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*Edit   

「Muv-Luv 小説」
第二部

ソ連編 5話

   ソ連編  かれらの交錯する思い


 2001年8月9日
 アヴァチャ湾洋上
 おおすみ型輸送艦・【さきしま】艦内


「―――狭い」

 ポツリと、彼はここ数日で幾度となく漏らした言葉を呟いた。

「―――我慢して」

 だが、その言葉に答える女性の声には気遣いの欠片すら含まれていない。
 予想通りの返答に嘆息し、彼・・・・・・鳴海孝之は渋々と言った様子で、自身の体格には少々狭苦しい管制ユニットの中に体を収めた。
 LPD、ドッグ型揚陸艦であるおおすみ型の格納庫は、一個中隊の戦術機が収容できるほどに広い。
 しかし、設置された殆どの整備パレットは空で、本来であれば騒がしいはずの格納庫には先程から二人の話し声しか響いておらず、内部は閑散とした空気を醸し出していた。

「調整が済めば内部のレイアウトを少しは変えるから・・・・・・・ リンク、繋がった?」

 動かないようにと、何本ものワイヤーで格納甲板に固定された管制ユニット。
 本来、戦術機の胸部に収まるべきソレの傍らに立ち、手元のコンソールを操作しながら彼女・・・・・・ミリースラ・ベールレイは孝之に声を掛けた。

「ちょっと待ってくれ・・・・・・ きた ・・・・・・っても真っ白で何も見えない」

「当たり前でしょ? 光学情報はいいから、艦とのリンクはどう?」

 言ってミースは管制ユニットに接続された大小様々なケーブルが伸びる先、真っ白なシートで覆われた整備パレットへ視線を向ける。
 効率を優先するのであれば、管制ユニットを搭載した状態で調整を行うのが一番なのだが、今現在 【白百合】 は艤装を交換中のために万が一を考えて管制ユニットを搭載していない。
 最も汎用性の高い兵器と言われる戦術機だが、生憎と 【白百合】 はその範例に当て嵌らない。 出撃する戦場、任務の目的に応じて念入りな調整と整備が必要になる。 
 性能は一級かもしれないが所詮は実験機、過酷な戦場に耐えられるほどの耐久性は有していない・・・・・・ 元々、そんな状況を想定して製造された機体ではないので、それは当たり前のことなのだが。

「―――確認した。 処理も悪くない、問題は無さそうだな」

「良かった、OSの二重設置でメモリにかなりの負荷が掛かると思ったけど・・・・・・ 流石は香月博士ね」

「ああ、ソ連に来る前に渡されたアレか? 元々は香月博士が開発したんじゃなくて、横浜の香月副司令由来の代物なんだろ?」

 ゴソゴソと狭苦しい管制ユニットの中で呟く孝之、先程から自分にとってベストなポジションを探しているのだが、どうにもしっくりこないのだ。
 【白百合】の管制ユニットは形状からして、通常の強化外骨格が組み込まれているような管制ユニットとは全く違う。
 特に差異があるのが内部構造で、比較的ゆとりをもって製造された通常の代物と違い、【白百合】 の管制ユニットは成人男性が収まるには少々狭い。
 その原因になっているのが、内部スペースの6割を占めている表面にAl-zardと書かれた円形の筐体であり、完全に密閉されたソレは外部からは中に何が入っているかを確認することは出来無かった。
 孝之は、それが 【白百合】 を駆動させるのに必要不可欠な機材であり、あの動物的な機動を可能とする演算システムだと教えられていた。
 それをもっとも効率的に操作できるのがマユと言う少女だけであり、この機体は彼女を守るためだけに製造されているとも。
 そう教えられた情報以外、孝之は深く詮索するようなマネはしなかった。 疑問こそ残るが、マユと言少女の特異性と、元々彼が所属していたA-01にて教えられた Need to know との言葉に従い、彼は与えられた任務に没頭している。

「―――そうね、最初は実装するのを迷ったけど・・・・・・ 部長が言うとおり杞憂でしかなかった見たいね」

「天才姉妹が作った代物だからな、部長も信用してるんだろうけど・・・・・・ そ~いやその部長は何処いったんだ? 暫く姿を見てない・・・・・・」

「―――鳴海君、僕を呼んだかな~?」

 孝之がそう言いかけた直後、呑気な声と共にひょっこりと格納甲板に姿を現す中肉中背の中年男。
 上司である石井正の姿を視界に収めた二人は、相変わらずなその姿に苦笑を漏らした。

「部長、ご要件はお済みになったのですか?」

「いやぁ~大変だったよ~ 彼らの秘密主義は相変わらずだけど、自分たちが特権階級だって信じ込んでいるのがねぇ・・・・・・ そのくせちょっと上役から揺さぶられるとあっさり折れるあたりプライドってものが・・・・・・・・・ ああ、すまないねミース君。 君と同じ祖国の人たちを悪く言って」

「―――いえ、私にとって故郷と呼べるような国はありませんので、どうぞ気になさらないでください」

 淡々とした口調で答えるミースの声を聞いて、孝之は狭苦しい管制ユニットの中で小さく肩を竦める。
 第参開発局で禁句とされている話題の一つに、ミースの過去は詮索しないことがある。
 その話題を事もなげに口にする部長、それは彼の人となりが可能にしているのだろう・・・・・・ 少なくとも孝之はミースの過去を口にしたり、【麻美の前でその身体的特徴】 を口にする度胸は一切無い。

「―――部長、本当にコイツを出すんですが? ・・・・・・アラスカにも持っていかなったのに、なんでソ連なんかで使用する気に・・・・・・」

「まぁまぁ鳴海君、狭いからって文句を言わないの。 白百合もテストをしなければならない項目が幾つもあるからねぇ、それに何時までもマユにばかりに負担を強いるのは君も本意ではないだろう?」

「そりゃ・・・・・・そうですけど。 今になって突然じゃないですか? 一時は白百合の使用禁止まで出てたのに・・・・・・今回はアレまで持ち出すなんて」

 開け放たれた管制ユニットのハッチから見える、格納庫の隅に設置された黒い三つのコンテナを一瞥しながら孝之がそう呟くと、石井は少しだけ困ったかのように苦笑を浮かべて口を開いた。

「政治ってのには色々あるもんだ、悪鬼幽鬼が蔓延る世界だからねぇ。 まぁ、内々のお披露目がお偉いさん達の希望でもあるわけだし、悪いけどもう暫くは不自由な思いをしてもらうよ」

「それは構いませんが・・・・・・ 次に試験部隊が参加する予定の作戦には、正直間に合いそうにありません。 管制ユニットの調整もですが、艤装の交換が予定よりも進んでおりませんので・・・・・・」

「あ~それは大丈夫、次の作戦で出すわけじゃないから。 最初の華は第壱開発局に務めてもらうさ・・・・・・ アレと一緒に登場したら、嫌でも目立つからねぇ」

 あっさりとそう言い放つ石井の言葉に二人は首を傾げたが、作業の手を止めるわけにもいかないので管制ユニットの調整作業を続けた。
 特に仕事をするわけでもないのだが、石井がいると何故か作業の効率が良くなる。
 そんないるだけで周囲の調子を良くする雰囲気を持った石井が傍にいたせいか、本日予定していた作業は滞りなく終わり、漸く孝之は狭苦しい管制ユニットから這い出すことが出来た。
 
(―――考えてみると、俺じゃなくて七瀬が乗ればよかったんじゃないのか? マユと背格好が一番近いのはアイツなんだから)

 凝り固まった体をほぐしていると、そんな明暗が彼の脳裏に過ぎる。
 とはいえ、斯衛軍の一員であり武家の息女でもある七瀬凛は未だに実戦を経験していない。 慣れ親しんだ機体なら兎も角、初の実戦でシミュレーターですら搭乗したことのない機体に載せるのは少々酷な話だろう。
 作業が終了したので、石井とミースは連れ立ってその場から離れていく。 その様子から見て、どうやら石井が此処に現れた理由は彼女に用があったのだろう。

「―――それでミース君、向こうはどうだったかな?」

「―――はい。 確認したところ、確かに機動していました。 ―――しかも驚くほど正常に」

「―――正常、ね。 それはユニットとしてかな? それとも・・・・・・」

「―――残念ながら、ユニットとして正常に機能していました。 光菱の人間は歓喜しているようでしたが・・・・・・」

「―――ふむ、喜ばしいことだね。 これで彼らへの義理の半分は返せたわけだ」

「―――部長は・・・・・・それで宜しいんですか?」

「―――ダメもとで作ったコピーが、必要とされる性能はちゃんと発揮したんだから十分。 うん、本当に十分だよ」

(―――何をこそこそやってるんだか)

 何事かを呟きながら格納庫から出て行く二人の後ろ姿に嘆息を漏らし、孝之は自分も格納庫から出るべく足を踏み出す。

「っと、そうそう・・・・・・ 遙に手紙の返事を書かないとな・・・・・・」

 先日届いた手紙の内容に新しく配属される予定の新任が楽しみだと書いてあったので、新任が水月の影響を受けないように注意しろと遙には忠告しておいたほうがいいだろう。
 手紙などではなく、通信機が使えれば直接ソレを伝える事もできるのだが、二人が所属しているA-01は秘匿部隊故に外部との連絡手段は制限されている。 無理をすれば話をすることも出来るだろうが、二人の迷惑になりかねないので自粛すべきだろう。

「・・・・・・ん?」

 二人に送る手紙の内容を考えながら格納庫を後にしようとした孝之だったが、誰もいないはずの格納庫に人影を見つけて足を止めた、
 帝国海軍が採用している真っ白な士官服を見にまとい、ややクセのある赤茶けた髪を長く伸ばした女性が一人、機体が固定された数少ない整備パレットの前に立っていた。

「そこの、こんなところで何を・・・・・・」

 人払いが済んでいるはずの格納庫に、自分たちとは違う所属の人間がいる。
 孝之はそのことに疑問を感じながらも、声を掛けて早く出ていくように促そうとした。
 シートやコンテナで隠されているとは言え、此処には部外者にとって見ると不幸になるものが多い。
 見かけたのが自分で良かったと思いながら女性へ近づいていき、その横顔を確認した瞬間、突然足が鉛を括りつけられたかのように重くなった。

(―――あれ?)

 思考が気づく前に、体に染み付いた何かがいち早く察知したらしい。
 足が重い、額に冷や汗が流れる、言い様のない不安が胸中に湧き上がる。
 それは決して間違いではない。 孝之の目の前で不知火壱型丙を見上げる女性は、彼が恐れる上司ですら畏怖する女傑なのだから。

「―――貴方達が、この機体を使っているんですね」

 凛として、それでいて何処か寂しげな声。 それを発した主が目の前の女性であると知覚した孝之は、額の汗を袖で拭い何度も頷いて肯定の意を伝えた。
 女性はそんな孝之を一瞥し、 「そう」 、とだけ呟いて再び壱型丙を見上げる。
 広い格納庫において、他と違いカバーもされずに固定されている二機の不知火壱型丙。 その機体に何か思い入れでもあるのか、女性は何処か遠い瞳で見上げ続けている。
 そんな女性の姿を見て、孝之は自分が感じているプレッシャーの正体に漸く気づいた。
 女性の佇まいが、彼のよく知る人物に非常によく似ていたからだ。

 ―――体型は似てない。 少なくとも体型だけは似ていない。

「・・・・・・」

 パクパクと、鯉のように口を開け閉めするだけで何と声を掛けていいか分からなかった孝之だが、不意に女性は壱型丙から視線を外し、その切れ長の瞳を孝之へ向けて口を開いた。

「―――帝国海軍所属、金谷麻香大尉よ。 旧姓は奈華宮・・・・・・と言えば分かるかしら?」

「は、はッ!! 帝国軍技術廠第参開発局所属、鳴海孝之中尉であります!! 大尉殿の妹御であらされる奈華宮大尉には常日頃から良き上官としてお世話になっております!! 金谷大尉の事は奈華宮大尉から少しばかり聞き及んでおりました!!」

 自分に出来る最高の敬意を払いながら、孝之は麻香へ敬礼を送った。
 それで気を良くするような彼女ではないのだが、一見すると穏やかな微笑を浮かべて孝之の言葉に頷く。

「―――アレは私のことをなんて?」

 そう首を傾げて問う麻香だが、その目は全く笑って無かったりする。

「じ、自分には過ぎた姉だと!! もし出会った時は最大限の敬意を持って接するべしと仰っておりました」

 嘘だ。 そもそも麻美は自分の家のことは殆ど話さない。
 凛の話では奈華宮家は武家の中でも微妙な立場にあるらしく、それが原因で余り口に出すことがないそうだ。
 目の前の女性が麻美の姉だと気付いたのは、石井が麻美のことをからかった時、金谷・・・・・・と言う家に、武家の身分を捨ててまで嫁いだ勇気ある女性だと言っていたのを覚えていたからだ。

「―――そう。 見え透いた嘘は身を滅ぼしますよ、鳴海中尉」

(気づかれたッ!!)

