビルが衝撃波で崩れ落ちることで噴煙が舞い上がり、光学すら役に立たない地域が一つ出来上がる。 



『気がすすまんなぁ・・・・・・戦闘機動なんてして、吐いたらどないするんや』



『・・・・・・はやくお前も行け』



 やたらと冷たい彼の声に促され、川井の駆る不知火が渋々といった様子で機体を進ませていった。







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