 予想よりもあっさりと見抜かれた事実に孝之は戦慄するも、麻香は特に気にした風も無く、再び壱型丙を見上げた。
 背中に汗を掻きながら孝之もつられるように壱型丙を見上げる。
 以前、新潟で彼が使用した機体だ。 アラスカに持ち込むわけにもいかなかったので筑波に置いてきたのだが、今回の試験に合わせて白百合と・・・・・・慎二の分の壱型丙と共に輸送されてきたのだ。
 自分が白百合に搭乗するなら、この機体は誰が使うのだろうか?
 当初は七瀬が乗るのかと思っていたが、石井やミースは今のところ七瀬に何も指示していない。 前述した通り、斯衛軍出身の七瀬は瑞鶴や武御雷の搭乗経験しか無いので、もし壱型丙に載せるのであれば今のうちにシミュレーターなり実機なりで経験を積ませる必要があるのだが・・・・・・

「―――失礼ですが金谷大尉、この格納庫は関係者以外立ち入り禁止となっております。 出来れば、早急に退去して頂ければありがたいのですが・・・・・・」

 何時までも壱型丙を見上げていても埒が明かない、そう思った孝之はやんわりとした口調でそう麻香に告げた。

「―――関係者、と言うのであれば私は間違いなく関係者です。 それに、この艦は私が所属する艦隊の艦です。 そこに私が入れない区画があるなど・・・・・・ありえません」

「は、はぁ・・・・・・」

「それでも私を此処から排除すると言うのであれば・・・・・・実力行使も辞しませんが?」

「そ、そんなことは考えてません!! ほ、本当です!! だからそのコンプレッサーを降ろしてください!!」

 むんずッと、手近にあったコンプレッサーを両手で掲げた麻香に必死に弁明する孝之。
 その姿を見れば大多数の人間が彼を 【ヘタレ】 と言うかもしれないが、小型とは言え自重が数十㎏もあるコンプレッサーをあっさりと目の前で振り上げられれば無理もない。

「ふむ、麻美の部下にしては思った以上に軟弱ですね・・・・・・ オホーツク海で一度根性を鍛え直しますか?」

 ドスンと、やたらリアルな音を立ててコンプレッサーを床に下ろした麻香は、眉根を寄せながら孝之へ死刑宣告を告げる。

「い、いえ、やり残したことが多々ありますので、まだ人生をリタイアしたくないんですが・・・・・・」

「そうですか、それは残念です。 ・・・・・・・・・冗談で言ったつもりなのですが、そこまで震えられると少し傷つきますね」

「す、すいませんでしたッ!!」

 シュンっと、しょぼくれたように肩を竦めた麻香の姿に孝之は慌てて謝罪をするのだが、

「―――カムチャッカ半島、フルマラソンにしますか」

「さっき冗談だって言いませんでしたか大尉ッ!?」

 ある意味麻美よりも怖い、そう孝之は心から思った。
 物理的な暴力はさておき、発言だけでコチラの心を抉る麻香のやり方は正直言って質が悪い。
 麻香がどこまで本気なのか? それを会ったばかりの孝之が知るわけがないのだが、あの麻美の姉なのだからほぼ100%本気だと思って間違いないと彼は判断した。
 無論、その判断は何一つとして間違っておらず、もしこの場にサングラスを掛けたロリコンがいれば 『ナイスな判断だッ!!』 と賛辞を送っただろう、多分。

「―――騒がしい人ね。 相変わらず部下の躾が出来ていない愚妹ね、アレは。 ・・・・・・何にせよ、良い物を見せて頂きました鳴海中尉。 この機体、誰が乗るかは知りませんが大切に使ってあげてください」

 一方的にそう告げて、麻香は孝之の横をすり抜けて立ち去っていく。
 呆気に取られていた孝之だったが、はっと我に帰り、立ち去ろうとする麻香の背中に疑問を投げ掛けた。

「か、金谷大尉は、この壱型丙を見るためにわざわざ此処へ?」

「? ええ、石井大佐より、この機体がこの艦に搭載されていると聞きましたから・・・・・ それ以外の機体に用はありません。 私はこの壱型丙以外、何もこの艦では見ていないので安心してください」

 立ち止まり、顔だけ振り向いて答える麻香。 その言葉通り、彼女は一切壱型丙のモノに視線を向けてはいなかった。
 明らかに注意を惹くであろう、白いシートで覆われた白百合や、その奥にある三つの黒いコンテナなど、まるで見えていないかのように振舞っている。
 石井大佐のお墨付きがあるのであれば、恐らくソレラを見ても問題無いと思うのだが、彼女は一切の興味を示すことは無かった。

「そうですか・・・・・・ 失礼ですが、金谷大尉はこの機体をご存知なんですか?」

 彼にとっても、この不知火壱型丙とは思い入れのある機体だった。
 あの横浜で・・・・・・明星作戦の最中、自分と慎二を救ってくれた衛士が使用していた機体が、この壱型丙と同じだからだ。
 
「―――ええ、よく存じております。 私の夫が・・・・・・最後まで搭乗していた機体ですから」

 目を伏せ感慨深く答える麻香。 孝之はその姿を見て、自分が迂闊な質問をしてしまったことに気づいた。
 だが、彼は知らない。
 麻香の言う夫が搭乗していた機体とは、この 【壱型丙そのもの】 であると言うことに。
 石井に教えられたわけでも、ましてや機体の製造番号を確認したわけではないのだが、麻香はこの壱型丙が夫の機体だと気づいていた。
 壱型丙の総製造数は凡そ100機弱。 それは量産機としては異例の少なさであり、その全てが全く同じ形状をしていないのが、壱型丙が試作機の域を出ない急増機であったとこを知らしめている。
 頭部センサーの形状、肩部、胸部に使用されている装甲板の差異。 それは、98年と言う、BETA侵攻に晒された最中で製造された表れでもあり、そんな機体の運搬に携わった麻香は機体事の差異をよく覚えていた。 
 だからこそ麻香は気づいた。 細かいキズこそ増えているものの、この機体は間違いなく夫が最後まで使用していた機体だと。

「―――申し訳ありません。 大尉の気持ちも考えず、無神経な質問をしてしまいまして」

 そう謝罪する孝之だが、その事実に気がつかないのを責めることなど誰にも出来ない。
 戦術機とは所詮消耗品、それは中に乗っている衛士も例外ではない。
 ハードとソフト、その両者が組み合わさって戦術機はBETAを殺す剣となる。 新しいソフトを得て、再び戦場へ赴く戦術機に過去を思い出を投影し哀愁や郷愁を抱く必要は無いのだ。
 それを理解している麻香が、此処に訪れたのは単なる気まぐれに過ぎない。
 悲しみを乗り越えたといえば嘘になるが、何時までもその事実を引きずる程彼女は自分に甘い女性では無かった。
 申し訳なさそうに肩を落としている孝之を一瞥し、再度壱型丙を見上げた麻香はポツリと呟いた。

「――――――」

 小さく、か細い声で麻香が呟いた言葉を孝之は聞き取ることは出来なかったが、彼女が浮かべる寂しげな笑みを見て、迂闊な発言をした自分を更に恥じた。

 孝之は知らない、麻香の夫に自分が助けられたことを。

 孝之は知らない、今も尚、その夫に自分が守られていることを。 

 麻香は知っている、もう夫は二度と自分の前に現れないことを。

 麻香は知っている、自分が逃げた現実に妹は未だに囚われていることを。




 ―――多くの人命を奪い、多くの人の運命をねじ曲げたG弾。




 二人もまた、あの爆発に翻弄された憐れな被害者だった。






 ▽
 カムチャッキー基地 PX

「―――人材不足とは聞いていたが」

 唐突に、煙草を吸っていた上司が口を開いた。

「キール隊の彼ら、次の作戦にも同行するそうだ」

 その言葉の意味を栞が理解するよりも早く、隣に座る葵が訝しげな表情を浮かべて上司へ問う。
 
「次の・・・・・・と言うのは、試験部隊の警護ですか?」

 その問いに紫煙を吸い込みながら頷く静流。
 先日参加したブリーフィングにて知らされた、早期警戒衛星が捉えたBETA群の最新観測情報。
 エヴェンスク・ハイヴから流失したBETA群がオホーツク海を渡り、前回と同じくティギリ沿岸に上陸すると予想され、その上陸阻止作戦の最中にアラスカから来た各試験部隊が各々に課せられた実戦試験を行う手筈になっていた。
 帝国から派遣された彼女たちは、ソ連軍から選出された部隊と共にその試験部隊に随伴し、周辺警護と言う名の露払いを命じられている。

「詳細は後でブリーフィングにて知らせるが、警護の本命はジャール大隊。 試験小隊の直掩は私達とキール大隊が行う予定だ」

「―――しかしロヴァノフ大尉が指揮するキールは、先日の戦闘で戦術機の稼働率が60%まで落ちたと聞いていますが・・・・・・」

「アナディリから予備機が送られてくるらしい。 本人達も承服していない様子だったが、ソ連の上層部は今度の試験に彼らをどうしても参加させたいようだな」

「―――機体が間に合っても、搭乗させる衛士は・・・・・・」

「だから人材不足だと言ったんだよ。 大隊数に満たせない状態でも構わず参加させるんだからな。 ・・・・・・まぁ、それは私達が言えた義理では無いが」

(・・・・・・日本も日本で、余裕なんて何処にもないからね)

 そう内心で上司の言葉に同意して、栞は肩を竦めながら合成ペリメニを口に運ぶ。
 口の中に広がる合成食料特有の薬臭さ。 その味に眉をひそめつつ、最前線でも場所によって合成食料の味は違うものだなと一人納得してしまう。
 食料の問題もさることながら、各国とも人材の減少には頭を抱えているのが現状だ。
 日本は特例が認められない限り、16歳で徴兵されて軍役に就く。 早過ぎるとの意見もあるが、一応、16歳までは 【民間人】 として扱われるのだ。
 全てを共産党政府の管理下におかれ、生まれた時から民間人として扱われないこの国と比べれば、日本はまだ幸せなのかもしれない。
 国民全てが軍属、民間人などと言う言葉が存在しない国家で生きることの辛さを、彼女は想像でしか知ることが出来無かった。

「―――アクロウ中尉あたりは大丈夫なんですか? 隆のお陰で墜落こそしなかったけど、かなりまいってる様子に見えましたよ」

 ポツリと、ソ連軍の女性士官を思い浮かべながら栞は二人の会話に割って入る。

「ロヴァノフ大尉の話では何ら問題無いとのことだが・・・・・・まぁ、何かあってもそう言うしかないだろう。 問題があるなどと他国の人間に露見しようものなら、問答無用で更迭されるだろうしな・・・・・・」

 溜息混じりで返ってきた静流の言葉に、栞は一切の私情を挟まないソ連軍人の在り方に敬意を内心で送り、同時に言い様の無い悲しさを覚えた。

「辛いでしょうね・・・・・・ロヴァノフ大尉」

「そりゃ・・・・・・ね。 でも私情を挟んでいたら部下に示しがつかないし・・・・・・ 何よりBETA相手にそんな甘いことを言ってる余裕なんて無いわよ」

「それは分かってるけど・・・・・・ ソ連の体制化では貴重な自由恋愛じゃない? 本人たちの意志を無視して、政府が勝手に遺伝子プールで組み合わせたカップルじゃないのに・・・・・・」

「他所様のお国の事情に私達が首突っ込むべきじゃないわよ。 それに日本だって似たような法案が議会に提出されてるって聞くし、決められたことには従わなければいけない、そうでしょう? それにロヴァノフ大尉が本気でアクロウ中尉を思ってるなら、とっとと孕ませてアラスカへ移送させればいいじゃない」

 葵との会話に苛立を覚えた栞は、鼻を鳴らしながら乱暴にそう言い放った。

「―――懐妊には宗教的な制約や、本国での受け入れ準備もあるからな・・・・・・ まぁ妊娠すら自由に出来無いのがこの国の現状だが・・・・・・」

 二人の会話を聞いていた静流がそう口を挟み、一度紫煙を肺に入れてから二人を見据える。

「こんな場所でなんだが、何時かはお前たちに言う必要がある思っていたことがある」

 何時もの投げやりな口調を一転させ、静流は二人に何かを言い聞かせるように言葉を紡いだ。

「―――いい加減、好きなら好きとはっきり言え」

「「ッ!?」」

 目を見開いて驚く二人を他所に、静流は灰皿の底に煙草を押し付け、再び胸ポケットから煙草を取り出す。
 余裕たっぷりな上司と対照的に言われた二人は明らかに狼狽した様子で、口をパクパクとさせるだけで自分の言いたいことが言えずにいた。

「い、いきなりなんですか?」

「そ、そうです。 す、好きとかなんとか・・・・・・不謹慎ですッ!」

「お前たちに後悔して欲しくないから言ったんだよ・・・・・・上司では無く、年長者から出来る数少ないアドバイスだ」

 漸く再起動したのか、二人が額に汗を流しながら訴えた言葉に静流は苦笑しながらそう答えた。
 愕然とした表情を見せる二人たが、その表情を見るに言葉の受け取り方は全く異なるようだ。
 顔を真赤にして、狼狽えている葵。
 顔を真っ青にして、狼狽えている栞。
 そんな二人の顔を見比べ、静流は静かな口調で言葉を紡いだ。

「このご時世、何時もの明日が再び来るとは思うなよ? 今まで大丈夫だったからと言って、次の実戦で・・・・・・いや、こうしている間にも奴に何かある可能性は十分にある」

 二人には教えていないが、それでなくとも今あのグラサン男はソ連軍の将校から出頭を命じられているのだ。
 
「だから二人に言っておく・・・・・・ 思いなんてものは態度だけでは決して伝わらない、はっきりと言葉にしなければ相手には分かって貰えないんだよ。 ・・・・・・特にあの男には、オルフィーナばりのアクションを起こさないと絶対に伝わらないだろうな」

 そこで静流は言葉を区切り、煙草に火を付け紫煙を吸い込む。

「―――後で後悔しないよう、チャンスがある内に言うんだな。 ・・・・・・さて、私は少々ヤボ用が出来た。 お前たちは先に宿舎に戻って構わん」

 PXの出入口を一瞥し、伝えるのはそれまでだと言わんばかりに、静流は席を立つ。

「ま、待ってください隊長ッ!! 何か勘違いしてます、私は別に隆さんにそんな気持ちなんて!!」

 慌てて葵は静流を追いかけるのだが、栞はそんな二人の後ろ姿を呆然と見続けることしか出来なかった。

 ―――思いを伝える。

 そう考えた彼女の脳裏に様々な情景が過ぎる。
 
 親しげに、古巣である横浜の女性たちと会話をする彼の姿。

 俯きながらも、彼に付いて歩く儚げな少女。

 歴戦の衛士でありながらも、天真爛漫な笑みを浮かべて彼と共に戦ったエース。
 
 口調こそ悪いが、彼のために尽力したドイツの女性。

 そして・・・・・・自分の気持を表現することが苦手だった女性が、意を決したかのように彼に思いを伝える姿。

 ―――果たして自分は彼に自らの思いを伝えたことがあっただろうか?

 ―――果たして自分には、デンマークの姫君のように、大粒の涙を浮かべ喉が裂けんばかりの声量で彼に思いを伝えられるのか?

 モヤモヤしていた気持ちは、あの輸送機で見た光景で吹っ切れたはずだった。
 だが、静流の言うとおり、今のままの状態が今後も続くとは限らない。
 例えお互いを愛しあうことが出来たとしても、戦場に赴く自分達が何時その生命を散らすとも限らない。
 愛し、愛された程度で、神がその慈悲を向けてくれることなど決して無い。
 
(――――――ッ!!)

 戦車級にたかられ、命を落としかけたアクロウ中尉。 婚約者の危機に、悲痛な叫びを上げたロヴァノフ大尉。
 そんな先日垣間見た光景を思い出し、彼女の不安は加速する。

 【好きに生きろ】 以前、名も知らない男に言われた言葉。
 私はアレから好きに生きて来たはずだ・・・・・・ 好きに生きて、今ここにいるはずだ。

 だったら今、【私が本当にしたいことはなんなのだ】?

 栞は作戦前の貴重な時間にも関わらず、PXでその答えを暫くの間考え続けた・・・・・・





 ▽
 カムチャッカ基地・ソ連軍将校用官舎

 ―――ソビエト社会主義共和国連邦。
 1920年代に設立された世界で初めての社会主義国家。 
 米国と唯一肩を並べられる国力を持ち、東側諸国の中核を成す超大国である。
 連邦国家と名売っているが、実際は共産党政府の一党独裁国家であり、主義として掲げられる社会主義もマルクスが唱えた階級社会の脱却と言うソレとは異なり、レーニン、あるいはスターリン主義とされる独自の主張を持っていた。
 第一次、第二次大戦を利用して肥大したソ連は周辺諸国を衛星国として取り込み、ワルシャワ条約機構など東側諸国のリーダーとしてNATOを初めとする西側諸国と対立した。 対立は冷戦構造を生み出し、朝鮮戦争やベトナム戦争と言った代理戦争を勃発させ、両陣営がこぞって開発した核兵器は世界の終末を予感させる代物だった。
 スターリン死後、新たな指導者となったフルシチョフの采配で、ソ連は独裁国家としての道を脱却しようと足掻いたものの、後任であるブレジネフによってソ連は再び階級社会としての独裁的政策を進めることとなる。
 蔓延する官僚腐敗によって引き起こされた経済不況、食料問題、国際社会での信用の失墜。 人民は長年に渡る圧政に苦しめられ続けたが、ミハイル・ゴルバチョフ政権が推し進めたペレストロイカとグラスノスチによって政治体制の改革が行われることになる。 だが、その改革によって民族運動が活発化し、連邦からの独立を求める動きが共和国内部で次々に起こったが、ゴルバチョフはソビエト連邦が有していた権限を各国へ譲渡し、民主的な手段による各共和国との調整を進めた。
 1983年、ゴルバチョフは新ベオグラード宣言によってブレジネフ・ドクトリンを否定し、東側諸国の本格的な民主化を初め、1989年には当時のアメリカ大統領、ジョージ・H・W・ブッシュとマルタで会談し、長きに渡って続いた冷戦の集結を宣言した。
 そして1991年、ウクライナの独立を持ってソ連は主権国家としての意味合いを失い、同年12月26日、ソビエト社会主義連邦共和国は崩壊した。
 
 ―――そんな、義務教育で学習した程度の情報を脳裏に羅列しながら、彼・・・・・・社隆は目の前に座る女性将校を見据える。

「・・・・・・・・・」

 女性将校、この部屋の主であるフィカーツィア・ラトロワ中佐は彼が入室してからと言うもの、 「少し待て」 と告げ、机の上に並ぶ書類に次々と目を通し、判を押し続けている。
 隆は自分の上司もコレぐらい書類仕事をテキパキとやってくれればなと、そんな期待出来無い希望を抱きながら、まだ終わりそうにない書類整理から目を逸らし、直立の姿勢を保ったまま目線だけで室内を見回した。
 とは言っても、室内に彼が興味を持てるような代物は皆無だった。
 部屋の主が今座っている事務机、応接用の机とソファ、壁に並ぶ勲章や何らかの記念品の数々、将校用の部屋としてはやや狭いような気がする室内にあるのはそれだけだった。
 殺風景な室内の光景に内心で嘆息しながら、数少ない調度品である勲章や記念品に目を向けるも、生憎と隆はロシア語は解読出来ないので、ソレが何なのか理解することは出来なかった。
 ―――唯一、事務机の上にある伏せられた写真立てが気にはなったものの、書類整理を終えたラトロワの姿が目に入り、再び彼女に注意を向けた。
 
「―――すまなかったな。 呼び出した上に待たせて」

 彼女は書類を束ね、悪びれたように肩を竦めながら隆にそう言った。

「―――いえ。 中佐殿の流れるような手際の良さを拝見できて光栄です」

「ふん、世辞の上手い男だ・・・・・・ 座ってかまわんぞ」

 苦笑する彼女にそう促され、隆は来客用とおぼしきソファに腰を下ろした。
 ニコニコと愛想笑いを浮かべているものの、彼の頭の中では今現在コード991が鳴りっぱなしだ。
 何故? と幾度となく浮かんだ疑問が脳裏に浮かぶ。
 つい小一時間程前、機体調整を終えPXに向かった際にロヴァノフ大尉に呼び止められ、先日要注意人物にリストアップしたばかりのラトロワ中佐が自分を呼んでいると告げられたのだ。
 一体何の用があって彼女が自分を呼び出したのかさっぱり検討がつかない。
 
「作戦の前後は書類が増えて困る。 優秀な秘書官でもいれば話は別だが、私如きの立場ではそれは無理な話だからな・・・・・・」

 そんな卑下とも愚痴とも取れる言葉を吐きながら、ラトロワは一本の葉巻を手に隆とは反対側のソファに腰を下ろした。
 
「―――もっとも欲しているのは人材。 それは日本もソ連も変わらないのでしょうね」

「ああ、その通りだ。 ―――だからこそ、貴様をこうして呼び出したわけだが」

 シュポっとジッポで葉巻に火をつけながら、ラトロワは隆を見据えてそう呟いた。
 その瞳を見て、隆の警戒レベルが更に上げる。
 
「一つ聞くが、日本の衛士は諜報の真似事までするのか?」

「・・・・・・・・・・・・へ?」

 予想外の質問に、隆の脳裏が?で埋め尽くされる。

「―――ふん、真っ向から貴様は 【スパイ】 か? と聞かれて答えるバカはいないだろうが・・・・・・ その態度を見るに、何時ものコミッサールの早とちりか」

「へ? は? スパイ?」

 鼻を鳴らし、聞きなれない相手に向けて嘲笑を送る彼女の話に隆はついていけない。
 ラトロワはそんな目の前の男の態度に、もしこれでスパイなら大した演技だと内心で賞賛を送り、苦笑しながら隆にある事実を告げた。

「社・・・・・・隆とか言ったな? 貴様は我が党の政治将校達に目を付けられているんだよ。 その理由は・・・・・・自分の胸に手を当てれば凡その察しは付くな?」

「・・・・・・いえ、まったく」

 呆然とした面持ちで答える隆を見て、ラトロワは先程下した彼の評価を下方修正した。

「私の部下と随分親しげじゃないか・・・・・・ お陰で私まで疑われたぞ」

「親しげ・・・・・・ですか? ・・・・・・少し話して、飴を渡しただけで?」

「貴様の国では問題にならんのかもしれんがな、この国では他国の人間とそのような接し方をすれば十分疑いの対象になるんだよ」

 そう事もなげに言い放たれ、隆はやはりこの国の常識が自分の尺度では測れないと実感した。
 正直、スパイか? と言われたことに気づいた瞬間は、この世界にいた金谷隆のことを思い出し、ついにテロリストとして捕まるのかと内心で冷や汗を掻いたのだが、どうやら目の前に座るソ連の女性将校は何やら見当違いの想像をしていたようだ。

「―――ラトロワ中佐。 それでしたら、今こうして自分と話している事実は、あなたにとって由々しき事態なのでは?」

「―――ロシア人としての経歴を気にするのであれば確かに貴様の言うとおりだが、これも命令の一環なんだよ・・・・・・ お前に付いての報告書を作成しろとな」

「報告書・・・・・・で、ありますか?」

「ああ、実際の処、未だに貴様が生きていることが私には驚嘆だよ。 他国の人間といえど、事故に見せかけて殺すぐらいは簡単にする連中もいるからな。 なのに、そんな連中が慎重になってお前の周辺を探っている・・・・・・何らかの取引が日本とあったのか、それとも貴様には余程力のあるパトロンでもいるのか・・・・・・」

 パトロンとの言葉に、隆の最大の理解者であり横浜にて絶大な権力を持つ女性の姿が彼の脳裏に過ぎる。

「―――その表情を見るに、心当たりはあると言うことか・・・・・・ 見かけどおり、喰えん男だな貴様は」

 紫煙を吐きながら告げるラトロワの瞳が、警戒しているかのようにスッと細くなる。

「あ、いえ・・・・・・ 心当たりが無いと言えば嘘になりますが、誤解です。 自分は他意があって中佐の部下と接触したわけではありません」

「・・・・・・それを信じろと?」

「信じるか信じないかはソチラの受け取り次第ですが・・・・・・ 【子供】 と遊ぶのに、理由が必要ですか?」

 子供、との言葉を聞いて、彼女は改めて隆の顔を見る。
 入室してから一度も外す気配が無いサングラスのお陰で目元は見えないが、肩を竦め呆れた様子に見える男の言葉がどこまで本気なのかを、彼女は見極めようとした。

「子供・・・・・・か。 中尉、貴様は我が祖国についてどれだけのことを知っている?」

「―――申し訳ありません。 失礼を承知でお答えしますが、私は貴国の現状に付いてそれ程深い知識を持ちあわせておりません」

 隆が知っているソ連は、この世界とは別のソ連だ。
 十八番の口八丁で乗り切ろうかとも思ったが、目の前の女性にソレが通じるとは到底思えず、彼は正直にそう答えた。

「ふむ・・・・・・ 我が祖国に民間人が一人として存在していないことは知っているな?」

 自分の答えで気分を害するかに見えたのだが、彼女は特に気にした様子も無く、事実を確認するような口調で彼に質問してきた。
 「はい」 っと隆が答え頷いたのを見て、ラトロワは自身にとって本意では無いのだが、指揮官として告げなければならない事実を彼へ伝えた。

「ならば結構。 中尉もそれが分かっているのであれば・・・・・・連中を 【子供】 などと不抜けた言葉で呼ぶな。 政策に従っているとは言え、我々は我々の信念の元に軍務に就いている。 その責務を、その誇りを、根底から覆すような温い言葉を連中に吐かれるのは迷惑だ」

「―――ッ!!」

 静かなラトロワの剣幕に押され、隆は思わず息を飲んだ。
 そして告げられた言葉で、ソビエト連邦と言う国の本当の姿を垣間見たような気がした。
 
「―――中佐は・・・・・・彼らを年相応の子供として扱ったことはないんですか?」

「―――それは貴様に答えねばならん話か? だが・・・・・・そうだな、一つ教えてやる。 何時死ぬか分からない部下に愛情を注いだとして、ソレを失い続ける辛さに人が耐えられると思うか?」

「それは・・・・・・」

 YESとも、NOとも、隆は答えることは出来なかった。
 状況を想像することは出来る。 だが実際のその状況に自分が置かれたことが一度も無い彼は、何も答えることが出来ず口篭ってしまった。
 狼狽する隆の様子を見て、ラトロワは心底呆れ果てたように溜息と共に紫煙を吐き出す。

「ふん・・・・・・ 存外、甘い男のようだな貴様は。 そのサングラスは甘い自分を隠すための仮面か?」

「・・・・・・考えすぎです中佐。 俺は中佐の言うとおり、ただの甘い男ですよ」

 彼もまた、何も答えることが出来無い自分自身に呆れていた。
 何時まで、自分の尺度で物事を見ている気だと。
 自分の価値観が、この世界で通用しないことなんて今に知ったことではないだろう。
 それが分かっているくせに、何時になれば自分はこの世界の現実を見て違和感を感じ無くなるのだろうか?

(―――馬鹿か俺は)

 元の世界に帰るのに、この世界の常識なんて必要無い。
 なのに俺は、この世界の一員になれないことを嘆いている。
 俺は本当に・・・・・・ 元の世界に帰りたいと思っているんだろうか?
 この世界に来て、もうそろそろ一年になろうとしている。 だが、今の今まで、元の世界に戻る何らかの方法を見つけることや、夕呼からその件についての連絡が何も無かった。
 【因果】 を探せと彼女は言った。
 自分をこの世界に呼びこむ原因となった因果を見つけろといったが・・・・・・皆目見当がつかない。
 だから無意識の内に、もう元の世界には戻れないと諦めているのかもしれない。
 この世界で生きていくことを・・・・・・覚悟しているのかもしれない。

「―――ッ」

 ギリっと、隆は強く奥歯を噛んで小さく頭を振った。 その姿をラトロワが怪訝そうに見ているが、彼は構わずに自身の考えを否定した。
 お前の覚悟はその程度だったのかと。
 この世界に骨を埋め、向こうの世界を無かったことにしたいのかと。
 麻美との思い出と、全て無駄にするつもりかと。
 結婚まで申し込んだ、麻美への気持ちはなんだったかと。

 ―――諦めない、諦めるわけにはいかない。

 どんなに慣れても、この世界は自分の世界では無い。
 必ずあの世界に帰る、例え何年かかろうとも必ず帰って麻美にもう一度会いたい。
 何が 【因果】 だ。 こんな世界に引きずり込みやがって、いらぬ経験を幾つもさせやがって、決して忘れることが出来無い記憶を植えつけやがって。 もし、その因果とやらを見つけたら、一発ぶん殴ってやらないと気が済ますない。

「―――随分と思い悩んでいるようだが・・・・・・安心しろ。 これ以上余計な真似をしなければ、貴様の身に何かが起きる可能性は少ないだろう」

 ラトロワにそう声を掛けられ、隆は没頭しかけていた思考を中断し、曖昧な笑みを浮かべて頷いた。

「はい、肝に銘じておきます。 ご忠告ありがとうございました」

 深々と頭を下げて感謝の意を示す隆へ、ラトロワは 「かまわんよ」 と言って葉巻を咥える。
 話はそれだけだったらしく、隆は立ち上がって彼女へ敬礼を送り退室しようとしたのだが・・・・・・

「―――中尉、一つ聞いていいか?」

 紫煙を吐き出し、ラトロワは背を向けた隆へ声を掛けた。

「―――他意がないのであれば、何故あの連中と懇意にしようとした?」

 衛士、いや軍人として何処か歪な男が、何のために自分の部下と接触したのか。
 短い間ではあるが隆を観察していたラトロワは、どうしてもその答えを見つけることが出来なかった。

「・・・・・・えっと・・・・・・」

「連中が、先程貴様が言った 【子供】 だったからか? そうなると・・・・・・考えたくはないが、貴様は随分と特殊な性癖を持っているようだな。 ふむ・・・・・・コミッサールの連中とは別の理由で、私は貴様を警戒すべきか・・・・・・」

 言いよどむ隆の姿に真剣な顔でそう呟いて考えこむラトロワだが、隆は必死に首を横に降った後、一瞬の逡巡を交えながら口を開いた。

「まぁ、その・・・・・・なんて言いますか・・・・・・ 重ねてしまったんですよ」

「重ねる? 何にだ?」

「―――妹です。 俺には妹・・・・・・っても義妹がおりまして。 その娘がロシア人だったから・・・・・・中佐の部下にその面影を重ねてしまったんです」

 言い難そうに、それでいて照れくさそうに話す隆を見て、ラトロワは彼の言う言葉を信じてみるのもいいかもしれないと思った。

「そうか・・・・・・ 妹の生まれは?」

「それが・・・・・・話してくれないんです。 言いたくないとはっきり言われまして・・・・・・ 知らないのは寂しいんですが、無理に聞くのもなんだか悪い気がして・・・・・・」

 彼の返答にラトロワは内心で納得していた。
 その妹とやらは、恐らくユーラシアからアラスカ以外に脱出したロシア人の一員だろう。
 サハリンを通り、多くの同胞が日本へ亡命したのは知っているが、その後彼らがどうなったかまでは彼女の知るところでは無なかった。
 逃げ延びた先が、先の大戦で敵対した日本と言う事実を踏まえ、亡命者の多くは世間の目に触れない場所で、過酷な労働にでも就かされていると彼女は想像していた。
 だがどうだ? 目の前の男は同胞を過酷な労働に、もしくは虐待するような人間だろうか?
 答えは否。 短い時間とは言え、彼を観察したラトロワはその結論を確信していた。
 もし逃げ延びだ同胞が全て、こんな男がいる家に引き取られるのであれば、日本へ行った同胞は幸せだろう。
 ロシア人の娘を養子に持つ彼の背景が気にはなったが、妹がソ連にいた頃の話をしたがらないのは、祖国で経験した様々な出来事を思い出したく無いからだろう。
 悲惨、その一言で片づけられないほど、ユーラシアから脱出する際の混乱は過酷なものだった。
 アラスカと言う名ばかりの新天地。 聞こえはいいが、住み慣れた土地を追い出された国民の不安と焦燥が齎した様々な悲劇は、多くの悲しみと犠牲を生んだ。

 ―――ソ連を統治する共産党政府は、その犠牲すら全て織り込み済みだったようだが、

「なるほど・・・・・・ どうやら日本は、私が思っていたよりもいい国のようだな」

 心からそう思い、彼女は目を伏せてそう呟いた。

「そうでしょうか? ・・・・・・同じ最前線、日本も此処とさして変わりはありませんよ」

「それでもだよ。 どうやら貴様には礼を言わねばならんようだな・・・・・・ 同胞を受け入れてくれたこと、感謝する」

「い、いえ、コチラこそ・・・・・・ あんな可愛らしい子が妹になってくれて嬉しいやら勿体無いやら・・・・・・って、何言ってるんだ俺は」

 当然頭を下げたラトロワの態度に慌てる隆。 彼女はそんな隆の姿を見て初めて微笑を浮かべ、彼が部屋から出て行く間際、彼の耳にまでは届かない小さな声でポツリと呟いた。

「―――私の子も、貴様のような上司に恵まれていればいいのだがな」






 ▽
 第三特設格納庫・衛士詰所

「へぇぇぇぇ、ってことはアレか? TYPE94はこうガッ―――っと来て、ズバッ―――って来る感じなのかッ!?」

「ちゃうちゃう!! ええか!? 不知火って機体はな、ズザッ―――って感じで、ガキガキって感じなんやッ!!」

「そうか!! ガキガキッ!! て感じなのか!!」

 などと詰所の片隅で繰り広げられている不可解な会話。
 第三者が聞いてもさっぱり理解出来無い内容なのだが、会話をしている当人達の間ではきちんと会話として成立しているらしい。
 整備員や計画関係者が苦笑いを浮かべながらも遠巻きで見ているその二人とは、日本帝国において斯衛軍にすら一目置かれるほどの衛士である川井洋平中尉と、ネパール軍から出向中の試験衛士、タリサ・マナンダル少尉だ。
 人種だけでなく、所属や年齢までもが違う二人なのだが、顔合わせをしたのが30分前とは思えないほど意気投合していた。
 会話の切っ掛けは些細なことだ。 プロミネンス計画の一員として日米合同で行われているXFJ計画に協力しているタリサだが、今回行われる試験が終了後、自身の乗機がF-15ACTVからユウヤとは別の弐型に変更になると耳にし、帝国軍から派兵された衛士に不知火の話を聞きに来たのが始まりだった。
 本来であれば同型機を運用しているユウヤに聞くのが一番なのだろうが、不知火を現場で運用している人間に聞いたほうが、より実戦での感覚を感じ取れるとタリサは判断したのだ。
 お互いが最前線国家に属しているからこそ気心が通じるのかもしれないが、こういった柔軟性を垣間見ると彼女が試験衛士としての適性に優れているのが見て取れる。

「―――申し訳ありません桐嶋中尉。 あの子、戦術機の話になると何時も止まらなくて・・・・・・」

「―――いや、気にしなくて結構だ。 アイツも色々と話したがってたからな・・・・・・お互い様だ、ブレーメル少尉」

 そう洋平とタリサの傍らで肩を竦めながら呟き合うのは、桐嶋久志中尉とステラ・ブレーメル少尉。
 こちらもまた祖国が日本とスゥエーデンと違う二人なのだが、物事を傍観的に見合う性格が似ているせいか、洋平やタリサと同じように談笑しあっていた。

「ステラッ、聞いてくれよ!! TYPE94って面白そうな機体だぜ!! ユウヤが乗ってるのを見て思ってたけどさ、ACTVとは違う意味で乗りこなしがいがありそうだッ!!」

「そんなに興奮しないの。 F-15Eから帝国軍機への乗り換に苦戦してたユウヤをあなたも見てたでしょ? 自分で思ってるほど簡単じゃないわよ、きっと」

「ふむ・・・・・・スペック表で見せてもらったが、あのACTVって機体を十二分に扱えるなら、不知火に乗り換えてもそう手こずるとは思えないが?」

「そや、久志の言う通りやで。 帝国軍機の特徴はそのトルク特性や、ぶっといトルクを持ってるACTVで繊細な機動ができるなら、不知火の機動特性も直ぐに掴めるはずや。 空力やなんやもあるけど、ようはスロットル操作の問題やからな」

「むふふふ~♪ まぁな~あたしが乗ればTYPE94をあんたら好みの機体に仕上げてみせるぜ!!」

「―――まったく ・・・・・・調子に乗ってこの子は」

 自身の腕に賛辞を送られ、タリサは上機嫌な様子で鼻を鳴らした。 そんな彼女の姿に呆れるステラだが、やはり仲間の腕が認められたことは彼女にとっても嬉しいのか、言葉とは裏腹に表情には微笑が浮かんでいた。

(―――試験衛士はいいね、テストだけやってればいんだし)

 そんな四人の姿を遠くに眺めながら、彼女・・・・・・杉原真奈美は頬杖を突きながらそんな言葉を胸中で呟いた。
 同じ試験部隊であるインパルスの姿を知っている真奈美は、試験衛士としての仕事を馬鹿にしているわけでは無いのだが、今の彼女は手放しに彼らの仕事に賛辞を送る気にはなれなかった。

「・・・・・・」

 チラリと、詰所の窓から見える弐型に目を向ける。
その瞳に宿るそれは、新型機の姿に憧れる憧憬では無い。
 あるのは嫌悪と疑念、真奈美は弐型の存在自体に強い拒絶感を覚えていた。
 彼女に取って弐型は鏡写しの自分。 それを間近で見ていると、現実を突きつけられているような気がして酷く気分が悪くなる。
 ―――だが、今の彼女を一番不快にさせている原因は実は弐型ではない。

「おい、ユウヤッ!! お前もちょっと話にまざれよッ!!」

「―――パスだ。 悪いがそんな気分じゃない」

 上機嫌なタリサの誘いをやんわりと断る男。
 弐型の首席試験衛士である、ユウヤ・ブリッジス少尉。
 彼は話の輪に入るでもなく、真奈美が座っているパイプ椅子の傍にあるロッカーに寄りかかりながら、退屈そうに弐型を見上げていた。

(―――なんで此処にいるんだろう・・・・・・この人)
 
 その疑問が、先程から真奈美の胸中に渦巻いていた。
 ユウヤとしては、一番この場所が弐型を見るのに適した場所だという単純な理由なのだが、それに真奈美が気付くはずがない。
 何となく居心地の悪さを感じながら、真奈美は脇目でユウヤを一瞥する。
 試験衛士にしては協調性の無い人間、それが真奈美がユウヤに抱いた第一印象であり、それは今になっても変わってはいない。
 洋平や久志と談笑する二人の試験衛士。 繰り広げられているのは取り留め無い会話かもしれないが、コミニュケーションを取ることで、互いに必要な情報を交換しあっているはずだ。
ユウヤは不知火の改良型の開発に携わっているのだから、現場で不知火を扱っている自分たちに積極的に意見を求めてもいいはずなのだが、顔合わせをした先日から今まで特に質問らしい質問を何もしてこない。
 きっとプライドが物凄く高いのだろう。 静流から彼が米軍の教導隊出身と聞いていたので、真奈美はそう思うことにしていた。
 協調性が無いと思ってしまうのも、彼をきっと同じ 【日本人】 として見ているせいだ。
 外見に東洋人の特徴があったとしても、彼の血の半分はアメリカ人の血であり、彼が生まれ育った場所は平和なアメリカ本土だ。
 価値観の押し付けは良くない。 真奈美は自分にそう言い聞かせ、此処にいても退屈なだけなので上司がいるPXに向かおうと思った矢先、

「―――お前見たいなのが、不知火に乗ってるのか」

 そうユウヤがポツリと呟いた言葉を耳にし、真奈美は踏み出そうとした足を止めた。

「―――私が不知火に乗ってると、何か問題があるんですか?」

 突然 「お前」 よばわりしたユウヤに向けて、はっきりとした不快の意志を込めて真奈美は返答した。
 そのことに気づいているのかいないのか、ユウヤは弐型と真奈美を見比べながら言葉を続ける。

「いや、ソ連の連中も同じだが・・・・・・ユーラシア、いや最前線ってのは子供が戦場に立つのが当たり前なんだな・・・・・・」

「ッ!? 当たり前・・・・・・? 好きで・・・・・・戦場になんて行くわけないじゃないですかッ」

 必死に怒りを押し殺し、震える声で答える真奈美。 
 本当なら叫びたい、巫山戯るなと大声で伝えたい。
 だが、目の前の男にとってその事実は紛れもなく他人事であり、叫んだ所で自分の気持を理解してくれるとは到底思えない。
 
(・・・・・・くッ)

 頭に鈍い痛みが走る。
 それが、欧州で経験した戦場を思い出そうとすると起きる頭痛だと真奈美は知っている。
 後催眠と薬によって無かったことにされている記憶。 その記憶を考えると決まってその頭痛が起きるのだ。

「それでもお前達は、祖国の忠義とやらを胸にBETAと戦うんだろう? ・・・・・・愛国心は分かるが、子供にまでその理想を押し付ける日本は間違いなく何処か歪んでるな」

「・・・・・・誰かのために剣を持つのは愚かだと、ブリッジス少尉はそう言いたいんですか?」

「そうは言わない。 ・・・・・・合理的に動けず、くだらない思想や理念に縛られたお前たちが不憫だと、俺は言いたいんだよ」

「不憫? 私達が不憫・・・・・・?」

「ああ、弐型・・・・・・TYPE94の仕上がりは良くなってきたが、元々のポテンシャルを考えるとアレに乗ることを余儀なくされている日本の衛士は本当に不憫だな。 だが、弐型が完成すれば衛士の損耗率は間違いなく減少する。 そうなれば、お前みたいな子供が戦場に立つ必要はきっと無くなるさ」

 そう真奈美に告げたユウヤは、自信あり気な笑みを浮かべた。
 今言った言葉はユウヤの本心であり、決して皮肉や悪気などは含まれていない。
 日本人を毛嫌いしていた彼だが、唯依や第参開発局の人間と知り合うことで、彼の中の日本人像は以前と比べて随分と軟化している。
 だからこそ、彼なりに真奈美たちの現状を憂い、自信を持って開発に着手している弐型が完成すれば、彼らの現状を少しは打開できるだろうと思い、そう口にしたのだ。

 ―――元々、他人の心を気遣う気持ちが皆無だった彼にして見れば、それは大した進歩なのだが、正直、今は慣れないことをするべきではなかった・・・・・・

「―――何が、弐型ですか」

「?」

「―――貴方が後生大事に仕上げている不知火・・・・・・ ソレを日本の衛士が心から待ち望んでいると思っているなら、それは貴方の傲慢です」

 真奈美はもう堪えきれず、静かな怒りを見せながらユウヤを睨みつける。
 ユウヤとしても真奈美の反応は予想外だった。
 弐型の開発は、現状の不知火の性能に不満を持った日本の衛士の総意だと思っていたからだ。
 試験衛士として計画への協力を要請された以上、己の責務を果たすべく尽力していた彼だが、その根底を揺るがす言葉を真奈美は吐き出す。

「―――不知火は・・・・・・日本の戦術機です。 それを、日本を見捨て、G弾で多くの人命を奪った貴方達が、平気な顔で弄繰り回した不知火を、私達が好意的に使うと本気で思っているんですかッ!?」

 無け無しの理性を総動員していた真奈美だったが、ついには堪えきれずに声を荒らげてしまう。
 談笑をしていた四人が二人の様子に気づいたようだったが、真奈美は構わずにユウヤを睨み続ける。

「・・・・・・」

 真奈美の剣幕に押され、後ずさることしか出来ないユウヤ。
 そんな彼に殺意すら孕んだ視線を向け、真奈美は吐き捨てるように呟いた。

「―――例え弐型が完成しても・・・・・・・・・・・・ 私は貴方のような人が作った機体には、絶対に乗りません」







 ▽
「―――どう思いますか、同志タイラスキー?」

「―――ブリッジスの鈍感さは知っていたが、まさかアレほどとは・・・・・・」

「―――俺的にはアレでも随分改善したと思うんですけどねぇ」

「―――同志ヴィンスキー。 確かに俺もそう思うが・・・・・・ アレはマズイ。 奈華宮大尉に聞かれてたら 【指の関節を一本一本丁寧に外される】 並にマズイ」

「―――恐ろしい。 大尉がソ連に同行しなくて本当に良かったわけですね」

「―――ああ、俺たちにとってもお前たちにとっても今の状況は幸運以外の何ものでもないん。 ・・・・・・ん? 同志ヴィンスキー、同志ヴァレスキーは何処に行った?」

「―――はッ、先程PXに帝国軍から派兵された三人の美女がいると聞き、無謀にも単身で乗り込んでいきました!! 特攻は日本だけの専売特許では無いとのことですッ!!」

「―――バカが早まりやがって・・・・・・俺達も行くぞ!! 同志の手柄は皆のもの・・・・・・違うッ!! 同志の死を無駄にしないためだ!!」

「―――了解でありますッ!!」

「―――何やってるんですか? 平中尉にローウェル軍曹」

「「ッ!?」」

「―――今回、暇だからって油売ってると大尉にその旨報告しますよ?」

「ま、待ってくれ!! 七瀬、後生だからそれだけはやめてくれ!!」

「―――ローウェル軍曹、出撃は明日なのに随分と余裕ですね? 受け持ち機の最終チェック、報告書が上がってきていないと篁中尉が探していましたよ」

「げッ!! 今、唯依姫の機嫌を損ねるのはマズイッ!!」

「―――ちなみに二人とも。 ジアコーザ少尉なら向こうで項垂れてます。 手に火傷を作って」

「「おお、同志ヴァレスキーよ。 失敗したのか、なんと情けない・・・・・・」」

「―――いつまでバカやってるんですか、早く自分の持ち場に帰ってください・・・・・・はぁ」








 ▽
 カムチャッキー基地・第8格納庫付近

「懸念が現実になったか・・・・・・ あれだけ静流さんに言われてたのに、迂闊だなぁ俺ってやつは・・・・・・」

 トボトボと力無い足取りで宿舎へ向かう隆は、先程のやり取りを思い出して自己嫌悪に陥っていた。
 彼の不安は杞憂に過ぎないのだが、ソ連と言う、ある種閉鎖的な空間にいるせいで何時も通り物事を楽観視することが出来ないのだ。

(―――何事にもポジティブシンキングが俺のモットウなんだが)

 そう内心で考え、はぁ、っと溜息を付いてしまう。
 実際のところ、彼は彼自身が思っている程ポジティブな思考を持ち合わせてはいないのだが、物事を全て他人事として考える自身の気質だけは自覚しているが故に、彼は自分自身をポジティブな人間だと勘違いしている。
 義妹の身の上に憂い、戦場の光景を見て精神に失調を来すような繊細な精神を持つ彼が、本当の意味でポジティブな人間であるはずがない。
 
「ま・・・・・・ 一応静流さんには報告しておくか・・・・・・」

 ポリポリと後頭部を掻きながらその結論に達し、宿舎へと戻る足を速める。
 上司に目立つなと再三注意されている以上、先日のような揉め事に首を突っ込むのは論外だ。
 此処は国連管轄区だがれっきとしたソ連の領土であり、ソ連とは社会主義で秘密主義な国だ。 さっきの中佐殿のようにおっかない人が犇めいているに違い無い。
 そんな誇張した思い込みを胸に、周囲に目を向ける事無く通用路を早足で進む隆だったが・・・・・・

 ―――彼はいつだって、物事の渦中に巻き込まれる運命にある。

「―――止まれ」

 不意に横手から投げ掛けられた言葉。 それが自分に向けられたものだと最初は気付かなかったが、隆は刺すような視線を感じて歩調を緩め、ゆっくりと顔をそちらへ向ける。
 薄暗い通用路の奥、街灯の灯りがギリギリ届く場所に一人の女性が立っていた。

(―――はて?)

 女性の姿を見た瞬間、隆の脳裏に疑問が過ぎる。
 見覚えがある女性だ。
 つい先日、震えながら地面に座り込んでいた女性なのだが、今は刺すような視線と剣呑な雰囲気を全身から醸し出しており、一瞬同じ女性とは思えなかった。

「ああ・・・・・・ ブリッジス少尉の彼女さん」

 殺気、のようなものを肌で感じながらも、そう呟く隆。
 言った直後、再び彼は自分の迂闊さを呪い、その言葉を耳にした女性が露骨に眉根を寄せたのを見て、更に後悔した。
 よく分からないけど殺されるかもな~ と、隆が額に冷や汗を流しながら考えていると、女性はゆっくりと彼に近づきながら口を開いた。

「意味が良くわからない・・・・・・ ブリッジスの彼女とはどう言う意味だ?」

 怒りで眉根を寄せたのではなく、言葉の意味を理解出来なくて顰めっ面をしたようだ。
 それを察した隆はがっくりと肩を落とし、国によって言葉の言い回しに違いがあるもんだと、改めて実感した。

「―――いや、なんでもない。 ・・・・・・もう大丈夫なのか?」

「なにがだ?」

「なにがって・・・・・・・・・ まぁ見た感じ、大丈夫っぽいから別にいいけど」

 ジャール隊の年少兵に絡まれ、震えるほど怯えていたはずなのだが、今の女性の立ち振る舞いにあの時の脆さは見受けられない。
 克服したのか、それとも強がっているだけなのか・・・・・・きっとそのどちらかなのだろうと隆は考え、女性に感じた違和感を脳裏から締め出した。

(ふむ、先日も思ったけど・・・・・・ やっぱり何処と無く霞に似てるな)

 近づいてくる女性を眺めながら、記憶にある義妹の姿と女性の姿を比べる隆。
 年齢、体格、髪や瞳の色等、外見的な霞との類似点は少ないのだが、雰囲気・・・・・・が良く似ていると隆は思った。

(本人は意味が理解できなかったっぽいけど、あの様子を見る限り間違いなくブリッジスといい仲だよなぁ・・・・・・・・・ 霞と似てる女の子かブリッジスといい仲・・・・・・ なんだ・・・・・・この言いようのない不安感は)

 先ほどとは違った意味で額に冷や汗が流れる。
 それは俗に言う、娘を何処かの馬の骨に掠め取られるお父さんの心境に近いものがあるのだが、隆は目の前の女性は霞とは別人だと自分に言い聞かせて雑念を振り払った。

「ブリッジスには後で嫌がらせを・・・・・・ゲフンゲフン それで、少尉は俺に何か用でもあるのかな?」

 大人気ない本音を少しだけ漏らしながら、女性が纏うフライトジャケットの襟に光る階級章を目ざとく見つける隆。

「―――いや、私は貴様に用件など無い」

「―――あっそう。 ・・・・・・なんだんだ? ブリッジスと言いこの子といい、試験小隊の連中は揃いも揃って口の聞き方がなってないぞ・・・・・・・・・俺が言えた義理じゃないが、これで問題にならないのか?」

 っと、昨今の若者の無礼さにブツブツと文句を言っていると、鈴が鳴っているような声音が女性の背後から聞こえてくる。

「―――クリスカ、わたしがはなしてもだいじょうぶ?」

「―――本当にこの人なのか? イーニァが言う、サングラスを掛けた東洋人はこの人しか見つけられなかったけど・・・・・・」

「うん、このひとだよ。 しんぱいしないでクリスカ」

「・・・・・・わかった」

 渋々と言った様子で女性が頷き体を横にどけると、その背後にいた少女の姿が隆の視界に入ってくる。

「ッ!!」

「こんにちは・・・・・・えっと・・・・・・さんぐらすのひと」

 隆の動揺を他所に、辿々しい口調で挨拶してくる少女。
 最初に話しかけてきた女性よりも幼い容姿を持った少女は、先程よりも深く義妹の姿を連想させた。

「あ、いや・・・・・・ こんにちは」

 一瞬、今度は本当に霞が現れたのかと思った。
 最近霞分が足りてないから禁断症状が出ているのかもなと、笑えない冗談を内心で考えながら取り繕った笑みを浮かべる隆。
 似ている・・・・・・と言ったが、少女もまた霞とは雰囲気が似ているだけで、容姿はそれほど似てはいない。
 特に瞳が、霞とは決定的に違う。
 霞は自分の感情を表すことが苦手だ。 だから自分自身に自信が無いのか、瞳はつねに不安で揺れている。
 だが今目の前にいる少女の瞳から感じ取れるのは、無垢で無邪気な子供のソレ。

(霞よりも・・・・・・マユちゃんに近いのかもな、この子は)

 霞と同じく、久しく会っていない少女のことを思い浮かべていると、

「―――あなたが、おにいちゃんなの?」

 キョトンと隆を見上げながら呟く少女。
 その姿を見て、隆の脳裏にマユと初めて出会った時のことが思い出される。

「―――おにいちゃんか、久しく聞いてなかったな・・・・・・ 確かに俺には妹がいるよ」

 霞やマユのことを考えていたせいで、隆は少女の呟きが持つ意味を正しく理解していなかった。
 だが少女は返ってきた答えに疑問を挟むことはなく、ニッコリと笑みを浮かべて言葉を続けた。

「うん、やさしいおにいちゃんなんだね、さんぐらすのひとは」

「さて・・・・・・どうだろう。 優しさと甘さは違うから、俺が優しいお兄ちゃんなのかは自身を持っては言えないな・・・・・・ 未だに霞との約束も守れてないし」

「やくそく? やくそくはまもらないとだめだよ?」

「そうだね、後でちゃんと謝っておかないと・・・・・・ それで? 君は俺に何か用でもあるのかな?」

 コチラから聞かないと何時まで経っても本題に入らない。 そう判断した隆は苦笑しながら少女に問いかけると、少女は何かを思い出したのような顔を見せた後、ペコリと一礼して感謝の言葉を隆に告げた。

「こないだはありがとう、さんぐらすのひと」

「いや、知り合いってほど知り合いでもないが・・・・・・知人が迷惑を掛けてるのを止めただけだから、礼を言われる必要はないんだけど・・・・・・ そのサングラスの人っての、止めてくれないか? 一応、俺には社隆って名前があるんだ」

「??? さんぐらすのひとはおにいちゃんじゃないの?」

「えっと・・・・・・ 君からも言ってくれないか?」

 隆は不思議そうに自分を見上げる少女に困り果て、少女の背後で沈黙し続けていた女性へ思わず助けを求めてしまう。
 無邪気な少女と違い、鋭い目付きで隆を警戒していた女性は、その姿勢を崩さずそっと少女に声を掛けた。

「イーニァ、サングラスは人の名前じゃないのよ。 おにいちゃんって言葉も個体識別用の名称とは違うから」

「でも、マユはおにいちゃんっていってたよ? ちがうの?」

「―――マユ? 君たちはマユちゃんと知り合いなのか?」

 少女の口から零れ出た言葉に口を挟んでしまう隆。

「うん、マユとわたしはともだち。 クリスカとおねえちゃんもともだち・・・・・・そうだよね?」

「・・・・・・え、ええ、そうねイーニァ」

 あっさりと肯定し、同意を求める少女の言葉に女性は何故か狼狽した様子で頷いていた。
 どうやら試験小隊同士で横の繋がりがあるようだ。 笑みを浮かべる少女の姿から、彼女たちとXFJ計画の連中の仲は良好なのだろうと隆は想像した。
 それならば、ブリッジスと女性の仲も納得出来る。
 この世界において微妙な関係にあるアメリカとソ連。 その両国にそれぞれ所属している衛士が好い仲になるのは中々難しいだろうなと思っていたが、周囲が良好な関係を気付いているのであればそれも不可能な話でもないだろう。
 当初は、ハリウッド映画ばりに悲運な運命に翻弄されるカップルか、007のように女性を手玉にとる・・・・・・もとい、手玉にとられるブリッジスの姿を想像してしまったのだが、よく考えなくても彼にそこまでの甲斐性があるとは到底思えない。

「―――タカシってよべばいいの?」

「ん? あ、ああ、そうだ。 好きに呼んでくれてかまわないけど、俺も君たちも立場ってのがあるからその辺を考えて呼んでくれよな?」

「うん、わかったよタカシ」

 ―――この子絶対に分かってない。
 確信めいた事実を胸にしまい込み、隆は肩を竦めながら二人を見比べる。

「それで、君たちの名前は?」

「何故、貴様に名乗る必要がある」

(言葉のキャッチボールって難しい!! 文化が違うと余計に!!)

 質問を一蹴されて、軽いカルチャーショックを覚える。
 少女とも話が通じなかったが、憮然とした面持ちで相変わらず警戒色を色濃く見せてる女性とも会話が成り立たないようだ。

「―――わたしはイーニァ、イーニァ・シェスチナだよ」

 とは言え、少女・・・・・・イーニァには隆の意図は伝わったようだ。 
 答えてくれた少女に安堵の笑みを向けていると、女性も不満そうにしながらも名乗りを上げてくれた。

「―――クリスカだ・・・・・・ クリスカ・ビャーチェノワだ」

 教えてくれた二人の名前だったが、それを聞いた隆の胸中にふとした疑問が湧き上がる。
 他国の人間の名前を覚えたり発音したりするのが苦手な彼だが、二人の名前が何処と無く他のソ連の人間とは違うような気がしたのだ。
 うまく言葉には出来無い。 例えば、言葉そのものに意味があるような印象を持ったのだが、余計なことを口走って相手の機嫌・・・・・・特にクリスカの機嫌を損ねるのは得策ではないと察した隆は、その疑問を口にすること無く、他の話題を二人に振った。

「いい名前だな。 それで? わざわざ先日の礼を言うために二人は俺を探してたのか?」

「そうだよ、タカシにおれいがいいたかったの」

「貴様にそう言えと言われたから探したまでだ。 党の指示は兎も角、イーニァの頼みがなければ誰か貴様など・・・・・・」

「―――お前さんは、随分と刺のある物言いしかしないんだな? まぁ、さっきも言ったとおり恩を感じる必要は無いけど、それでも言いようってもんがあるんじゃないのか?」

「西側の隷属となった国家の人間へ、私が礼節を払う必要性は皆無だ」

「―――あっそう。 まぁ別に俺は気にしないが・・・・・・ もうちょっと要領良く生きたほうが、人生ってのは楽しいぞ」

「それが党のためになるのであれば、私は喜んでその方法を模索しよう」

 今のが会話として成り立っているのか疑問だが、クリスカと言う女性は先程会話をしたラトロワ中佐よりも愛国心に溢れる軍人なのだろうと隆は判断した。
 だが、その毅然とした彼女の姿に先程締め出した疑問が再燃する。
 愛国心に溢れ自他に厳しい態度を見せる彼女が、どうして先日ジャール隊の年少兵に絡まれただけで震えて座り込んでいたのか?
 人数が多かったから?
 階級が上だったから?
 そんなことで、今尚自分を睨みつけている彼女があんな風になってしまうのだろうか?

(ふむ・・・・・・・・・ なんだ? この違和感は?)

 先日とは別人、なんてオチは流石にないだろう。 
 違和感を感じるが、明確な疑問として言葉にすることが出来無い。
 答えを探すべく思案に耽りそうな隆だったが、それはイーニァの呟きによって阻害されてしまう。

「―――タカシ、おこってるの?」

「へ? ・・・・・・そう見えたか? 別に怒ってないから安心してくれ」

 不安気に眉根を寄せるイーニァの姿から、いつの間にか怒った表情をしていたに違い無い。
 クリスカへの疑問を考えつつ確かに内心では彼女の態度に苛立ちを感じていたが、それは彼女自身に向けたものではなく、そうなってしまった彼女の育った環境に苛立を募らせていたのであり、そんなぶつける場所も無い抽象的な怒りなど考えないようにしていたのだが・・・・・・どうやら無意識の内に表に現れていたようだ。

「おこってないの?」

「ああ、怒ってなんていないよ。 ・・・・・・悪かったな、不安にさせて」

 自分を見上げるイーニァを宥めるべく、隆はその頭を撫でようとした。
 以前、震える霞にしてあげたように、少女が感じる不安を少しでも取り除くために手を伸ばしたのだが・・・・・・

「触るなッ!!」

 その手が、横手から乱暴に弾かれる。
 隆が痛みで顔をしかめている間に、クリスカはイーニァを引き寄せて彼から遠ざけた。
 まるで我が子が危険な相手に狙われた豹のように、明らかに敵意を孕んだ視線を隆に向けるクリスカ。
 イーニァの頭を撫でようとしたことが、彼女の怒りを買ったのだろうか?
 隆が想像した答えはあながちハズレではないのだが、クリスカが警戒した本当の理由は、イーニァを撫でようとした彼の手が、少女が頭につけているヘッドセットらしきモノに触れそうになったからだど、隆が気付くはずがない。

「―――用件は済んだ。 もう貴様と会うこともないだろうが、念のために言っておく。 ・・・・・・二度とイーニァには近づくな」

 しっかりとイーニァを抱きしめながら忠告するクリスカ、隆はその言葉に大きく肩を竦めて溜息をついた。

「そうしたいのは山々だがな・・・・・・君等、ソ連の試験衛士なんだろう? イーダル小隊とか言ったか? 生憎と今度の試験で、ソ連側の部隊と合同で君たちの周辺警護も仰せつかってるんだよ。 君がそう言っても、嫌でもまた会うことになろだろうな」

「ッ!! 貴様のような低俗な人間の助けなど必要ない!!」

「はいはい、だったらその旨を自分の上司にでも言っておいてくれ・・・・・・ 正直、こっちも君のお守りなんて御免被るよ」

 この場に隆を知る人間がいれば、間違いなく今の隆の態度に驚いただろう。
 喜怒哀楽の内、怒りなんて感情とは無縁と言った態度しか見せない彼が、明確に・・・・・・しかも女性に対して苛立を向けているのだ。
 少なからずクリスカに原因があるとしても、それを表に見せるなど何時もの隆ならばあり得ない筈だった。

「今の発言は・・・・・・ 我々への侮辱と受け取ってもいいのだな?」

「好きにしろ。 だが、なれない環境でこっちも疲れてるんだ・・・・・・面倒はこれ以上増やさないでくれ」

 冷淡に目を細めるクリスカへ剣呑な態度で持って返答する隆。
 まさに一触即発の事態になるかに見えた両者だったが、その緊張はあっさりと破られることになる。

「だめだよふたりとも。 けんかはだめだよ・・・・・・なかよくして」

 消え入るような声音で静止を促すイーニァ。 二人はその声を耳にしてはいたが、険悪な雰囲気を崩すつもりは無かった。

 ―――が、

「おい、アンタ、こんなところで何してるんだ?」

 隆を見かけた別の少女が一人、訝しげな顔をしながら彼にそう声を掛けた。
 その声にクリスカへの注意を逸らされ自分を呼ぶほうへ隆が目を向ければ、ナスターシャを初めとするジャール隊の面々がポカンッと口を開けて通用路に佇んでいた。

「お~この前のグラサンの兄ちゃんじゃん。 中佐に呼び出されたって聞いてたけど、もう終わったのか?」

「なぁなぁ、こないだのアメダマって奴、もうないのか? 貰った分、部隊の皆で食ったらあっという間に無くなっちまってさぁ」

「暇してるなら私等と遊ぼうよ~ 良い事してあげるからさ♪」

 などと、思い思いの言葉を吐きながら隆に近寄ってくる年少兵たちだったが、クリスカとイーニァの姿を確認した瞬間、それまで浮かべていた友好的な笑みを消し去り露骨に顔を歪めた。

「ちッ!! 中央のエリートさん達かよ・・・・・・おい兄ちゃん、まさかコイツらと乳繰り合って・・・・・・ る、雰囲気じゃなさそうだな」

「喧嘩でも売られてるのかい? いいぜ、あたしらが手助けしてやるよ」

「フザケやがって。 俺らだけじゃ飽きたらず、他の国の連中にまで威張り腐った態度を見せてんのかよ?」

「―――どうした? 何か揉め事でもあったのか?」

 敵意を剥き出しにする年少兵の中にあっても、やはりナスターシャは別格と言うべきか。 大尉の階級を持つ少女は、落ち着いた口調で隆へそう聞いた。

「―――何でもない、気にするな」

 彼らの登場ですっかり毒気を抜かれてしまった隆は苦笑しながらそう答え、クリスカとイーニァに一瞥を送った後に背を向けた。

「ま、お互い自分の仕事だけはきっちりやるとしよう。 ―――そうすれば、余計な干渉をせずに済むからな」

「当然だ、私達にミスなどあり得ない」

 しっかりと返ってきた返答に 「そりゃ結構」 と答え、隆はジャール隊の面々に視線を向ける。
 明らかに不満そうな彼らの姿に内心で嘆息し、ラトロワ中佐に忠告されたにも関わらず、今回もまたこの子供たちを宥めなければならない自分の身の上を呪った。
 
「やれやれ、忠告されたのにもうコレか・・・・・・ ソ連にいる間は、管制ユニットの中にでも引き篭ってるべきなのかね」

「?? なんの話だ?」

「こっちの話だ。 ・・・・・・何時までも睨んでるな。 ほら、行くぞお前ら」

 クリスカ達を尚も睨みつける彼らを促し、隆は居心地の悪くなったその場から立ち去ろうとする。
 素直に礼を言ってくれたイーニァには悪いことをしたと思っているが、心の奥底で燻っていたナニかに火が付いてしまった以上、ああ言った物言いしか出来なかった。
 出来ればマユと友達だと言ったイーニァには、機会があれば霞とも友達になって欲しかったが・・・・・・それは無理な話だろう。

「―――タカシ」

 もう会話は終わったはずだが、不意にそう呼び止められて振り向くと、クリスカに抱き締めながらもイーニァが必死に口を開いていた。

「わたし、ともだちになりたい」

「・・・・・・?」

「ともだちはおおいほうがたのしいってマユがいってたの。 だからわたし、ともだちがほしい」

 不明瞭な少女の言葉に隆が首を傾げていると、彼と一緒にその場を立ち去ろうとしたジャール隊の面々が、顔を歪めて口々につぶやき始める。

「―――何言ってんだ、アイツ?」

「―――頭おかしいんじゃね?」

「―――はッ、友達なんかより、お前たちには色々良くしてくれる連中がたくさんいるだろ?」

「―――それこそおもちゃの世話から、下の世話までな」

「―――おいおい、それはむしろコイツらが媚びうるためにやってんだろ?」

 そんな卑下た言葉を耳にしながら、隆の脳裏に一つの想像がよぎるが・・・・・・馬鹿らしい考えだと鼻で笑い、思考からその可能性を追いやった。
 世の中、そうそう特別な力を持った人間がいるわけない。 イーニァの雰囲気が霞に似ていたから、そんな突拍子も無い想像をしてしまったのだと。

「おい、くだらないことをペラペラ話すな。 ―――幾らお前たちでも、聞いてて気分が悪い」

「なッ!? なんだよ・・・・・・別のアンタに言ってるわけじゃないのに・・・・・・」

「それでもだ。 あの二人の味方をするわけじゃないが、吠えたところで現状は変わらん。 自分たちが子供じゃないと言い張るなら、場当たり的な怒りなんざ我慢しろ」

 言い聞かせるように周囲の年少兵にそう言った隆は、浴びせられた罵倒に怯えてしまったイーニァへ苦笑しながら答えた。

「あ~~~ マユちゃんがそう言うんじゃ仕方ないな・・・・・・ そこのおっかないお姉ちゃんがいない時にでも遊ぼうな、イーニャちゃん」

「クリスカはこわくないよ、こわいのはマユのおねえちゃん・・・・・・・・・ それにわたしのなまえはイーニァだよ」

「ぬぁ・・・・・・ ごめん」

 頬を膨らませて訂正してきたイーニァに謝りながら、隆はやっぱりロシアな人の名前は発音し難と思い、更にイーニァを抱きしめるクリスカの殺気(?)が倍増した気がしたので、イーニァに手を振り早足でその場を後にした。

 通用路を抜け車両が走行する舗装路に出ると、目の前を一台の高機動車が通りすぎていく。
 その車両に見知った顔が乗っていると気づいた直後、高機動車はスキール音を上げながら停車し、乗っていたブリッジス少尉が、自分が歩いてきたのとは別の通用路を走っていく。
 
(―――何やってんだアイツ?)

 その姿に、ふとした疑問を感じた直後、

「ったくよぉ、なんなんだよアイツら・・・・・・ エリート様ってのは言葉からして通じないもんなのかよ」

「もぅ、いいよ。 なんだかアイツら気持ち悪いし・・・・・・ ちょっかい掛けるの止めようよ」

 自分の後を付いてきたのか、ジャール隊の年少兵がそうブツブツ言いながら通用路から出てくる。

「―――大丈夫か、アンタ?」

 そんな彼らの先頭を歩くナスターシャが、眉根を寄せながらそう言って隆を見上げる。

「ああ、なんだか自分でも変な感じだったが大丈夫だ・・・・・・ なんだナスターシャ? 俺のこと心配してくれるのか?」

「はッ、誰が心配するかよ」

 と、鼻を鳴らして一蹴するナスターシャだが、浮かべる表情には何処か陰りがあった。

「・・・・・・ん? 何か俺に言いたいことでもあるのか?」

 それに気づいた隆は少女へそう促すが、ナスターシャは 「・・・・・・別に」 とだけ言ってそっぽ向いてしまう。

「別に、じゃない。 はっきり言えよ? お前らしくないなぁ」

「・・・・・・なら・・・・・・教えろ」

「何をだ?」

「―――ラトロワ中佐と、何を話してたんだ?」

 何を言うのかと思いきや、ナスターシャはそんな不可解な質問を隆へ投げかけた。
 質問の意図が理解できず首を傾げる隆だが、ナスターシャを初めとするジャール隊の年少兵が皆、自分を見ていることに気付いて更に首を傾げる。
 だが、彼らの瞳が不安で揺れていることに気づき、隆は彼らの言いたいことと何となく察しって問いに答えた。

「―――心配してたぞ、お前たちのこと」

 その返答に目を見開く子供たち。
 ―――そう、子供たちだ。
 自分たちの母親が、何処の馬の骨とも分からない男をわざわざ名指しで呼び出した。
 そう考えてしまい、きっと不安だったのだろう。

「そ、そっか・・・・・・ 中佐が私達のことを」

「なんだよ~ 中佐まで俺達を子供扱いかよ~ 情けねぇな、オイ」

「はいはい。 そのニヤケ顔をどうにかしてから吠えな、マザコン」

「あぁん!? 犯られてぇのかてめぇ!!」

「事実でしょ? 男ってのはコレだから嫌よねぇ・・・・・・ 中佐にそんな気苦労をさせてるんだから、もっと自分を恥じなさいよ」

「ぬぐッ!! ・・・・・・ちッ、わかってるよ、んなこと」

 隆の返答の内容に満足したのか、会話の内用はさておき、子供らしい無邪気な笑みを浮かべて口々に騒ぎ立てる年少兵たち。
 そんな彼らの姿を、隆は心から笑って見ることが出来なかった。
 イーニァもこの子たちも、成長すればクリスカのような人間になってしまうのだろうか?
 人間らしい何かを捨て、全てを国に捧げた人形のような人になってしまうのだろうか?
 漸く、隆は自分の中にあった小さな違和感に気づいた。
 霞にとってこの国は祖国なのだろうが、隆はこのソ連と言う国を好きになれそうにない。
 平和な日本で、極々普通に生きてきた隆にとって、この世界においてのソ連は余りにも歪に、そして異質に見えた。
 価値観が違う。 この世界に染まるとかではなく、根本的な価値観が自分とこの国の人間は違うのだ。

(―――ほんと・・・・・・ 嫌な世界だ)

 この世界に来てからもう幾度無く呟いた言葉を、隆は目の間にいる子供たちや先程会った二人の少女を思い返しながら、静かに内心で呟いた。







 ▽
 カムチャッキー基地・某所

 様々な計測機器が並ぶ薄暗い室内。
 白衣を来た科学者と思しき人間たちが、モニターに表示される様々なデータの変化に目を懲らしている。

「結果は良好です。 アラスカで観測した時ほどではありませんが・・・・・・ 300番の神経パルスに変化が見られました」

 興奮した様子で研究員の一人が、科学者が犇めく室内で異彩を放つ人物にそう報告する。

「―――そうか」

 鋭い眼光と独特のオーラを持ったその男は、研究員の報告にそう短く答えた。
 ―――男、ソ連軍イーダル試験部隊を率いるイェジー・サンダーク中尉は、科学者から受け取った書類に目を通し、その良好な結果とやらを忌々しげに眺めた。
 科学者が言うとおり喜ばしい結果なのだが、両手を振って受け入れるほど今回の指令に彼は納得などしていない。
 上層部が突如として接触を促した対象。 それが、自分たちが入念に調べ上げた米国人では無く、今回のソ連派兵に偶然居合わせた日本人の衛士だと言うことで、サンダークは上層部に強い不信感を抱いていた。
 確かに以前から、不可解な命令は幾つもあった。
 アラスカにて受けた指令の一つ。 日本側の研究機関、第参開発局とか言う部署に所属している数人と接触させること。
 あの指示が全ての始まりだった。 あの指示に従い、二人をあの連中と接触させてから・・・・・・何かが狂い始めたとサンダークは確信していた。
 だがそれが分かっていっても、自身が中央から与えた権限は部隊の運用だけであり、計画責任者としての権限までは有していないことから、何の手段も抗じることが出来ずにいた。
 中央の信頼を得られるような実績を挙げれば話は別だろうが、未だあの二人はその機会が得られる戦場を与えらていない。
 今回、祖国の大地で行われる試験こそが、計画の有意義性を中央に知らしめる絶好の機会だったのだが・・・・・・

「・・・・・・日本を侮りすぎたか」

 ポツリと漏らしたサンダークの呟きは、データに釘づけとなっている科学者たちの耳に入ることはなかった。
 先日のブリーフィングにて知らされた日本帝国軍が用意した試作兵器。
 スペック表通りの性能を発揮するかは未知数だが、アレがその性能を予定通りに振るえば・・・・・・ 舞台の照明は間違いなく彼らを照らすことになるだろう。
 レールガンなどと言う兵器を、実戦で使用出来る段階にまで開発した日本側の技術力は賞賛に値するが、今回ばかりはコチラの計画の障害となる可能性が高い。
 何か、何がしかの実績を今回の試験で挙げなければ、今後の進退に悪影響を及ぼすと彼は確信していた。

「・・・・・・・・・・・・」

 無言で、自身の胸ポケットに入っているメモリースティックの重さを確認する。
 つい先日、見ず知らずの東洋人が突然渡してきた代物だ。
 凡そ信頼に足るものでは無く信憑性に乏しい情報が中に記録されていたが、もしこの情報が事実であれば、使いようによっては自身にこの上無い利益を齎すものだった。
 この情報を信じるか、それとももっと別の手を打つべきか。
 サンダークは思考する。 自身にとって、党にとって、最良の結果とは一体何か?
 幸い、受け取ったデータを吟味する時間はまだ残されてる。


 彼はその鉄面皮の下、慎重に、それでいて狡猾に、今後のことを静かに考え続けた・・・・・・・・・







 ▽
 同日 国連太平洋方面第11軍横浜基地・副司令執務室

「―――まさか、ソチラからご連絡頂けるとは思ってもおりませんでしたわ」

 外線を受け取った夕呼が発した声音には、彼女にしては珍しく緊張感が漂っていた。
 受話器越し、数千キロも離れている相手にそのような態度をとったところで無意味なのだが、微笑を浮かべ、余裕を含ませた態度で椅子に深く座り込む夕呼。
 何時もとはやや違う夕呼の態度に気付いた霞は、作業をしていた手を止めて夕呼へ視線を向ける。

「―――ええ、お噂は兼ね兼ね。 素晴らしい研究を幾つもなさっていると」

 相手が誰なのか、それは霞には分からない。
 秘書官であるイリーナが受け取り、怪訝に思いながらも夕呼に繋いだ電話の主は、霞にとっても無関係な相手では無いのだが、声も姿も見えない以上、霞が相手を推察する術は何も無い。
 リーディングによる対象の思考知覚、と言う術はあるのだが、生憎と夕呼にはソレが通用しない。
 だから霞はそれ以上考えるのを止めて、夕呼に頼まれた仕事を続けることにした。
 少なくも夕呼の声の調子から見て、相手は霞が待ち望んでいる相手とは違うようだから。 
 
「―――お褒め頂き光栄ですわ。 ですが私の構想など、ソチラから流出した技術が無ければ実現不可能な部分が多々ありましたので、コチラこそ何時かは礼を差し上げなければと思っておりました」

 兄に対して、夕呼があんな口調で話すはずがない。
 態度や言葉こそいつも通り尊大な振る舞いを見せる夕呼だが、兄と接した時だけソレはほんの少しばかり影を潜めている。
 それが、甘さなのか優しさなのか、それとも秘密を持っているがゆえの共感から来るモノなのかは霞には分からない。
 だがそれでも、兄の存在が自分だけでなく、彼女にとっても救いになっているような気がする。
 感情、というものを兄によって少しばかり得た霞は、素直にそう思うことが出来た。

(―――でも、連絡が無いのは・・・・・・少し、残念です)

 以前と違い、遙や水月、それに伊隅やまりもが暇を見つけては相手をしてくれる。
 それもこれも兄が皆と引き合わせてくれたからだと自覚はしているが、その当の本人がもう半年近くもいないことを許す理由にはならない。
 先日、赴任先のソ連から連絡をくれたようだが、時間が遅すぎたために出ることが出来なかった。 
 出れなかったことを残念と思うよりも、何故前もってこの日に連絡すると伝えてくれなかったのだろうか?

 ―――教えてくれていれば、待っていたと言うのに。

「―――ソレを信じろと仰る? 噂には聞いておりましたが、随分とユニークな方ですわね」

 苦笑混じりの夕呼の声を耳にして、霞は没頭しかけていた思考を中断する。
 兄と知り合って、感情と言うものを知ってしまったのは喜ぶべきなのだろうが、時々ソレが作業効率を著しく阻害する要因になっている。
 夕呼はソレを注意しつつも歓迎しているようだが、霞自身は自分の不甲斐なさを恥じる機会が多い。
 不甲斐なく感じること自体、霞が成長している証の一つでもあるのだが、当の本人はソレに全く気付いていない。
 再び作業に集中しようとする霞だが、一度考えてしまったことを思考から押し出すことは容易では無い。
 しかもそれは、一番気にかけている兄に関するものなのだ。 幾ら理性的に考えても、霞の頭の中は以前から考えていた兄への不満で一杯になってしまった。

(・・・・・・一緒に思い出を作る。 そう言ってくれたのは嘘だったんでしょうか?)
 
 兄が嘘を付くはずがない。 それは分かっているのだが、霞はそんなちょっとした不満を兄へ伝えたくて仕方がなかった。
 まるで年頃の少女が兄へ我侭を言って困らせる・・・・・・のとはちょっと違うかもしれないが、自分を何時までも待たせている兄へ何か出来ないかと彼女が考えていると、

「―――ええ、面白い男なのに違いありません。 しかし何を勘ぐっているが存じませんが、彼は 【社隆】 です。 妹思いの風変わりな衛士、その事実しか彼にはありませんわ」

 兄の名前が夕呼の口から漏れたことで、霞の意識は再び夕呼へと向けられる。

「―――私としても優秀な手駒の一つを何処かに差し出すようなマネは致しませんわ。 帝国軍への派遣が終わり次第、光菱へ出向させる予定はありますが・・・・・・それも確定ではありませんので。 ・・・・・・ソチラへ? それは無理な話です・・・・・・それ相応の見返りがあるのでしたら話は別ですが」

 夕呼が座る、デューロン社のハイバックチェア (先日、デンマーク王国より親善の品として送られてきた) が軋む音が静かな室内に響き渡る。

「―――荒唐無稽な話に付き合う時間はありません。 連中の思考は読み取れ無い、それは計画の一部に携わったあなた方にも周知の事実・・・・・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・・・・なるほど、意図的なものであれば確かに可能性はゼロではありませんが・・・・・・・・・・・・」

 それまで夕呼が浮かべていた笑みが、次第に忌々しげなものへと変わっていく。

「―――流石はかの国と言うべきでしょうか? 確証の無いお話でしたが、そうなる可能性を全て否定することは出来ませんわね。 ・・・・・・・・・しかし、今の話を私に聞かせるあたり、責任の一端が私にあると仰りたいのですか?」

 刺を含む夕呼の質問に対して、受話器の向こうの相手が大きく笑い声を上げたのが霞にも分かった。
 夕呼の口調と忌々しげな態度から、霞は受話器越しの相手が情報省の鎧衣課長ではないかと思っていたが、 彼女が耳に当てていた受話器を離すほど大きな声量で笑うような真似を彼がするはずが無いと思い、その考えを改めた。

「―――見返りの一つがソレですか・・・・・・どうやら、あまり私にとって益のあるお話では無いようで。 私としては別段アレがどうなろうと関知致しませんので。 そちらで・・・・・・・・・・・・ええ、好きにやって頂いて結構ですわ」

 誰・・・・・・なのだろうか?
 霞は夕呼が接する人物の全てを知る訳ではないが、それでも彼女の仕事を補佐する傍らで、多くの人物を見てきた。
 彼女が進めている計画の進捗状況を憂慮する人物であっても、その殆どは謙った態度を見せ、彼女を不快にさせるようなことはしなかったのだが、今会話をしている相手はその範例に当て嵌らない。

「―――お話はわかりました。 有意義・・・・・・とは素直に思えませんが、アナタの人となりが垣間見えましたので、この会話が無意味だったとは思わないでおきます。 それに教えて頂いた話が真実であれば、今後のお付き合いも考えますが・・・・・・・・・いえ、それには及びませんわ。 直接お会いするのは・・・・・・・運命・・・・・・いえ、【因果】 の巡り合わせに期待するとしましょう。 で、なければ会った瞬間に口から何が飛び出すかわかりませんから」

 それは彼女が持つ尊大さか、それとも無け無しの矜持なのか、微少を浮かべてそう締め括った夕呼は静かに受話器を置いた。
 受話器を置いた後、暫く何かを考えるかのように沈黙していた彼女だったが 「はッ」 っと鼻を鳴らすような声を漏らし、椅子に深くもたれ掛かって天井を見上げる。

「―――やってくれるわ、漸く尻尾を掴んだと思ったら先手を打ってくるなんて・・・・・・・・・全部向こうの計算通りってことなのかしら・・・・・・・・・・・・癪な話ね、ほんと」

 静かな口調ではあるものの、その声音にははっきりと怒りが含まれていた。
 それを敏感に感じ取ってしまった霞は、怯えるウサギのように震えていたのだが、目ざとくそれを見つけた夕呼はその姿に何かを思うところを見つけたらしく、ポツリと軽い口調で霞へ声を掛けた。

「―――霞」

 そう声を掛けつつ、自分が霞を 【社】 と呼ばなくなったのは何時からだろうと考える。
 はっきりとは覚えていないが、きっと隆の名前を 【社】 にした時から、霞を霞と呼んでいるような気がした。

「は、はい」

 小さな声で答え、椅子から立ち上がる霞。
 彼女の頭の中は、何通りもの夕呼ゴマすり案 (隆直伝) が並んでおり、果たして自分にソレが上手く実行出来るかどうかのことで一杯になっていた。
 だから気付かなかった、夕呼が浮かべる意地の悪そうな笑みに。

「―――隆ね、もう戻ってこないかもしれないわ」

 その笑みは一瞬だけであり、言葉に驚いた霞が夕呼を直視した瞬間には、彼女は生真面目な表情を作っていた。

「―――兄さんが・・・・・・帰ってこないんですか?」

「―――その可能性もあるわ。 覚悟・・・・・・だけはしておきなさい。 貴女も隆も元々は違うかもしれないけど今は軍属なのだから、身内が無事に戦場から帰るなんて奇跡がそうそう続かないってことにね」

 呆けたように呟く霞に夕呼はそう言い放ち、椅子を回して背を向ける。
 憂さ晴らしの意味も含めて霞に呟いた夕呼だが、その心境は言った直後で大きく様変わりしていた。
 自分が霞に求めていたものが当初と大きくかけ離れたものになりつつある。
 オルタⅢの遺児をオルタ計画責任者の権限を用いて手元に起き、彼女が持つ特殊能力を研究し、00ユニットの開発に尽力することを求めたはずが、今では計画が一向に進んでいないのにも関わらず、少女の反応を見て楽しんでいる自分がいる。
 気まぐれ・・・・・・ならばいい。 だが、甘えや執着に結びつくのであれば、霞に接する態度をコレを機に構築し直す必要があると彼女は考えた。

 作られた命であり、漸く感情というものを理解し始めた少女は、夕呼の言葉によって自分の考えに根本的な間違いがあったことに気付いた。
 突然現れ、特殊な自身の境遇も気にせずに、優しさを与えてくれた兄。
 一緒に過ごした期間は短いものだったが、密度の濃い日常を経験させてくれた兄。
 帝国軍へ派遣されたせいで時々しか会えなくなってしまったが、お土産を持って帰ってきてくれる兄。
 いつの間にか自分にとって欠くことの出来無い存在になってしまった兄。
 その兄が何時も何時も無事で帰って来てくれるとは限らないことに・・・・・・・・・ 兄が帰ってこない可能性など、一度足りとも少女は考えたことが無かったのだが、夕呼の言葉でその未来を想像してしまった。。


 奇しくもこの時、夕呼が口にした言葉はやがて現実のものとなる。
 この時、わざわざ連絡をしてきた相手の言葉を夕呼が信じ、何かしかの手を打てば未来は変えられたかもしれない。
 だが運命は、因果と言う呪縛は、どのような手を打ったとしても往々にして様々な結果を生み出す。
 それが幸運か、それとも不幸かは・・・・・・結果に辿りつくまで誰にも知ることは出来無い。

 逃れられない因果に囚われた少女の兄は、遠く離れた少女の祖国で、ゆっくりと・・・・・・だが確実に世界の歪みに巻き込まれることになる。







 ―――幸運と不幸が誰に降り注ぐかは、まだ誰も分からない。










*Edit ▽TB[0]▽CO[28]   

~ Comment ~

ソ連編5話のあとがき 

いつも拙作を読んでくださる皆様、ほんとうにありがとうございます。
今度からココにあとがきを書くことにしました、作者のDONです。

今回はちょっと長くてクドイ内容だったと思いますので、皆様が消化不良になってないか不安だったりします。
それと、作中でユウヤとクリスカの扱いが不当だと思われる方がいらっしゃったと思いますが、隆(現代人)や真奈美(帝国軍人)から見た二人のイメージはあんな感じだと想像して書かせて頂きました。
TE本編で似たようなシーンになれば、言い回しや雰囲気がもっと険悪になったような気がしますが・・・・・・ご不快に思われた方、誠に申し訳ございませんが、本作の独自解釈ですのでご容赦ください。

TE本編の流れを阻害したくは無いのですが、書いているとだんだん怪しい雰囲気に・・・・・・果たして皆さんが納得できるソ連編を書けるか不安になってきました。
ああ、それと今回ソ連の崩壊~みたいなことを書きましたが、妹が持っていた近代史の教科書から抜粋しまくって書いたので、間違っていたら申し訳ありませんorz

では、次回は書き溜めていた設定やら何やらを放出する予定ですので、本編の続きは今暫くお待ちくださいませ。

NoTitle 

おつかれさまですー^^

なんか不穏な空気ですね。
妹の所に帰ってこれない隆はもげてしまへ

NoTitle 

最新話読みました。なんという盛大な死亡フラグ、ていうか、隆はもう帰ってこない=霞の兄妹のほのぼの(隆の奇行は記憶から削除)日常とお土産イベントはもう楽しめないのか。ハッ、まさか、隆の最後の土産は、いsh・・・げふん、げふん。ああ、ネタ予想はしてはいけないのでしたね。

まぁ、なんだかんだで「運が良い」隆は大丈夫でしょう、なにより主じn(pan。
まぁ、グラサンはともかく霞が素で心配ですなぁ。情緒不安とかにならなければいいのですが。
それでは、次回話楽しみにしております。
PS、暑い日常が続いておりますが、脱水症状や体調を崩さないようお気をつけください。
   ああ、それと、これはロシアにいるグラサンへの私信ですが、ロシアの海水浴場でロバがパラセーリングされてたら救助するようお願いします。(暑さで奇行に走るロシア人、ニューズウィーク)

NoTitle 

今回も楽しませていただきました。
隆とジャール大隊の少年少女とのシーンは読んでてとても穏やかな気持ちになりますね。ですが
>―――幸運と不幸が誰に降り注ぐかは、まだ誰も分からない。

というのを見て、TE本編のようにジャール大隊全滅とかメインキャラのうちの誰かが逝たりするのか、と考えるとちょっと悲しい気がしてきますね。
できるのならそういう描写は見たくないですが戦争中ですし仕方ないんですかねぇ・・・・。
まぁ、何より見たくないのは霞の悲しむ描写なんですがねw

これからも頑張ってください!長文失礼しました!!

NoTitle 

お待ちしておりました…が、何やらひっじょーに嫌な予感がします。
無事で戻れよグラサン、もげろが言えなくなるからな…

NoTitle 

最新話、読みました。

なんか、重いですね。

無事に帰って来ることを望まずにいられません。

で、今回の指摘。

knowがnowになってます。

NoTitle 

本命更新ktkr!

まずは誤字報告。
ステラ・ブレーメン→ステラ・ブレーメル

 隆さん、ソ連の上層部から目をつけられてますね。ラトロワ中佐からは別の意味で目をつけられましたが。
 にしても、やはりユウy…もとい、合衆国の人間は総じて気に食いませんねぇ。G弾を落としておいて、不知火の皮を被った米軍機を、これで日本人も満足してくれるだろうと思い込んで開発している。何よりあの態度。あんな上から目線の言動では、帝国臣民であるマナちゃん(緑の悪魔に非ず)には反米感情を強く刺激されてあの反応を返されても仕方のない事だと思います。
 紅の姉妹と隆さんが接触しましたが、案の定イーニァに対してクリスカバリアが展開しております様で。確かに護ってあげなきゃいけないのは解りますが、あそこまで過保護な上に助けてくれた他人を一切信用しようとせず、加えて見下しきった言動。あれでは隆さんがイラつくのも理解できます。良くも悪くも平和な現代日本の出身ですし。
 ところかわって横浜基地。何やら不穏な空気が漂ってますね…隆さんには生きて帰ってきて欲しいです。五体満足で。

NoTitle 

更新お疲れ様ですDON総統代行殿!
今回は隆帰らずの予告編!?
…隆が霞に残したものは思い出だけと言う事にならなければ良いのですが。
隆よ、君は悪運だけは良いのだな…ピンチになってもギリギリのラインで潜り抜けますから、今回の死亡フラグも何とかなるはずだ。
ジャールとの交流を止められない隆君…年少兵達との場面はほのぼのとして好きですが死亡フラグですね。
父親のような心境って…隆君、自重しないと霞がお嫁にいけなくなってしまいますよw

P.S 薄暗い部屋の中に男が無線機と向かい合っている。
「此方SS第3小隊からSS指揮官へ、警護対象暗殺を目論んでいたイワンDの始末を完遂せり」
「SS指揮官了解、SS第3小隊へ次の目標はHだ…こいつは警告と見せしめの為に派手に始末しておけ」
「了解」
無線機を切った男は自身の義手を見つめながら虚空に向って呟く。
「全ては幼少よりお守りしてきた姫様達の幸せのため…我等闇の住人に笑顔を向けて頂いた姫様達のために」

NoTitle 

更新お疲れ様です。
色々人間関係が複雑になってきましたね。厄介事に巻き込まれやすい隆にとっては、より難易度が増すのですかね・・(^_^;)
最後の隆死亡フラグが気になります。そこは隆がヒロインにでもなって助けられるのか、などと想像したり。
これからも更新頑張ってください。(隆とDONさんの健康を祈って)

NoTitle 

淡々とした文章がなんとも不気味なフラグに……!
何だかジャール隊が気になる今日この頃。
なんか可愛いぞこいつら。
あぁいかんDONさんの文章力せいで自分までロリコンに……!!

NoTitle 

更新お疲れ様です。


>貴様は随分と特殊な性癖を持っているようだな。
ここでも炉利認定か……。

>「「おお、同志ヴァレスキーよ。 失敗したのか、なんと情けない・・・・・・」」
この世界にもドラクエが!? つかレオンも来たらこのパーティーに参加するのだろうか?(笑)

>「ああ・・・・・・ ブリッジス少尉の彼女さん」
確かに日本語で『彼女』と言っても英語で『She』に翻訳されると何がなにやらだもんねぇ。

>「クリスカはこわくないよ、こわいのはマユのおねえちゃん・・・・・・・・・ それにわたしのなまえはイーニァだよ」
さすがにイーニァにも魔王さまは『怖い人』認定されているようだ(笑)。


頑張ってください。


追記:
さあ、百里の航空祭まであと3日!
と言うわけで装備の確認だ!
まずは帽子!(熱射病予防)
続いて日焼け止め!(天気によっては全身が真っ赤になるほど焼ける)
バイク!
カメラ!
水筒!
バッグ!
ビニールシート!
地図!
サングラス!
よしよし、調子に乗ってきたぞ~。

続いてビール!
ウィスキー!
ハイボール!
おあいそ!
『3万8千円』
高いんだよ!!(ゲシッ!)

すいません、最後のはドリフネタでした……。

NoTitle 

嫌な予感が…。
てか前線で告白やら恋話はしちゃいけません。それフラグですから!死亡フラグですから!
死ぬのは野郎だけで良いですから…orz

皆様へのお返事 

二日ほっといたら10件近くのコメントが (汗
こんな場末のblogに目を通して頂き、本当にありがとうございます。

ではでは・・・・・・

あいるんさん
ありがとうございます^^
ええ、霞に寂しい思いをさせるグラサンなんてもげてしまえ。

アギさん
ええ、悪運の良さは折り紙付きです。だって主人公ですからw
情緒不安定な霞・・・・・・そのネタ貰ったッ!!www
ロシアすげぇ、国民が熱くて酒飲んで川や噴水で溺れ死ぬ、そんな国ロシア。

ZERO2Xさん
はてさて、TE本編とどのように剥離していくのかは、今後の展開に期待してくださいとしか言えませんw
まぁ、その、なんて言うか・・・・・・自分程度が書くSSでは悲壮な展開ってのは想像しないほうがいいですよwww

ブシドーさん
ジョン・ドゥ・・・・・・一体何者なんだ・・・・・・?
ソ連編終了お疲れさまでしたw
纏まりのある文章を掛けるブシドーさんが羨ましく思います。
ああ、グダグダと長くて中身の無い文しか書けない自分が情けないです。
執筆、頑張ってください!!

fujiさん
重い、ですか?
文章が淡々としてるからそう思われたのかな・・・・・・脳天気な脳みそしか持ってない自分が書いたので大丈夫ですよw
して・・・・・・日本語だけでなく、英語も出来無いことを露呈してしまったorz
ご指摘、ありがとうございました!!

ヴェントさん
くぁぁ、名前間違えるとはなんたる失態!!
指摘して頂きありがとうございます
まぁちょっとやり過ぎたかと思いましたが、自分の書き方がアレなだけでユウヤやクリスカはもっと良心的な物言いを本編でしてる・・・・・・はず(汗
そうそう、線画のイラストなんかはツイッターへ掲載したりしてますので、お暇な時にでも塗り塗りしてみてくださいねw

亡命ドイツ軍人さん
死亡フラグ・・・・・・おかしい、何時ものノリで書いたつもりなのに、皆誤解してる(汗
しかもSSの皆様が何時になくマジだ。
これは彼らとオルフィーナの話を書かないと自分まで粛清されそうな気がする・・・・・・これはマズイぞ(滝汗

御言さん
何時だって彼はトラブルの渦中にある・・・・・・だって主人公ですからw
お気遣い頂きありがとうございます!!

黒豆おこわさん
淡々とした文章って味気ないですかね?
けっこう書きやすかったんですが、やっぱり前の書き方に戻そうかと思案中・・・・・・
って、黒豆おこわさん、ロリコンなのを人のせいにするなんてあんまりや!!www

taisaさん
レオンの役どころ・・・・・・実はまだあんまり考えてなかったり(汗
TE組みは隆じゃなくて麻美を絡ませる予定だから・・・・・・まぁ、まだ先のことなんで今はいいですよねw
さて!!taisaさんも百里に行かれるということで!!
どうしよう!!自分、まだ悩んでます!!
だって結構行くのメンドイんです、しかも超混むし!!
taisaさんがバイクで行くと知ってかなり嫉妬。
車だからなぁ・・・・・・道がなぁ~・・・・・・水戸駅に車置いて電車で羽鳥に行くのがベストか・・・・・・むぅ、やっぱ行くか!!
あ、持ってくもの、かなり参考になりましたw
taisaさん、サンクスです♪
同じ空の下、お互いインパルスの勇姿が見れますように・・・・・・・

金髪のグゥレイトゥ!さん
くぉぉぉ、確かに女性陣の会話はフラグかも・・・・・・だが、まだちょっと足りないかな(汗
死ぬのは野郎だけで十分、ええ、確かにその通りですね~



NoTitle 

twitterのツイートしたい対象へのツイートの仕方がちんぷんかんぷんなんだぜ!!困ったぜ!

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

とりあえず久々にこれだけは言いたい。
隆チン〇もげろ

TEは未読なのでこちらの本文を読んでから大雑把な人物設定くらいは調べてみました。
シリアス多めの回でしたね。どこにどんな思惑が錯綜しているのかいつも楽しみです。

それにしてもどこに行ってもロリ扱いとは……

NoTitle 

 感想遅くなってスマソ。ソ連編5話読みました。
 これで、この世界の隆は二発のG弾に巻き込まれたのは確実になったか。少しづつ線になって伏線が繋がってきた感じかな。
 はたして麻香と隆が今回出逢うのかどうか。楽しみになってきた!と言うか、早く続きが読みたいですDON先生!(笑)

 あと、自分的には今の方が読みやすいかな?と言ってみたり(汗)

NoTitle 

おお、感想をと思っていたら、盛大に出遅れました(笑)
まずは・・・ 麻香さんなら「裸にガソリンぶっかけて、厳冬期のカムチャツカフルマラソン」位させそうで怖いw
しかし、コンプレッサーをいきなり抱えるとは・・・www
で、静流姐さん、「自分はどうなんだよ? そろそろマジで婚期逃すぞ?」・・・ウチの阿呆が呟いています(その後で、嫁さんにドタマ叩かれましたw)

さて、盛大に立ち上がったフラグ群。 隆は安部艦長の如くの「フラグ・クラッシャー」となれるのか!?
最後に「ラトロワさんは俺の嫁。 隆、寒さでチ〇ポもげるなよ?」w

※「軍属に努める」、は、表現が少々あれかと・・・
「軍属」とは!?・・・軍組織に勤務する文官、ないし民間人です。 「XX相当官(尉官相当官、佐官相当官)」と言った、「軍階級に準じる」地位を与えられます。
その意味では、夕呼センセ―も、本来は「大佐相当官」が正解の筈なんでしょうね。
相当官は、指揮官のラインには含まれませんが・・・

なので、「軍務に就いている」が、自然なのかな、と・・・
蛇足ですが・・・

皆様へのお返事・その二 


ヴェントさん
なんとかなる!!
ポチポチ弄ってればなんとかなるはず!!
ちなみに自分がTwitterに登録してないと、誰かをフォローは出来ませんよ?

炭素さん
隆、チ◯コもげろ。
この話ではTE陣の扱いがかなりおざなりなので、是非ともTE本編を読むことをお薦めします。
べ、別に作者はTEアンチじゃないんだかね!!
・・・・・・行きあたりばったりな思惑の数々、果たして上手く纏められるか不安です。

変態さん
はて?
オルタ世界の隆がG弾に巻き込まれたなんて描写はまだ書いてないような・・・・・・
とまぁそれはさておき、麻香と隆は・・・・・・まぁそろそろ会わせようかなと思っていたりします。
麻美はもうちょっとお預けw

samuraiさん
お忙しい中、読んで下さりありがとうございます!!
へんなフラグが乱立していますが、自分如きの力量でどれだけ上手く纏められるか不安たっらありゃしない!!
自分の厨二ジェネレータは糞詰まり状態でプスプスいっております。w

軍属の話、ありがとうございます。
確かにその通りですね、訂正させて頂きました!!

PS
「ふん・・・・・・ 悪いがバツイチだ」
メガネな大尉の逆鱗に触れたようです。

NoTitle 

いつの間にか、トップ絵が変わってる…

リリカルなのはが元ネタですね?

恋姫無双で誰かやってくれないかなあ…

NoTitle 

トップ絵変更お疲れ様です
リリカルなのに槍から覗く銃口は・・・?
てかメチャクチャ重装甲ですよね、霞が怪我しないように隆からお願いでもされたのかしら?

NoTitle 

何時の間にか新しいお話が来てました。
そしてもうフラグと複線の乱舞状態、死ぬなよ~。

そしてリリカルかすみ、私の妄想と同じでした。

NoTitle 

トップ絵の更新お疲れ様ですDON総統代行殿!
霞が魔王なのは様のキャストだとしたら…ユーノ役が隆でフェイト役がまさかの武!?
いや待て…武と霞の配役は逆でクロノポジションが隆でリンディ提督(クロノの母)役に夕呼さんだったら義妹フラグも立つからそっちでもいいですね。
前者だと比較的ましだが、後者だったらアースラの乗組員は時空管理局の爪弾き者もしくは纏めておいたほうが管理しやすい奴等の巣窟と言う事になってしまう…言うなればアースラ愚連隊(香月もしくは夕呼愚連隊でも可)ですが、そうなったら絶対接触したくないですなアースラに…何されるか分からないですからw

P.Sリリカルな世界での姫様達はベルカの王族の生き残りで、欧州組みのキャラ達が騎士団になるんでしょうかね配役的に。

NoTitle 

え、何この夢のコラボ、個人的2強の変形合体。
霞にはファンネルが似合いそうですね。こんなマスコット人形あったら欲しいなあ……

逆パターンでリリカルキャラにマブラヴ要素を持ち込んだらどうなるのか(妄想中……)

NoTitle 

DONさんありがとうございます!
やっぱり霞の可愛さは異常ですねw
魔導師レベルがSランク超えてそう。そしてこの魔王少女、実は召喚士の才能もありその気になれば九つの尾を持つ大化生を呼び出すことができるという……なんて冗談……あながち否定できないw

NoTitle 

素敵なTop絵ありがとうございます。トップページを開いた瞬間意識が飛びました。。。

それにしても初っ端から魔王ですか。確かに素晴らしいほどの重武装ですね。
しかし!私は見逃さない!何処とは言わないが、バリアジャケット(?)からチラリと覗くあの白いお肌を!!
眼福デス。

本編では隆を中心に色々なところで様々なフラグが建設されていますねぇ。ホントこの先如何なる事やら・・・

今後の展開もひじょ~に楽しみです。更新がんばって下さい。

皆様へのお返事・その三 


トップ絵を変更しただけなのに、コメントを頂きありがとうございますw

fujiさん
はい、リリカルなのはが元ネタですw
恋姫無双・・・描こうと思ってもネタが分からない・・・・・・orz

御言さん
確かに、デバイスに銃口は必要無かった!!
隆から露出は控えるようにと念を押されたようですw

ブシドーさん
お体大丈夫ですか?
ファンタだけじゃ人間生きていけませんよw
夏バテには気をつけてくださいまし。

亡命ドイツ軍人さん
あれ? 夕呼さんはスカリエッティのポジが一番合うような・・・・・・w
リンディ提督はまりもちゃんがいいな~w

炭素さん
ええ、自分も霞にはファンネルが似合うと思いますw
リリカルきゃらをマブラヴ世界に持ち込む・・・・・・なのはって確か運動音痴でしたよね?
となるとCP?
BETAに恐怖する新兵達に・・・・・・
「・・・・・・少し、頭冷やそうか?」

黒豆おこわさん
ネタ、ありがとうございましたw
なるほど、霞はサモナーでもあると!!
魔王でありながら呼び出す獣は神獣とまで称される存在・・・・・・封印指定ものの能力じゃないですかwww

玄道さん
お褒めいただきありがとうございますw
うぬ、小さいイラストなのによくぞ気づきましたねwww
本編ではフラグ立てまくりですが、物事が本格的に動くのはもう少し先ですかね・・・・・・


NoTitle 

はじめまして
全部一気に読みましたすごく面白いのでがんばってください

皆様へのお返事・その四 


灰狼さん
感想ありがとうございました!!
最初の方の文は見れたもんじゃなかったと思います (汗
それでも全部一気に読んでくださり本当にありがとうございました!!

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